第92話 大地母神教団の歴史!
あまりのおめでたさに、カメレオンエイプたちも外に勢揃いしたようだ。
ウホウホ、キャッキャッと声を揃えて、なんか歌のようにも聞こえてくるな。
「流石陛下だ! サルたちもみんな陛下とモネの結婚を祝ってる!」
領民たちは感動しているようだ。
まあ、あのサルたちはひとの吉事を寿ぐみたいな感性を持っている存在だからな。
結婚式を聞きつけて、祝うために現れたのは本当だろう。
おお、マクツーがのしのし歩み出てきて、その両手いっぱいに抱えていた花をバーっと広げてみせた。
花吹雪だ!
『ウゴーッ! ギャボー!』
「おう、マクツーありがとうな!」
彼の胸板を拳で軽く叩いて礼を言っておく。
降り注いだ花でできた道を、俺とモネが歩く。
そうすると、領民たちもわいわいとついてきた。
「おめでとうございます! おめでとうございます!」
「あっ、料理担当神官チーム!」
「この日のために、イノシシの肉をずっと冷凍していたのです!」
「な、なんだってー!!」
あれはこの日のための伏線だったのか!!
俺たちの式を見届けた後、彼女たちは料理を開始したようだ。
「女神様が降臨されたじゃないですか。あれって実は教団が生まれて初めてのことでー」
「そうだったの!?」
「司祭様がほら、今も放心状態で」
「ヒャクシがずっと祈ってる」
「これね、大地母神の声を直接聞いた司祭はヒャクシ様が初めてなんで、多分あの人が最高司祭になると思います」
「うへえー」
なんか、俺とモネの結婚式なのにとんでもないことが起きてるな。
なんだなんだ?
いや、待てよ……?
誰も入り込めない島が国になり、俺が王となり、謎の遺跡の超文明を味方につけ、十二神将とも繋がりのあるルナス。
そこに、世界に広がる大地母神教団の最高司祭がいることになる?
しかも、教団成立以来、初めて女神が降臨したと。
凄く意味合いが生まれてきてるじゃないか。
「ヒャクシがずーっと祈っているねえ」
「モネはあれか? 女神の声が聞こえてきたけど何も感じなかったのか?」
「あんまりこの島、神様への信仰みたいなのなくってですね。」
「こんな過酷な島なのに神の類がいなかったのか! 心の拠り所がないのに、よくぞ生きてきたなあ」
道理で、新住民たちはみんな熱に浮かされたようにポーッとしてて、元の住民たちは肉が焼ける香りにざわついているわけだ。
神様の降臨よりも、身近な肉のほうが重要だもんな。
「おーいヒャクシ。大丈夫か?」
「あ、ハイザット陛下……!! 私はもう、あれですよ! 大変なことが起こってとても冷静ではいられません!」
「肉が焼けるまでちょっと時間があるから、詳しい話を聴こうじゃない。そもそも大地母神教団、一度も女神が降臨したことなかったのか。なんで教団が生まれたんだ?」
「そもそもこれは、戦争によって国を失った母親たちが、子どもを守るための集まりだったのです。夫のいない女たちは敵の兵に身を委ねたのですが、既に子がいる女たちは子を捨てるわけにはいかないでしょう。情が深い女たちは寄り集まり、互助会のようなものを作ったのです」
「ははあ、最初は宗教ですら無かったのか」
「はい。そしてお互いを助けながら旅を続け、迫害される女たちを集めて回りました。同じように、いる場所のない男たちも多く大地母神教団には所属しています。私たちは、寄る辺なき者が集まり、生き残るための集まりであったのです」
「これはびっくりだ」
「そのような話は語られていましたな」
「ジムニ!!」
ジムニは知っていたらしい。
なんでも知ってるな、うちの賢者は。
そして横に、何も知らないモネ。
一応は俺の后という存在になったので、分からないなりに隣に立っていることにしたようだ。
いいぞいいぞ。
ちょっとした意識変革から何もかも始まるからな。
「それで、大地母神教団はいつ教団になったんだ?」
「はい。私たちには精神的な柱が必要でした。ある時、立ち寄った場所で、遥か古代に消えた大地母神の信仰跡地を見つけたのだそうです。産めよ増やせよ地に満ちよ。これが大地母神の教えです。まるで大地が丸ごと切り取られたかのように、そこだけ異質な神殿があったそうです。そこで、大地母神教団が生まれました」
教団の名のもとに、同じ思いを持つ者たちがどんどん集まったらしい。
その中に、男女の睦事大好き勢が増えてきて、それで現代の姿になっていくと……。
教団に歴史あり!
つまり大地母神教団、神様が存在しないことが大前提になった教団だったのだ。
では、あの信仰から来る強力な魔法は一体?
「あれは才能ある者たちが、技術を磨き、継承してきたものです」
「なるほどー。相互互助だから、知識と技術が継承されるのね。それで今、本物の大地母神らしきものが俺とモネの結婚を祝福するために現れたと」
「一大事です!! 今も、ちょこちょこ大地母神様の声が聞こえます!! なんか繋がったそうです!! 繋がったってなんですか陛下!?」
「俺に言われても分からないよ? 肉でも食って、後のことはそれから考えよう」
「食事にしましょう! お腹へった!」
モネの一声で、そうすることになった。
どうやらうちの領地が大変なことになり始めているようだが……。
そんな事は腹ごしらえのあとで考えてもいいのだ。
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