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その後もあたしと友親くんは、クラスの話題の中心となって、からかわれ続けた。
あまりに言われ続けるので、すでに慣れてきてしまっている自分が、なんだかちょっと怖い。
そんなクラス公認で、両親にすらも公認なつき合いとなっているあたしと友親くんだけど、実際のところ、以前となにも変わっていなかったりする。
美野ちゃんには、「あんたたちは、ほんと似たもの同士なのね」と呆れ顔でため息をつかれてしまった。
でも、こればっかりは仕方がないだろう。だって、積極的に恋人同士の雰囲気を出すなんて、恥ずかしいもん。
いまだに、ふたりっきりになったことすらない、というのは、さすがに問題があるかもしれないけど……。
友親くんとのことで、なんだかうやむやになった感はあったけど、結局あたしは『のりわら』を続けている。
春祭の「ようかい喫茶」が好評だったこともあり、うちのクラスはちょっとばかり有名になってしまった。
あたしたち『のりわら』だけでなく、美野ちゃんたちの即席バンドの歌も、小明麻さんの妖怪手品(というジャンルで認識されるようになったらしい)も。
あたしは今までどおり、時に笑い、時に怒鳴り、相変わらずの生活を送っている。
ともあれ、充実した学校生活になったのは確かだ。
なんだかんだ言っても、みんなと一緒になってはしゃいだりバカやったりするのは、すごく楽しいものだから。
☆☆☆☆☆
いろんな意味でクラスメイトの生温かい視線を浴びつつ、今日も一日が終わった。
授業を終え、妖怪部としての活動も終え、今あたしは笑ちゃんとふたり、夕焼けが辺りを赤く染め上げる通学路を歩いていた。
笑ちゃんは今日も、あたしの隣で笑顔を溢れさせている。
もうすっかり元気になったようで、あたしとしても嬉しい限りだった。
あたしがじっと見つめていることに気づいて、笑ちゃんはおかっぱ頭を揺らし、よりいっそうの笑みを返してくれた。
「普通の座敷童子は、住み着いた家を幸福にしますです。そしてボクは、かのりんの心に住み着いた『座敷笑し』ですの」
笑ちゃんは不意にあたしの一歩前に出ると、立ち止まってくるりと一回転。おかっぱ頭がさらりと揺れる。
両手を背中で組み、夕陽の赤い輝きをその笑顔で反射するかのように、上目遣いであたしを見つめ返していた。
「だからボクは、かのりんの心を少しだけですけど、幸福にしてあげるんですの」
「笑ちゃん……」
目頭が熱くなってきたのは、赤みを帯びた日差しが目に映り込んだせいだけではないだろう。
「ボクにはいまいちよくわからない感情ですけど、『れんあい』についても、お手伝いしてあげるんですの」
そう力強く言いきる笑ちゃんの瞳は、固い決意で燃えているようにすら感じられた。
「このあいだは、美野さんにも手伝ってもらいましたですけど」
あ……そうか。
春祭のあの日、美野ちゃんが幼稚園の頃の話をして、あたしの友親くんとの仲を進展させようとしてくれたのは、笑ちゃんが仕向けたことだったんだ。
「……仕向けたなんて、ちょっと人聞きが悪いですの」
「あはは、ごめんごめん」
あたしはなんだか恥ずかしくなってきていたので、そうやって少しおどけてみせる。
でも、
「今後は、ボクもいろいろとお手伝いしますです。かのりんが頭の中で考えてる友親くんに関すること、本人に伝えてあげればいいのですか?」
続けられた笑ちゃんの言葉に、赤くなっていた顔が微妙に青くなる。
「ちょ……っ! それは、やめて~!」
いったいどんなことを言われてしまうか、わかったもんじゃない。
あたしは必死になって笑ちゃんを止めにかかる。
「じゃあ、かのりんが友親くんの近くにいたら、背中を押して抱きつかせてあげるとか?」
あっ、それはちょっといいかも?
なんて思ってしまった自分に再び頬を染めながら、あたしは焦りまくった声を笑ちゃんに返す。
「やめてってば! なにもしなくていい~! あたしはあたしなりに、頑張るんだから!」
「そうですか? ……つまんないですの」
「ちょっと笑ちゃん、人をおもちゃにして楽しんでない?」
「…………てへ♪」
「てへ、じゃな~い!」
バシッ!
おかっぱ頭にツッコミを入れる鋭い音が、真っ赤に染まった路地に響き渡った。
「ひうっ! かのりん、意地悪ですの~……」
「ふんっ! どっちが!」
怒鳴り散らしながらも、あたしの心の中は、初夏の爽やかな風が運んでくれるような温かさでいっぱいになっていた。
おそらく。
これからもずっと、あたしは笑ちゃんと一緒に人生を歩んでゆくのだろう。
学校に行けば笑ちゃん以外にも、サクラさんや結局学校に住み着いてしまった荒井さん、さらには小明麻さんといった妖怪の面々にも囲まれ、騒がしいながらも楽しい時間が待っている。
「かのりん……、小明麻さんを妖怪呼ばわりしたら、あとが怖いですの……。消されちゃいますです」
「消されちゃうって、笑ちゃんの言い方だって充分、失礼だと思うよ」
「ひうっ! ふたりまとめて消してやろうか~って声が聞こえた気がしますです……」
「それはきっと、幻聴とかじゃなくて、現実だと思うわ……」
若干のスリルも味わいつつ、これからもずっと、充実した毎日を送っていけるはずだ。
それはまだ未来のことではあるけど、あたしにはすでに決まっていることのようにしか思えなかった。
目立つのが嫌だというのは今でも変わっていない。それなのに、笑ちゃんを含めて、いつもあたしの周りは妖怪だらけ。
はぁ……。普通を求める望みは、叶うことはないのかな……。
だけどあたしは、すでにたくさんの幸せをもらっているんだから、これ以上なにかを望んだら贅沢ってものだよね。
絶対に、
明日も笑顔だ。
ね? 笑ちゃん!
「……はいですの!」
座敷笑しは、こうして今日もあたしの心を温めてくれている。
以上で終了です。お疲れ様でした。
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