火計
翌日の早朝
護衛を連れて、ジークフリートは工作部隊の陣地を訪れる。
現在、高速で要塞に迫る敵軍。
滅亡を食い止める一手として、敵の足を止めるための作戦を実行を任された工作部隊の様子を伺う。
「これはジークフリート様、わざわざお訪ねになられるとは」
工作部隊長のリージが恭しく挨拶する。
「準備は、順調の様じゃな」
陣地に置かれた油や火計用の矢束。
爆薬もしっかり用意されている。
「しかし、よろしいのですか?これを敵ではなく味方領に実行するなんて…」
困惑するリージ。
手に持つ命令書には、味方領内の食糧庫に火をつけ、敵が到来する前に食料を焼き尽くすようにと記されている。
====
前日、作戦会議
「ゴホン、そ、それでは彼からこれからの方針を尋ねます。
タケル様、我々に知恵を授けてください」
「…火計を以って敵を崩す」
輿車の中から、声を響かせるタケル。
不思議なことに、耳からではなく頭の中に彼の声が響き渡る。
「敵陣に火を放つ…ですか」
兵士長が反応する。
「しかし、敵の布陣は広大であり、何の準備も策謀もなしに火計は…」
「ちがう、こちらの領土に火を放つ」
「な!?」
まさかの言葉に絶句するダルマンたち参加者。
「…続けよ」
動揺する兵士を手で制し、続きを促すジークフリート。
「敵は大軍だがその分、食料の消費が激しくなっている。
敵の進軍の速さは苅田、つまりは食料の略奪による兵站の確保にある。
ならば、それを邪魔してやればよい」
「つまり、敵に奪われる前に自分たちの食糧を焼けという事ですか?」
「そうだ
敵の進軍は速いが、その代償として兵站の整備が追い付かず、補給線が伸びている。
糧道を破壊するのはたやすい」
「し、しかし、それは…」
「賛成じゃ」
ダルマンの言葉を遮り、ジークフリートは声を発する。
タケルの作戦を理解しているからではない。
このまま何も声を出さなければ、無駄に会議が長引いた挙句、これまで通り敗戦を重ねるばかりだと、そう分かっていた。
「工作部隊を動かす、火計と糧道の破壊。
直ちに実行させる」
「理解が早くて助かる」




