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水晶の勇気(仮)  作者: ゆずさくら


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ブースト

 べオーミングが剣を抜いた。

 俺は部屋の中に足を踏み入れていた。

 べオーミングの剣に意識を集中していたが、その部屋の違和感に気づいた。

 床、壁、天井。

 それら全てに文字が書き記されていた。

 具体的に何が書かれているのかは、読めない。

 俺は奴の切先を見ていないと、切り刻まれてしまうからだ。

 後を追ってアオイが部屋に入ってくると、言った。

「これ、エルフが昔使っていた文字よ」

 べオーミングは剣を振り上げた。

 城の部屋は、背の高いエルフが剣を振り上げても、天井に達することはなかった。

 俺は試しにCode探査すると、そのエルフの古代文字の効果がわかった。

 そしてべオーミングが振り上げた腕に付けられたブレスレットにも同じ古代文字が書かれている意味も。

 そう、昨日の襲ってきた公安とダブったのは、このブレスレットなのだ。

 奴らは、Codeを読ませず、書き換え出来ないようにする術を知っていたのだ。

 ……嵌められた。

 早くこの部屋から出ないと。

 だが、それを悟られてはいけない。

「それよりソウタはどこだ!」

「ソウタを出せば、その娘をこちらに渡すのか?」

「……」

 べオーミングは剣を鋭く振り下ろすと、素早く鞘に収めた。

「どうなんだ?」

「なぜアオイを狙う」

「こっちが聞いている」

 気づかれないよう徐に後ろへと下がる。

 ここにはモノがなく、その他に存在する床も壁も天井もCode書き換え対策が取られているのだ。

 自分自身のCodeを書き換えるぐらいしか残っていない。

「!」

 俺は突然後ろから突き飛ばされた。

 振り返るが、そこにアオイはいない。

「アオイ!」

 アオイは男に腕を取られ、喉に短剣を突きつけられていた。

「誰だ!?」

 アオイを掴んでいる男は笑った。

「俺は警察だよ」

「警察?」

 公安とはまた違う組織なのだろう。

 こいつもブレスレットをつけていて、俺のCode探査を回避していた。

「この娘はもらっていくぞ」

「ハルバルド、約束が違うぞ」

 そう言うと、べオーミングが俺の横を風のように通りすぎた。

 アオイに剣を突きつけている男の喉に、今度はべオーミングの長剣が突き立てられている。

「アット、お前は恩を忘れたのか?」

「卑怯な男に返す恩はない」

「人質をとった事自体、卑怯だろう。今更何を……」

 さらに剣が喉元に近づく。

「交換が条件のはずだ」

 俺は何が行われているのか訳が分からなかった。

 ハルバルドと呼ばれた男が卑怯な態度をとったことで、べオーミングの怒りをかったと言うところだろうか。

 このままアオイを連れ去られる訳にはいかない。

「動くな!」

 べオーミングが俺の動きを見たかのように、そう言った。

「目で見ずとも動きはわかるぞ。それ以上動けば、この剣はお前に振り下ろされる」

 ハルバルドが言う。

「ソウタとか言う男は、この上の階に転がしている」

「ハルバルド、この女をおいて、そいつを連れてこい」

「俺に指示するな」

 べオーミングはハルバルドの喉に突きつけていた剣を素早く動かすと、アオイに突きつけられていた短剣を弾き、一瞬の間に彼女を奪いとった。

「ならば、俺がソウタを連れてくる」

「やめろ、奴は転生者だぞ」

「俺が好き好んで転生者を殺していると思っているのか?」

 再び突きつけられた剣に、ハルバルドは後退りする。

「好きにしろ。だが、その娘を奪えなかったら、どうなるかわかっているだろうな?」

「……」

 べオーミングはアオイの手を引くと、部屋を出ていく。

 俺が追いかけようとすると、ハルバルドが腰の長い剣を抜いた。

「残念だが、お前をこの部屋から出す訳にはいかない」

 俺の前に、剣を突き出して動きを制した。

 その剣の捌き方から、べオーミングほどではないにしろ、剣術には心得がありそうだった。

「お前たちはなぜアオイを狙う?」

「知らない方が幸せだ」

「あのペンダントだな」

 ハルバルドは笑った。

「たかが装飾品を奪うのに、果たして、こんな凝った真似をするかな? それなら、もっと賢いやり方があるはずだ」

 言い終わると、剣を振りかぶった。

「!」

「人質を交換するとは言ったが、お前を生かしておくとは言ってない」

 転生前、後を通じて、初めて感じる感覚。

 物理的なものはないのに、直接肌で感じる(プレッシャー)

 これが『殺気』なのだろうか。

 べオーミングから感じたものとは、根本的な質が違う。

 フェイントを入れるかのような微妙な指と足の動き。

 俺はハルバルドのその(・・)動きを見た瞬間に、体の中のCodeを書き換えていた。

 筋力と反射速度を上昇(ブースト)させたのだ。

 ハルバルドが振り下ろしてきた剣を、上昇したスピードで後ろに下がり、避けていた。

 切ったと思った相手が、あっさり避けていることに気づくと、ハルバルドは笑った。

「なぜ殺しにこなかった? 今が最後のチャンスだったのに」

「?」

「Code変更して肉体の性能を上げることができるのが、自分だけだと思うなよ」

 まさか、ハルバルドも転生者……

 ならばなぜ、俺のCodeを直接書き換えてこない?

 俺には奴らのように『Code探査避け』のブレスレットがない。

 だから直接俺のCodeを書き換えにくれば、簡単に勝敗がついてしまう。

 そうしない理由が、何かあるはずだった。

 だが、直接俺のCode書き換えずとも、Code変更で肉体性能が同程度になった場合、剣術レベルの差で俺が負けてしまうと言う事実は揺るがない。

 俺は本当に最後の機会(チャンス)を逃してしまったかもしれない。




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