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世界を救ったのは剣豪でもなく陰陽師でもなく薬師?だったんですよ!  作者: 氣愛注入


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紅蓮腕(ぐれんかいな)

紅へ染まった炎の武蔵と小次郎が同時に駆け出すと、踏みしめるたびに地面が赤く溶け、二本の灼熱の道を引きながら武蔵と小次郎へ斬り込んだ。


武蔵が炎の武蔵の刀を受け止めた瞬間、刃と刃の間から紅蓮の炎が噴き上がり、刀身を伝った熱が柄まで駆け上がる。


「ぐあっ!熱っ、くそっ!刀を受けただけでこれかよ!」


握った右手から腕まで皮膚が焼け、小次郎も炎の小次郎の斬撃を受け流した途端、刀身を伝った熱に腕を焼かれた。


「ぐっ……!」


袖が焦げ、その下の皮膚から煙が上がる中、二体はさらに斬り込み、武蔵と小次郎が刃を交えるたびに足元の地面が溶け、腕の火傷が広がっていった。


そこへ盾武者が巨大な盾を構えただけで灼熱の熱気が押し寄せた。


「あつっ!」


ワイチの横を巨大な鉞が唸りを上げて通り過ぎ、振り抜かれた灼熱の熱風が身体を焼いた。


「ぐあっ!」


さらに屍忍者の手裏剣と吹き矢が飛び交い、歌舞伎者が楽器を鳴らすたびに炎の勢いまで増していく。


その中心で火雷は動かず、左手の指の間には閉じた三本の扇子、右手の巨大な煙管には紅蓮の炎が燃え続けていた。


「このままでは……」


ナリアは八手焚瑠是やってやるぜの丸薬を取り出した。


同じ丸薬を飲んだ空海は力を使い果たし、そのまま倒れた。


目の前では武蔵と小次郎が刀を交えるたびに焼かれ、ワイチたちにも灼熱の熱気が襲いかかっている。


「……怖いです。でも、ここで私がやらなければ、みんなが死んでしまいます」


八手焚瑠是やってやるぜ!」


丸薬を飲み込んだナリアの腕に「○」が浮かび上がった。


「この模様は……?」


炎の武蔵が再び武蔵へ斬り込んできた。


「リジェネレーション!」


ナリアが唱えると、焼けた武蔵と小次郎の腕の傷が少しずつ塞がり、ワイチの火傷も消え始めたが、紅蓮の熱が治りかけた皮膚を再び焼いていった。


「私もやらねばなりません。この技を使えばどうなるか、私にも分かりませんが……今はやるしかありません!行きます!」


晴明が柏手を打つと同時に、三匹の摩天狼が光り始めた。


「獣神統合――三頭魔神狼!」


三匹の摩天狼が一つに重なった瞬間、膨れ上がった巨体から三つの頭がせり出し、三頭魔神狼が大地へ降り立った衝撃で足元が砕け、重なった三つの咆哮が戦場を震わせた。


盾武者が巨大な盾を突き出して紅蓮の炎を噴き上げながら三頭魔神狼へ突進し、横から振り下ろされた鉞武者の巨大な鉞が肩へ食い込んで巨体を大きく傾かせる中、盾武者がさらに盾を押し込み、噴き上がる紅蓮の炎が三頭魔神狼の毛を焼いていく。


晴明が扇子を開くと、三頭魔神狼が低く身を沈め、前脚の五本の爪が一気に伸びて巨大な刃へと変わった。


「冥爪斬!」


大地を蹴った巨体が高速で回転し、五本の巨大な刃が灼熱の盾へ次々と叩きつけられ、激突するたびに炎と火花を弾けさせながら盾へ深く食い込み、盾武者が押し返そうと踏ん張るほど回転はさらに速さを増していった。


晴明が扇子を振り抜くと、最後の一閃が盾を斬り裂き、その奥の盾武者まで真っ二つにした。


その直後、鉞武者が巨大な鉞を横薙ぎに叩き込み、三頭魔神狼の巨体を地面の上へ滑らせたが、三つの頭が一斉に鉞武者へ牙を剥き、その牙が伸びながら巨大な刃へと変わっていく。


