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相方は座敷ワラシ!  作者: 沙φ亜竜
第1章 座敷童子はボケ担当!?
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-1-

「え~っと、どっこかなぁ~」


 ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、あたしは昇降口の前に貼り出されたクラス分けの掲示をのぞき込んでいた。

 飛び跳ねる動作のたびに、長めのポニーテールが揺らめいて不規則な軌跡を描く。


 どうしてぴょんぴょん飛び跳ねているのかといったら、あたしの背が足りないからだ。

 む~、もっと大きくなりたい。そう思っている今日この頃。

 だけど、うちは代々みんな背が低いから、将来性も皆無だと言わざるを得ないだろう。


 それにしても、自分のクラスを確認したらすぐに移動してほしいものだ。

 だからといってあたしは、人ごみをかき分けてまで前に出られるような性格じゃない。

 そんなわけで、こうしてカエルのようにぴょんぴょんと飛び跳ね続けているのだった。


「かのりん……。中学二年生にもなったんだから、もうちょっと落ち着いたらどうなの?」


 ひょい、っと横から顔を出し掲示板に目を向ける、あたしと同じセーラー服姿の女の子。

 あたしよりも頭ひとつ以上、背が高い。


「みのた、お願いっ! あたしの分も見てっ!」


 首の後ろで束ねた長い黒髪を揺らめかせながら、あたしを斜め上から見下ろす彼女の目が、ぎらりんと光ったような気がした。


「……ほほう? 人に頼みごとをするというのに、そんな呼び方するんだ、あんたは」


 きゃ~、しまった!

 つい、いつものクセで言っちゃったけど、気にしてるんだった!


 彼女は、歩境美野(あゆみさかいみの)

 普段はそのまま、美野ちゃんとか歩境さんとかって呼ばれているのだけど、あたしが彼女につけたあだ名は「みのた」だった。


 美野ちゃんは、すらりと背の高い女の子だ。ただ、モデル体型というわけでもない。

 スポーツとかトレーニングとかはしていないはずなのに、かなり肉づきのいい体格をしている。

 だから、ミノタウロスから取って「みのた」と呼ぶようになった。


 ……べつにあたし、いじめっ子ってわけじゃないからね?


 あたしが背の低いことを気にしていると知っていながら、しつこく「チビチビ」言ってきたのは美野ちゃんのほうなんだから。

 そんな経緯があったのだから、あたしが意地悪で「みのた」なんてあだ名をつけたとしても、一概に悪いとは言えないはずだ。


 ……今になって冷静に考えてみると、どっちもどっちかもしれないけどさ……。


 みのた……いえ、美野ちゃんとは、幼稚園からの幼馴染みだった。幼稚園の頃は、それこそ毎日一緒にいたような気がする。

 そのまま同じ小学校に入学したものの、同じクラスになれたのはたった二年間だけ。中学に入ってからもクラスは違っていた。

 クラスが違えば会う機会も自然と減ってしまうけど、それでもあたしと美野ちゃんは、仲のよいお友達のままだった。


「はう~、ごめんね、みのた~……。あ……」

「……無言でエルボー食らわせてあげようかしら」

「うわわわ、美野ちゃんったら、もう、冗談が好きなんだから~、あははははは!」


 汗びっしょりになりながら、苦笑を浮かべてどうにかこうにか、美野ちゃんの怒りを静めようとする。


「ま、いいけどね。それじゃ、かのりん」

「ん?」


 ふわっ……と、一瞬でまばゆいばかりの笑顔へと切り替え、美野ちゃんは右手を差し出してきた。


「これからまた、よろしくねっ!」


 そろそろ人も少なくなってきていて、背の低いあたしの視界でも掲示板の貼り紙を見ることができた。

 そこには、あたしの名前と美野ちゃんの名前が、同じクラスの欄にしっかりと書かれてあった。



 ☆☆☆☆☆



 あたしは、長波香紀(おさなみかのり)。ごく普通の中学二年生の女の子だ。


「ごく普通ってのは、ありえないと思うけどね」


 美野ちゃんがツッコミを入れてくる。

 ……う~ん、あたしってそんなに、変わってるかな……? 美野ちゃんには負けると思うんだけどなぁ。


 ともかくあたしは、同じクラスになった美野ちゃんと、ふたり並んで廊下を歩いていた。

 目指すはもちろん、新しい教室。


 二年生になって心機一転、今までにない楽しい学校生活を満喫できるように、これから貴重な第一歩を踏み出すのだ。

 ガラガラガラ、と勢いよくドアを開けて、あたしは教室内へと足を踏み入れた。


「おはよ~!」


 元気いっぱいの挨拶と笑顔をクラスメイトたちに振りまき、第一印象は完璧ねっ、なんて思いながら自分の席へと向かう。


 席順は黒板に書いてあった。

 男女の列が交互に並び、前から名前の順で並んでいくという、最初の席順としてはごくスタンダードな方式。

 出席番号一番の人が廊下側ではなく窓側となっているのが、ちょっとだけ変わっていると言えなくもないけど、とくに気にするほどのことではないだろう。


 あたしの席は、窓側から二番目の列の一番後ろだった。


 と――。


「………………?」

「あっ、どうも……」


 にこっ。


 おかっぱ頭をサラリと揺らしながら、ちょっと幼く見える女の子があたしに微笑みかけてきた。

 その子は、あたしの机の上(丶丶丶)にぺたりと正座していた。


 幼くは見えるけど、彼女が着ているのは学校指定のセーラー服だ。

 とすると、新しいクラスメイトのひとり、ということになるのかな……?


 でも……、え~っと……。


 ここって、あたしの席……だよね……?


 そんな考えが頭を駆け巡るも言葉にまではならず、あたしは黙ったまま一緒に教室に入ってきた美野ちゃんへと視線を送る。

 対する美野ちゃんのほうも、苦笑を浮かべつつ首をかしげているという、なんとも微妙な状態だった。


「え~っと……、あなたは……?」


 あたしはどうにか控えめな質問の声をしぼり出す。

 困惑という名の鎖でがんじがらめにされたように、動きも表情すらも固まっているあたしに向かって、その子はひと言。


「ボクは、座敷童子ですの」


 …………。

 …………。

 …………。


「座敷童子だったら、普通はお座敷にいるもんでしょ!? なんで机の上に座ってんのよっ!?」


 あたしは思わず怒鳴ってしまっていた。


「ひうっ!」


 怒鳴りつけられたその子は、怯えた表情を浮かべたかと思うと、じわじわじわ~~~と大きな瞳に涙をにじませていく。


 あ……、さすがに悪かったかな……。


 あたしは慌てて手を伸ばしたのだけど。

 その手はするりと彼女をすり抜ける。

 手が触れるより前に、女の子の姿自体は、すーっと空気に溶け込むかのように、消えてしまっていたのだ。


 気がつけば、机の上にはなにもない空間だけが取り残されていた。


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