表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/31

プロローグ

~プロローグ~


 今となっては、良く思い出せない。

あの日僕はどこへ行こうとしていたのか、何を考えていたのか。

とまれ、状況は最悪だったと言えよう。

迷い込んだ小路には街頭も無く、夜半の月も僕を助けてはくれなくて、うっすらとかび臭い暗闇には敵意が満ちていた。

[四面楚歌]ではなかったけれど、[多勢に無勢]で、すなわち[絶体絶命]に他ならなかった。

・・・やはり振り返り来た道を戻るしかないのだろう。

道に不慣れな僕とおそらくは熟知しているであろう「彼ら」。

悪手ではあるが、握手して済みそうもない現状、悪手であろうと逃げるしかなかった。

後はタイミングを見計らって・・・・


――雲の切れ間からの光が射した。


 その瞬間に振り返ってて逃げようとしたが、僕は身動き一つできなかった。

前門のトラに意識を向けすぎた僕は、後ろ首をつかまれたように「何者か」に引っぱられていった。

何が起こったのか、荒んでいるように見えた「彼ら」は悲鳴をあげて地べたを這いずり回っていたが、

それも一瞬見えただけのことで、目的地に背を向けて電車に乗ったように、風景が流れていった。

道知らぬ僕はどこに着いたのか、そもそもどこかに着いたのかどうかも定かではなかったが、ひとまず追手の心配は無さそうだった。

息を整えた「何者か」はこちらに振り向くと、僕を壁に縫い付けるように押しつけた。

腕がガッチリと固められ、身動きが取れなかった。

「一目見たときからあなたが気になってしまって・・・私と一緒に暮らしてくれませんか?」

 間近に迫った顔つきはとても真剣で、薄くピンクに染まった頬と、熱の篭った声は僕を見惚れさせるのに十分だった。

そんな動じない・・・動けなかった僕に勘違いしたのか、

「さ、三食昼寝つきで、帰宅した私につき合って下さるだけでいいんです。」

 と続ける彼女に僕の頭は自然と下がっていた。


この出会いが大きな運命の変更点となるこなど知る由も無く、

今回想しつつ考え直してみれば、これは[救出(借りづくり)]で[提案(脅迫)]で、

そしてどうやら[告白(プロポーズ )]だったようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