鉞武者が鉞を振り上げて突進し、三頭魔神狼も大地を蹴った。


「餓狼牙斬!」


高速で回転する巨体と巨大な鉞が正面から激突し、三方向から襲いかかる牙を鉞武者が押し返したが、三頭魔神狼の回転はさらに加速し、巨大な牙が鉞の刃を削りながら柄を砕き、そのまま腕、肩、胴へ次々と食らいついて全身を三方向から削り取るように噛み砕き、回転が止まると同時に鉞武者の身体がボロボロと崩れ落ちた。


「火遁!」


屍忍者が放った紅蓮炎が三頭魔神狼を呑み込み、歌舞伎者が楽器を激しく鳴らすと火勢が一気に膨れ上がり、紅蓮の炎に包まれた巨体から焼けた毛が舞い散る中、その炎を背に薬師が盾武者と鉞武者へ駆け寄って両手をかざすと、斬り裂かれ砕かれた二体の身体が動き始めた。


「もうやらせません!」


晴明が扇子を開くと、炎の中から三頭魔神狼の三つの咆哮が轟き、三つの口から鎖が飛び出した。


「審判の鎖!」


再び火遁を放とうとした屍忍者、二体の蘇生を進める薬師、さらに楽器を鳴らそうとした歌舞伎者へ三本の鎖がそれぞれ巻きつき、食い込んだ瞬間に三体の動きが一斉に止まった。


晴明が扇子をゆっくりと閉じると、三頭魔神狼の三つの口が大きく開き、その奥へ集まり始めた光が次第に膨れ上がり、三本の鎖に縛られた三体の正面で巨体を震わせるほどの力へ圧縮されていった。


「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前――!空間のことわりを断つ!異界の門が開くがいい!」


晴明が閉じた扇子を振り下ろした。


「亜空間砲!」


三つの口から放たれた砲撃が鎖に捕らえられた三体を同時に呑み込み、屍忍者、薬師、歌舞伎者の身体を跡形もなく消し飛ばした。


ナリアが大きく手を広げ杖を振った!


