刀探して、いまそかり
小舟がゆっくり船着き場へ滑り込む。
木製の足場には、
荷物を運ぶ男達の声が響いていた。
ゴトッ――
船が岸へぶつかる。
船頭が縄を掴み、
慣れた手つきで柱へ結び付けた。
「着いたぞ」
ワイチ達が船から降りる。
足元の木板が、
ギシギシと鳴っている。
その向こうには、
石造りの街並みが広がっていた。
ハロルドが振り返り、
「こちらです」
「この先が武器屋通りになります」
一行は石畳の道を歩き始めた。
通りには、
鎧姿の冒険者や商人達が行き交い、
腰には細身の剣が下がっている。
武器屋通りの脇では、鍛冶屋の火が赤く燃えており、
背は低いが横幅のある男達が、
忙しそうに鉄材を運んでいた。
髭だらけで、
腕だけ妙に太い。
ワイチが小声で呟く。
「……なんか似たようなのいっぱいいるな」
すると一人が振り返る。
「聞こえてんぞ坊主」
ワイチが慌てて目を逸らした。
ハロルドが苦笑する。
「ドワーフですよ」
「鍛冶仕事が得意な種族です」
ワイチが小さく呟く。
「……あれがドワーフか」
「初めて見た」
その先には、
何軒もの武器屋が並んでいた。
ハロルドが胸を張り、
「まずはこちらです」
「王都でも人気の店なんですよ」
店内には、
巨大な両手剣。
装飾の施された細剣。
分厚い鎧や盾が並んでいる。
ワイチが少し感心する。
「おぉ……カッコいい」
だが。
武蔵は棚を見たまま腕を組んでいた。
「……剣しかないのぅ」
小次郎も静かに店内を見回す。
「刀は無いようだな」
武蔵が壁に並ぶ金属板を見つめる。
「……なんじゃこれは」
「盾ですよ」
ハロルドが答える。
小次郎が首を傾げた。
「たて?」
武蔵が一枚持ち上げる。
「重いのぅ」
しばらく眺めたあと、
ニヤリと笑った。
「ほう、なるほど」
「これで攻撃をかわすんじゃな」
ハロルドが少し困った顔をする。
「か、かわすというか、
防ぐ物ですが……」
武蔵はすぐに盾を戻した。
「だが邪魔じゃのう」
「こんな物を持っとったら、
刀がうまく振れん」
ハロルドが苦笑する。
「では次の店へ行きましょう」
通りを少し進んだ先。
今度の店には、
実用向けの武器が並んでいた。
ハロルドが腰の剣を軽く叩く。
「私はこの店で買いました」
「比較的安くて、
お買い得なんですよ」
ワイチが一本手に取る。
「普通にカッコいいけどな」
武蔵は剣を軽く振ったあと、
静かに棚へ戻した。
「悪くはない」
「だが、刀ではないのぅ」
小次郎も静かに頷く。
「私が望む物ではないな」
「刀はないのか?」
ハロルドが困ったように笑う。
「そ、そうですか……
お気に召しませんでしたか」
その時。
店の奥で鉄材を運んでいたドワーフ達が、
顔を見合わせた。
「兄ちゃん達が欲しいのってよぉ」
「もしかして、
あの変てこ武器じゃねぇか?」
もう一人が吹き出す。
「あー、あの変人鍛冶屋か」
武蔵が反応する。
「変てこ武器?」
ドワーフが通りの奥を指差した。
「この道をまーっすぐ行くんだ」
「街の端っこにな」
もう一人が頷く。
「なんか神社ってのがあるらしい」
「俺らよく知らねぇけど」
「その隣に、
変てこな武器屋があるぜ」
ワイチが首を傾げる。
「……神社?」
歩き出した一行の耳に、
鐘の音が響く。
通りの先。
白い尖塔が空へ伸びていた。
小次郎が静かに足を止め、
「……なんだあれは」
ハロルドが振り返る。
「あぁ、教会です」
今度は武蔵が首を傾げた。
「きょうかい?」
お国が笑う。
「寺みたいなもんやろ、たぶん」
教会を通り過ぎた先。
石畳の道の空気が、
少しずつ変わっていく。
街の端。
そこだけ妙に静かだった。
朱色の鳥居。
その前には、
一対の石像が置かれている。
口を開いた獣。
もう片方は、
静かに口を閉じていた。
ワイチが立ち止まって、
「なんだこれ」
「狛犬やな」
お国が軽く答える。
ワイチが石像を見上げる。
「へぇ……
犬っていうより獅子っぽいな」
鳥居の奥を見ると、
古びた看板には、
『杉山神社』
そう書かれていた。
その隣には、
薄暗い店先に、
黒い甲冑が吊るされている。
武蔵が目を輝かせた。
「おぉ……甲冑じゃ!」
異様な兜。
その額には、
巨大な前立物。
ワイチが見上げる。
「……魂?」
「なんかカッコいいな」
お国が吹き出す。
「魂かぁ」
「じゃあ愛もあるんか?」
次の瞬間。
「うるせぇ!!」
店の奥から怒号が飛んだ。
次回予告
和の武具を見つけたワイチ一行。
ついに刀の手掛かりを見つける。
だが、その店主は
どうにも気難しい男のようだ。
次回
『頑固な名工』
「良い刀ほど、癖がある」




