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エセイストのエッセイ  作者: 貴州 育 (きす はぐ)
3/9

目玉焼きマイノリティ






 動画サイトに投稿される

 お洒落でハイソな暮らしぶり。


 掃除の行き届いた部屋

 たっぷりと明るい陽射しの入る張り出し窓

 センスの良い調度品や

 ピカピカの食器や

 ちょっとお高いスーパーで買い求めただろう

 無農薬やグルテンフリーなどの

 こだわり満載の健康的な食品


 見ていて

 楽しいし、憧れるし、本当に素敵だけど


 そんな動画ばかりを見続けたせいでしょうか

 ちょっと、なんだか

 疲れてしまいました。



 そんな時に

 ふと

 アップされたばかりのひとつに

 目が留まりました。


 私と同じくらいか

 少し年上かぐらいの女性の手が

 ご飯を作る動画です。


 よそのお宅の

 朝食や晩ごはん、

 家族がいない時に作る

 主婦が自分ひとりで食べる為の、

 気取りのない簡素なお昼ごはん。


 そんなものに惹かれてしまいます。



 いつの間にか

 夏の暑さも感じなくなり


 毎朝、窓を開けた時の外の空気が

 少しずつ冷たくなって

 秋の訪れを確かに感じ始めた、この数日。


 動画の彼女は

 朝の散歩から帰るご主人の時間に合わせて

 いつもより遅い

 休日の朝食を作り始めます。


 永谷園の松茸お吸い物の素と

 スライスして尚、存在感のあるエリンギ。


 お醤油と味醂(みりん)

 業務用サイズの大きなボトルから

 そのまま炊飯ジャーの内釜に足して

 秋の風情の

 香り豊かな炊き込みご飯を炊きます。


 お味噌汁を作る画面は無かったけど

 飯盛り茶碗の隣りに置かれた

 木目の優しく浮き出た汁椀には

 薄揚げと牛蒡(ごぼう)らしき根菜の色味。


 青と白の

 土もののお皿に盛りつけたのは

 前の晩に彼女が作っておいたんでしょうか、

 ガラスの保存容器から出した

 スパゲティのサラダと

 その横に瑞々しい葉野菜を添えて。


 ガス台の五徳に載せた

 小ぶりのフライパンに

 仲良く寄り添うように割り落とされた

 ふたつの卵は黄身がこんもりとして

 とても新鮮なのだと分かる。


 斜めに包丁目を入れたウィンナーも数本

 同じフライパンに。


 蓋をして、蒸し焼きにして

 程良く火が通った頃合いで

 ターナーでお皿に取り分け、よそい、

 おふたりの朝ごはんが始まります。


 いただきますの声のあと。


 彼女は目玉焼きに、かけたんです!


 たらたらっと、お醤油をひと回し。

 それから次に、マヨネーズをひと回し。


  (お断わりしておきますが、

   彼女の使う醤油差しは

   小さな陶器で

   注ぎ口もとても細い繊細な物でしたし、

   マヨネーズだって

   白いキャップでしたから

   おそらくカロリーハーフであるとか

   亜麻仁オイル使用であるとか

   健康にも留意されているのだと思われます。)



 あーっ。


 私と同じ食べ方のヒトだ!って

 ビックリしたのと嬉しかったのとで

 思わず声が出ちゃいました。


 なんだか、とっても嬉しくなったんです。


 目玉焼きを

 お醤油とマヨネーズで食べる人なんて

 そうそういない気がしてたから。

 

 こんな食べ方をする人なんて

 日本人のなかでも珍しくて

 ごく少数派なんだろうなぁって。


 

 他人様(ひとさま)の暮らしぶりを

 色んな動画を通して見せてもらってると

 

 フムフムと参考になったり

 ほおぉーと感心したりは

 よく有りますけど


 まるで

 たったひとり、

 遠い異国にポーンと放り出されて

 心もとない寂しささえ覚えたような時に

 同志を見つけたような気分になったのは

 初めてのことでした。


 

 好きなものを

 好きなように食べることが出来る。


 美味しいものを

 好きな人と一緒に食べることが出来る。


 小さなことで

 あたりまえなことのようだけど


 とっても有り難くて

 しあわせなことだなぁって思います。




 ふっふっふ。


 近々(ちかぢか)

 彼女に(なら)って

 永谷園の力もお借りして

 秋の炊き込みご飯、

 作ってみちゃいます。


 もちろん、目玉焼きも。


 るんっ。

 


  

 

 

 

  



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