事の始まり②
「七星ちゃん、ついたよ。お、お、おいしそう♡」
七海が興奮した声で叫び、指さした。七海が指さす方には色んなドーナツがショーウィンドウに並べられキラキラと輝きを放っていた。
「た、たしかに、おいしそうだ。」
「ね?でしょ?来てよかったと思わない?」
七海がドヤ顔をしながら、店のドアを引いた。
カランコロン。
ドアについていた鈴が鳴った。
「いらっしゃいませ。」
レジにいた何人かの女性スタッフがが口々に言った。
2人はカウンター席を確保してドーナツを選んだ。七星は、ココア生地のドーナツの上にさらにチョコレートでコーティングしてあるものと、バニラ生地のドーナツの間に生クリームがはさんであるものを選んだ。意外と七星は甘党なのだ。
七星と七海が確保したカウンターにもどると、2人が座る席の隣に見たことのある顔が並んでいた。
「榊くんと成宮くん?」
七海がつぶやいた。
2人は七海の呟きが聞こえたのか振り返った。
「あ、大西さんと倉橋さんも来てたんだ。」
同じクラスの成宮 誠くんが手を振りながら言った。
「うん。七星ちゃんとどうしても行きたかったんだ~!」
成宮 誠と七海、2人の会話が続いている中、七星はチラリと成宮 誠の隣の榊 北斗を見た。2人が会話している姿を少しも見ず、静かにコーヒーをすすっていた。
こんな暑い日にあたたかいコーヒーを飲むなんて、変な人…。
そう思いながら、また、榊 北斗を見た。
パチッーーーーーー。
偶然、七星の目と北斗の目があった。
七星は恥ずかしさと、北斗の方をみてしまったという後悔から反射的に目をそらしてしまった。
「おい、今、目そらしただろ。何でそらした。」
意地の悪い笑みを浮かべて北斗が言った。
「いや…別に…。あなた、誰なのかなーって。」
「は?それだけか?」
「あぁ。」
七星はいつも通りの声のトーンで返事をした。
「ふぅん。」
北斗は、七星を疑いの目でじろりと見て、また、コーヒーをすすった。
榊 北斗という人を七星は顔しか見たことがなかった。成宮 誠は同じクラスだということもあり知っているのだが、榊 北斗の情報は七星の記憶の中になかった。
後から七海から聞いて分かったことだが、榊 北斗は成宮 誠の友達であり親友。隣のクラスで学年一のイケメンと噂になっているのだが、口の悪さで男女共に有名…とのことだ。




