阿国ボンバイエ!
ナリアがアルテミスの弓を抱えたまま倒れ、レクイエム・ベルの最後の鐘が消えると、炎の武蔵と炎の小次郎が紅蓮を引きずるように駆け出し、武蔵と小次郎へ同時に斬りかかった。
武蔵は炎の武蔵が振り下ろした刀を二刀で受け止めたが、刃から流れ込んだ熱が一気に両腕まで駆け上がった。
「熱っちぃ!刀越しでもこれかよ!」
押し込まれた武蔵の足元から土が盛り上がり、二本の刀が軋みながら紅蓮を噴き散らした。
炎の小次郎も間合いを一気に詰め、右、左、再び右へと刃を走らせ、小次郎がその連撃を受け流すたびに炎の残像が幾重にも重なり、刀を伝った熱が袖を焦がしていった。
「速いですね……自分を相手にすると、これほど厄介ですか!」
炎の小次郎がさらに速度を上げると、小次郎も間合いを詰めて刃を重ね、互いの刀が連続してぶつかり合うたびに紅蓮の火花が弾けた。
炎の武蔵が武蔵を押し込み、炎の小次郎も小次郎の防御を次々と切り崩していく中、空海の回復術が二人を包み、焼けた皮膚と斬り傷を塞いでいった。
「熱いですな……このままでは近づくだけでも焼かれますぞ!」
空海が結界を張り直すと、押し寄せていた紅蓮が結界の表面を大きく波打たせた。
阿国は八手焚瑠是を取り出した。
「二人に気合いを入れるなら、あたしが先に気合いを入れないとダメね♪八手焚瑠是!」
丸薬を飲み込んだ瞬間、阿国の足に「○」が浮かび、そのままハリセンを武蔵の背中へ叩き込んだ。
「もっと気合い入れなさ~い♪気合注入~♪」
バシッ!
「ぐおおおおおっ!」
武蔵の全身から気が噴き上がり、足元の砂と小石を巻き上げながら炎の武蔵を二刀で押し返した。
「効くじゃねぇか!これならまだ暴れられるぜ!」
炎の小次郎の刃が小次郎の腕を焼いたところへ空海の回復術が届き、その直後、阿国のハリセンが背中へ炸裂した。
「こっちもまだ終わらせないわよ♪気合注入~♪」
バシッ!!
小次郎の身体から鋭い気が噴き出し、足元の砂が円状に吹き飛んだ。
「これは凄い……まだいけます!」
小次郎が一気に加速して炎の小次郎へ斬り込み、武蔵も炎の武蔵へ二刀を叩きつけると、四本の刃が入り乱れ、紅蓮の火花が戦場を埋めた。
阿国は、横笛を口に当て、腕力増加の音色を奏でた!
炎の小次郎が小次郎の刃を弾かれた勢いのまま武蔵へ斬り込み、武蔵が太刀で高速の一撃を受け止めたところへ、炎の武蔵が小次郎へ重い太刀を振り下ろした。
「今度はお前か!ちょこまかと速えな!支援されても当たらねーよ」
「ぐっ……武蔵さんの一撃は重いですね!受け止めるのがやっとです」
武蔵へ炎の小次郎の斬撃が次々と走り、一撃を弾けば別方向から次の刃が迫り、紅蓮が腕や肩を掠めて袴を焦がした。
小次郎へ叩きつけられる炎の武蔵の太刀は地面まで震わせ、受け流しても腕へ衝撃が残った。
武蔵が炎の小次郎の刃を二刀で挟み込んで弾き飛ばし、小次郎も炎の武蔵の太刀を受け流すと、二体のコピーが交差して再び本物へ襲いかかった。
炎の武蔵は武蔵へ、炎の小次郎は小次郎へ戻り、本物とコピーの刃が真正面から激突した。
武蔵が太刀を振れば炎の武蔵も同じ軌道で太刀を返し、脇差を走らせれば紅蓮をまとった脇差がぶつかり合い、互いの力が拮抗したまま火花を散らした。
小次郎も炎の小次郎と同時に加速し、互いの飛燕が交差した直後に折り返すと、二人の刃が再び激突した。
炎の武蔵の太刀が武蔵の肩を斬り、炎の小次郎の刃が小次郎の腕を焼くと、空海の回復術が二人を包んだ。
炎の武蔵が再び太刀を振り下ろし、武蔵は二刀で受け止めて押し返した。
「ちょっと待った」
武蔵は、手を前に出し、炎の武蔵を静止した。
「これから面白いもの見せてやる!こいつは真似できねぇだろ!」
武蔵は、懐から袋を取り出し、袋に手をいれて鍼を取り出した。
「じゃ……行くぜ!」
武蔵は自分の膝の内側へ鍼を打ち込んだ。
「ぐっ……!」
刺入された一点から気が脚を駆け上がり、腰、背中を抜けて全身へ巡り、その力が二本の刀へ流れ込んだ。
太刀を振ると巨大な龍が飛び出し、脇差でその龍をとどめ、龍は太刀から離れようと巨体をくねらせ、脇差に押さえ込まれたまま咆哮を上げた。
炎の武蔵は二刀へ紅蓮を集中させ、一気に十字へ振り抜いた。
「天魔剛界断!」
巨大な二本の紅蓮の斬撃が交差し、地面を焼き裂きながら武蔵へ迫った。
「お前は強いよ、俺のコピーだからな、だが本物の力を見せてやる!」
武蔵が脇差を外した瞬間、太刀に宿る玄武の力を龍へ叩き込み、その巨体を真正面へ撃ち放った!
