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瑞国記  作者: Yuki_Mar12
【第二章】
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(12)

***




 転任を命ぜられた黄宇は、呪わしい気持ちに苛まれた。遥か皇帝までの道のりが描かれていた彼の展望は、唐突に奥行きを失って狭まり、地方の王という、彼の野心にとって物足りない地位と名誉が、恣意か悪意によって便宜的にあてがわれ、しかし彼は、それが皇帝の下命であることから、甘受せざるを得なかったのである。


 皇帝の楊権、及び皇太子の楊光にとって、黄宇に対する今回の処遇は、彼を煙たがったがゆえにしたものであり、黄宇はそれについて、うすうす感付いてはいたし、だからこそ、強い憤りと反発を覚えたのだった。


 黄宇の不興を買ったことは、皇帝と皇太子の認知するところであり、遠方にしりぞける処置を施したところで、すっかり安心するわけには行かず、彼の恨み、憎しみ、憤りが、あるいは後の禍根になるかも知れないと恐れないではなかった。


 そこで彼等は、黄宇に対し、彼が何か危険性のある計画を企図した場合などに備えて、監視役を付けることにし、その要員として、白文と墨英を選任した。


 白文と墨英は、寝耳に水という感じで当惑して拝命したが、元より楊光の補佐として働きたくないと忌避したがっていたことがあったので、この話は渡りに船だった。監視役というのは、もちろん裏の名目であり、表立っては二人は、それぞれ文官と武官として、斉の行政にまつわる職務に就くのだった。


 しかし、黄宇に随行するとなると、白文と墨英は都を去るわけであり、すなわち彼等は、後宮に残る母とは離れることになるのだった。


 一方では、予示されていた強制の厭わしい役目が取り消しになって喜んだが、また一方では、住み慣れた馴染みのある土地と、未だ精神的に離脱できていない慕わしい一人親のもとを去ることに苦しみ、悲しんだ。


 遠出する黄宇のために、貴人用の馬車が用意され、馬車には屋根と壁と窓があり、すこぶる快適そうだった。だが、その程度ではやはり、不服に思っている黄宇にとっては、ぐずる子供に与えられる玩具のように、子供だましの、ご機嫌取り用の間に合わせのものにしか感じられず、ますます腹立たしくなってくるようだった。


 白文と墨英は馬に乗り、黄宇の馬車に同行する格好だった。


 白林と別れる時、白文は、頼りを寄越して欲しいと請われた。息子として彼は、その要望に応えたい思いでいっぱいだったが、書信用の紙は高級品であり、易々と手に入れることはもちろん、消費することも困難だった。


 だが、息子は十代の半ばに差し掛かり、親に対する依存心がまだ抜けない一方で、もはや親の世話になる必要はないといった自負も同時にあり、彼は墨英と共に、まだ離れたくない愛着のある親元より、自立して立派になった輝かしい未来に向かって、半ば心許なく、半ば勇ましく、旅立ったのだった。




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