「奥義――レクイエム・ベル!」


澄んだ鐘の音が戦場いっぱいに響き渡り、焼け爛れた武蔵と小次郎の腕、ワイチの身体、炎に焼かれた三頭魔神狼の傷が一斉に塞がっていった。


それと同時にディジェネレーションが火雷の生命を少しずつ削り始めた。


炎の武蔵が踏み込んで刀を振り下ろし、武蔵が受け止めた瞬間に紅蓮の炎が刀身を駆け上がり、握った右手から腕まで焼いた。


「ぐあっ!またかよ!」


皮膚から煙が噴き上がった直後、二度目の鐘が響き、武蔵の腕を覆っていた火傷がみるみる消えていった。


小次郎へ炎の小次郎が連続して斬り込み、受け流すたびに刀身から伝わる熱が手から腕へ広がっていく。


「この熱では、受け続けるだけでも……!」


三度目の鐘が響き、赤く焼けた小次郎の腕が元へ戻った。


炎のナリアの杖から回復の光が放たれ、傷ついた炎の武蔵と小次郎の身体を包み、二体の傷を塞いでいった。


火雷が巨大な煙管を振るうと紅蓮の炎がワイチへ襲いかかった。


「ぐああっ!」


全身を焼かれたワイチが地面へ叩きつけられ、そのまま何度も転がると、懐から三本の杭が飛び出して地面へ散らばった。


四度目の鐘が響き、ワイチの焼け爛れた皮膚が塞がっていった。


「まだだ……!」


ワイチが立ち上がる間にも三頭魔神狼が火雷へ迫ったが、巨大な煙管から吹き荒れる紅蓮の炎を浴び、三つの頭から唸り声を上げながら押し戻された。


五度目の鐘が鳴り、焼け焦げた毛の下から傷が塞がっていく一方、レクイエム・ベルと同時に発動したディジェネレーションは火雷の生命を絶えず削り続けていた。


炎の武蔵と小次郎が再び斬り込み、武蔵と小次郎が同時に刀を受けた瞬間、二人の腕へ紅蓮の炎が駆け上がった。


「ぐっ!」


「まだ来ます!」


六度目の鐘が響き、二人の火傷が塞がる中、武蔵が炎の武蔵を押し返し、小次郎も炎の小次郎の刀を弾き返した。


「今だ!」


ワイチが三頭魔神狼の背へ飛び乗った。


晴明が扇子を火雷へ向けると、三頭魔神狼が大地を蹴り、紅蓮の熱気を突き破りながら一気に駆け出した。


火雷が巨大な煙管を振るい、噴き出した紅蓮の炎が正面から三頭魔神狼とワイチを呑み込んだ。


「うわぁぁっ!」


ワイチの腕から肩まで一気に焼け、三頭魔神狼の毛にも炎が燃え移ったところで七度目の鐘が響き、ワイチの火傷と三頭魔神狼の傷が塞がっていった。


その回復を受けながら紅蓮の炎を突き抜け、ワイチは火雷の左肩へ杭を放ち、杭が左肩へ食い込んだところを叩くと、外側の管が砕け、杭がさらに深く打ち込まれた。


「何をする!」


火雷の左腕から力が抜け、指の間に挟まれていた三本の扇子が地面へ落ちると、紅蓮に燃える武蔵、小次郎、ナリアの動きが一斉に乱れ、炎の武蔵と小次郎は火雷の制御を失ったまま刀を振るって暴れ始め、炎のナリアも火雷の指示とは関係なく杖から回復の光を放ち、傷ついた二体を回復し続けた。


八度目の鐘が響き、暴れ回る二体から放たれる紅蓮の熱に焼かれていた武蔵と小次郎、ワイチの火傷が再び塞がっていった。


ナリアは先ほどワイチが地面を転がった際に落とした三本の杭のうち一本を拾い、アルテミスから回収した弓につがえると、火雷へ狙いを定めて弦を限界まで引き絞った。


弦から放たれた杭が紅蓮の炎を突き抜け、火雷の身体へ突き刺さった。


「ぐわぁ!」


ナリアが二本目の杭を弓につがえる間にも、暴走した炎の小次郎が小次郎へ斬り込み、刀を受け止めた小次郎の腕を紅蓮の炎が焼き、炎の武蔵の斬撃を受けた武蔵の肩からも煙が噴き上がった。


九度目の鐘が響き、武蔵と小次郎の火傷が再び塞がっていく中、ナリアが二本目の杭を放つと、紅蓮の炎を貫いた杭が火雷の身体へ突き刺さった。


残る杭はあと一本。


「レクイエム・ベルの回復は、あと一回です!」


ナリアは最後の杭をアルテミスの弓につがえ、火雷へ狙いを定めて弦を引き絞った。


火雷が巨大な煙管を振るうと紅蓮の炎がナリアへ押し寄せ、逃げ場を塞ぐように全身を包み込んだ。


「ぎゃー!」


ナリアの腕から肩まで一気に焼かれた瞬間、十度目となる最後の鐘が戦場いっぱいに響き渡り、ナリアの火傷が塞がると同時に、武蔵、小次郎、ワイチ、三頭魔神狼の傷も一斉に癒やされ、ディジェネレーションが最後まで火雷の生命を削り続けた。


最後の回復を受けたナリアが弦を放つと、三本目の杭が紅蓮の炎を突き抜けて火雷の身体へ突き刺さった。


「ぐっ……!」


火雷が巨大な煙管を振るい、再び紅蓮の炎をナリアへ叩きつけた。


「熱い!」


腕から肩、頬まで一気に火傷が広がったが、十回の回復を終えたレクイエム・ベルの鐘はもう鳴らず、焼けた皮膚も塞がらなかった。


火傷の痛みに八手焚瑠是、リジェネレーション、レクイエム・ベルを使い続けた消耗まで重なり、ナリアの身体から力が抜け、アルテミスの弓を握ったまま地面へ倒れた。


次回予告


「阿国です♪


紅蓮の炎に包まれた火雷との戦いは、いよいよ大詰め!


でも、あの炎……まだ何かありそうなのよね♪


武蔵さんも小次郎さんも、残った力を全部ぶつけるみたいだし、晴明さんまで、とんでもない大技を出すみたい!


こうなったら私も黙っていられないわよ~♪


次回、第121話――『阿国ボンバイエ!』


最後まで、気合い入れていくわよ~♪」

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