「奥義――天魔絶界斬!」
解き放たれた龍が咆哮とともに撃ち出され、迫る天魔剛界断へ正面から激突した。
龍の頭が十字の中心へ食い込み、二本の紅蓮の斬撃を押し返しながら突き進むと、天魔剛界断が中心から砕け、爆炎となって左右へ弾け飛んだ。
龍はその爆炎を突き破り、炎の武蔵が交差させた二刀へ真正面から激突した。
二刀が弾け飛び、龍が炎の武蔵の胸を貫くと、巨大な胴がその身体を突き抜け、全身の紅蓮を内側から吹き飛ばした。
炎の武蔵の全身に亀裂が走り、噴き出した光とともに身体が砕け、火の粉となって消え去った。
小次郎と炎の小次郎は互いの姿を残像へ変えながら斬り結び、交差するたびに紅蓮が幾筋もの軌跡を描き、炎の小次郎の飛燕を小次郎が弾くと、返された飛燕返しがすぐさま迫り、一進一退が続いていた。
小次郎は、炎の小次郎へ刀を向けた。
「浄化の力を舐めるなよ!本当の炎の燕を見せてやる!」
小次郎は懐から袋を取り出し、袋に手を入れて鍼を取り出し、右腕へ鍼先を当てた。
「鳳凰、朱雀!あなた方の力を借ります!」
小次郎は自分の右腕へ鍼を打ち込んだ。
「ぐっ……!」
炎の小次郎が刀へ紅蓮を集中させ、小次郎へ向かってきた!
「瞬燕流――神風牙!」
振り抜かれた紅蓮の斬撃が地面を焼きながら迫った。
刺入された一点から気が右腕の奥へ走り、鳳凰の力が肩から肘、手首を抜けて刀へ流れ込むと、それに呼応した朱雀の炎が噴き上がった。
鳳凰と朱雀の炎が絡み合いながら一つとなり、聖炎が刀身を包んだ。
「瞬燕流奥義――飛燕炎閃!」
小次郎が刀を下から振り上げると、聖炎をまとった斬撃が螺旋を描きながら神風牙へ食らいつき、紅蓮を巻き込みながら一周、二周と切り砕いていった。
神風牙が螺旋の中で粉々に弾け飛び、飛燕炎閃はその紅蓮を浄化しながら突き抜け、そのまま炎の小次郎へ襲いかかった。
炎の小次郎が刀で受け止めたが、聖炎の螺旋が刀ごと巻き込み、下から全身を駆け上がった。
「貴様の炎、熱かったよ……でも、浄化の炎に斬れぬもの無し!」
聖炎が紅蓮ごと炎の小次郎を螺旋状に斬り砕き、火の粉となった身体が渦へ巻き上げられながら跡形もなく消え去った。
武蔵は残った力を振り絞った。
「ハァハァ……あ、あとは……コイツだけだ!」
そのまま身体から力が抜け、地面へ倒れた。
「あ、あなたが倒れて……誰がやるんですか?」
小次郎の右手から刀が滑り落ち、そのまま武蔵の近くへ倒れた。
二体のコピーを形作っていた紅蓮の火の粉が火雷へ吸い寄せられていくと、火雷の全身を覆っていた紅蓮が大きく膨れ上がり、炎の柱となって空へ噴き上がった。
「熱っ……なんですか、この炎は!」
晴明を襲った熱気を空海の結界が受け止めたが、表面は大きく内側へ歪み、火雷の胸元を覆う紅蓮の奥には、それまでなかった黒い炎が混じり始めた。
「炎が……黒い?」
黒い炎は紅蓮の中を這うように肩から両腕、胸、腹へ広がり、触れた赤い炎を次々と呑み込みながら火雷の全身を染めていくと、その熱に晒された空海の結界がさらに大きく歪んだ。
「ぐっ……熱い!これはいかん!」
火雷の足元を覆っていた紅蓮まで黒く染まり、その漆黒が全身を這い上がって頭上に残った最後の紅蓮へ食らいつくと、赤い炎は激しく揺らめきながら黒へ呑み込まれ、次の瞬間、火雷の全身から漆黒の炎が一気に噴き上がった。
「もう……何もいらない。何も残さない……すべて、燃やしてやる!断末魔すら上げられないほど、跡形もなく消してやる!」
火雷の巨体を包んだ漆黒の炎が、すべてを焼き尽くそうとするように激しく燃え上がった。
次回予告
「村正宗だ!武蔵も小次郎も倒れちまったか……あの漆黒の炎、とんでもねぇ熱だな。だが、ここまで来たら俺も黙っちゃいられねぇ。いよいよ俺の怒りを溜める時が来たか!」
次回、第122話
「漆黒VS魔物陰陽」
「俺の怒り、どこまで溜められるか……見せてやらぁ!」




