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水晶の勇気(仮)  作者: ゆずさくら


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転生の訳

 俺が起きると、横にある椅子でアオイが寝ていた。

「なんだ……」

 めちゃくちゃ頬が痛い。

 俺はまだアオイの右手を握っていた。自らの意思で出来ることを、簡単にCode変更して強化したのだ。こういう地味で簡単なCode変更ほど長く残る。

 アオイの左の手のひらが腫れている。

 自分の体のCodeを覗き見ると、どうやらアオイが俺の頬をひたすら叩いていたことが想像できた。

「全く……」

 俺はアオイにCode探査をかけようとして止めた。

 いくら探査ができるからと言って、こっそり調べるのはダメだ。

 ちゃんと本人の口から聞かないと。

 俺は、体を動かし外を見た。

 いつの間にか暗くなっている。

 ならば、外に出ても大丈夫だろう。

 俺はアオイの肩を叩いた。

「起きて」

「!」

 アオイは起きると、いきなり怒鳴った。

「どうなってるのよ、この手は」

「すまない」

 とりあえず、俺の部屋にいくことを告げた。

 アオイは、「いきなり襲われ、いきなり助けてくれたって、二人とも信じられない」と言った。確かにその通りだった。全部、俺が仕込んだものかも知れないからだ。俺は『アオイ』を探している人がいて、後をつけていたと告げた。あまり信用してはいないようだったが、剣を持っていた男に殺されそうになった話と、Codeを書き換えて逃げたことを説明したら、部屋にいた男と繋がっていないことは理解してもらえたようだった。

 俺は強引にアオイの手を引きながら、リムの街に出る。

 夜の街は、そこここに真っ黒な闇が口を開いて待っている。

 その分、星は綺麗に見えるが、星の明かりは歩くのに対して役に立たない。

 建物と空の境界を見やすくしている程度だ。

 歩き続け、ようやく、俺の部屋がある建物についた。

「一人、変わった奴がいるけど気にしないで」

 俺はソウタのことをそう説明した。

 そして扉を叩くが反応がない。

「ソウタ?」

 扉を開けるが、気配がない。

 出かけたのだろうか。

「手を離してよ」

「ああ、ごめん」

「ここに居ろっていうの?」

 俺は頷いた。

「命を狙われているなら、身を隠していた方がいいだろう」

「ここで暮らすなら、部屋の忘れ物を取りに行く」

「今言ったこと、理解していないのか?」

 出ていこうとするアオイを、俺は立ち上がり手を広げて止めた。

「……お腹すいた」

「パンならある」

 俺とアオイは肉を焼き、パンと一緒に食べ始めた。

 食事をしていると、アオイが俺に話しかけてきた。

「転生者、ってことは死んだ時のこと覚えてでしょ?」

「食事時に話すことか?」

「他に何か話すことある?」

 俺はグロい話を、簡単に説明した。

 死ぬ前のこと、死んだ自分を俯瞰していたこと、バカオナモミに背中を刺されたこと……

「そうなの。その女王が転生を」

「アオイはどうなの?」

「!」

 アオイの反応を見て、俺は思わず自分の口を押さえた。

 まだ名前を教え合っていない。

 なのに、俺がアオイのことを知っているのはまずい。

 Codeを勝手に読んだと思われてしまう。

 アオイは俺を睨んで、言った。

「名前。あんたの。私はCode読まないから」

 アオイは覚えているだろうか? カースト底辺の男の名前を……

「アラタ」

「……」

 何か、俺の顔をじっと見て、首を傾げた。

 小さい声で「まさかね」と言ってから、首を横に振った。

「……私の転生の話をしないと不公平だよね」

 アオイはゆっくりと自らの転生の時、つまり彼女が死んだ時の話をした。

「大学に受かって、入学式を迎えたの。母も入学式に来て、祝ってくれたわ」

 入学式の帰り道、大手メーカーの人気の車種が歩道に突っ込んでくる。

「何もかもこれから、という時に全てを失ったの」

 運転していた高齢者は、エアバッグで守られ、突っ込まれた彼女と母親が死ぬという事故だった。

 免許を返納しなかった高齢者の、アクセルとブレーキの踏み間違え。 

 彼女が車に跳ね飛ばされ、あたりに鮮血を流し、肉片を撒き散らして死んだ時点では、そう思われていた。

「けど、違ったのよ」

「どういうこと?」

「加えて言うなら、私がこの世界に来たの、死んだ直後じゃなかったんだ」

 いや、生きてないなら、記憶も何も発生しないだろう。俺は考えた。

「……病院で瀕死だったとか?」

「バカね。転生は死んでからするのよ」

「まさか、以前の世界と、この世界に来た間の記憶があるの?」

 彼女は頷いた。

「事故車のログ解析をしているところが見えた」

「その時点で霊のように彷徨っていたってこと?」

「きっとそういうことだと思う。ログ解析していたのは、自動車会社の研究室だと思う。結果が出ると、順番に上席へと報告されていくけど、そのまま原因はもみ消されていくの」

 俺は原因を聞く。

「原因はなんなの?」

「車の誤動作よ。運転していた老人が踏み間違えていたわけではないの」

「……そんな」

 俺は立ち上がった。

「なんとか元の世界に戻ってそれを伝えよう」

「私は、解析結果を書いたものを見たからわかるけど、本当に踏み間違えているものもある。だから、すべての事故がそうという訳ではないのよ。たまたま私の事故はそうだったけれど」

「けど、悔しいよ」

 アオイはため息をついた。

「ありがとう。けどもう、どうにもならないのよ」

「……お互い、気持ちを切り替えて、この世界で幸せを取り返そう」

「ふざけないで。私の母は転生していないのよ」

 そうだ。俺と違って、アオイは同時にお母さんが亡くなっているのだ。一人だけ転生したというのが、彼女の負い目になってしまっている。

「……ごめん」

 その後、お互い何も喋らなかった。

 俺は勝手に成人式で『アオイ』に会えると思っていた。俺が大学デビューで、髪を染めた時、彼女が事故で死んだことも知らずに、だ。その程度の俺が、たまたま同じ世界に転生してきて『君が好きでした』とか言っていいものだろうか。

 そして無言のまま食事を終えた。

 俺は食器をまとめると洗い場に持っていき、洗っていた。

 居間から声がした。

「私、部屋に戻るわ」

「待って! アオイ。君は狙われてるんじゃないの?」

「私、殺される心当たりなんかないの。きっと部屋に金目のものがないか探しているだけだわ。探し終えたらどこかにいなくなっているに違いない」

 そうじゃない。

 俺は彼女の手を掴んだ。

「俺もいく」




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