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エデンズエレメンター  作者: 雪梅るり
二章 山麓の街フラトゥス

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二十二歩目 同時




 「ど、どういう事だろう? カナカくん」


 二人のやり取りをおろおろと見ていたフワワがカナカにそう言えば、じっと『魔』を見上げていたカナカは眉をひそめた。


 「同時じゃないと倒せないやつとか?」

 「そ、そんなのがいるの?」

 「中級3以上で対応する『魔』にそういうのが居たらしい」

 「へぇ……」

 カナカの返答にフワワは感心したようにそう目を丸くした。


 「そういえば、そんな話聞いた事ありますね……」

 「知ってるわぁ。すっごーく面倒な討伐だったって有名よね」

 聞こえた会話にソノラとメイが若干顔を蒼くさせながらそう言い、ネスタとムルムが目を背けるわけにも行かず『魔』を見上げたままそっと頷いている。

 アーリャとティール、そしてベティがヴァルの方を見れば、遠い目をしたヴァルが肯定するように頷く。

 ファジのみが「どこ狙ったらいいんスかね?」と『魔』を見上げながら拳を軽く素振りしていた。


 フワワはファジ以外の反応を見て、不安そうにカナカを見る。

 「だ、大丈夫かな?」

 不安そうなフワワを見たカナカは、カナカの「大丈夫」という太鼓判を欲して視線を向けていたヴァルを振り返る。


 「強さは中級か?」

 「はい。中級相当です」


 その返答を聞いたカナカは少し悩んでから、アーリャを向いた。

 「物理が弱い方をそっちがやれば、俺が魔法に弱い方を倒す」

 「えっ? で、でもカナカくんの攻撃だと物理になるから……効かないんじゃあ?」

 「いえ、たぶんカナカの攻撃なら通ります」

 フワワの心配に対してソノラがはっきりとそう答えた。


 「防御や耐性がどれほど高い『魔』でもその数値を遥かに上回る攻撃のステイタス値があれば通ります。あの『魔』の場合、アーリャさんの攻撃が通ってますので、魔法耐性がどれほど高くてもカナカのステイタス値には及ばないはずです」


 パーティーでは下級1になる《唸る風》だが、アーリャの攻撃が目の前の『魔』に通じているならば中級だと確定しても問題がない。

 そしてアーリャの攻撃が通るならばたとえ物理耐性が高いとしても、中級1相当のカナカの攻撃が通用しないはずはない、というのがソノラの考えだ。


 「アーリャと俺、カナカとネスタで中に入ろう。動きが早いから後衛は『魔』が回避する方向を限定する程度でいい。ファジはベティの防御に専念しろ」

 「おーっしゃー、頑張るぞぉー」

 「あぁ。わかった」

 「…………」


 簡単に作戦を纏めるムルムの言葉にアーリャが意気揚々と応じ、ネスタも剣と盾を構えて同意し、カナカはもの言いたげに口を引き結んだ。


 「わ、私も、頑張るね! カナカくん!」

 「……おう」

 アーリャ達がどうというわけではなく単純に他人と協力することに苦手に思い、顔をしかめていたカナカへとフワワが杖を強く握り締めてそう宣言する。


 意気揚々と元気よく言い放つフワワに、驚いたように目を瞬かせたカナカは少しだけ間を置いたものの頷き返す。

 そうしていつもよりも強い青い目を見て、ナイフを持っていない方の手で力が入り過ぎて皺が寄っている眉間を軽く指で弾いた。


 「わっ!?」

 「たぶんフワワの攻撃は通らないと思うから、落ち込まない程度で、頑張れ」

 「カナカくん……。うん! ありがとう!」


 カナカの言葉に弾かれたあたりを手で押さえたフワワが目を瞬かせて、それから嬉しそうに笑い返す。

 そうして結界の方へと近づいて行くカナカを見送って、ほんの少しだけフワワは俯いた。

 触れたままの額にかかる前髪を少しだけキュッと掴んで、強く両目を閉じてゆっくりと息を吸い込んだ。


 「よしっ! 頑張るぞ!」

 気持ちを切り替えて、気合を入れて、杖をギュッと握り締めたフワワはきょろきょろと視線をさ迷わせた。

 そうしてソノラがメイに話しかけているのを見つける。

 「ど、どうしよう」

 「フワワさん? どうかした?」

 「あっ、ヴァルさん! あの、私、何したらいいか、ソノラちゃんに聞こうと思って……。あんまり強くないから、邪魔だけはしたくないなって思って」


 一応後衛となっているフワワは、ムルムの説明通りならば回避する方向を限定する程度で良い、となっている。

 けれどフワワのステイタス値ではそれをきちんとできるかどうか怪しい所であり、《夕焼け空》パーティーにはソノラが居る。

 だからこそソノラに、他に出来そうな事は無いか、そのままで良いか、確認しようと思ったのだが、わずかに聞こえる会話からしてソノラは、今まで接してきたメイに『魔』の様子などを確認しているようだった。


 作戦に必要な話の邪魔をする気にはなれないフワワに、ヴァルは少し考えてからポーチを開いた。

 そうして取り出されたのは小さな緑色の魔石。


 「それ……」


 小さな魔石の中では少しだけ、ほんの少しだけ大きめの魔石は、フワワが初めて討伐できたと胸を張れる『魔』から零れ落ちた魔石に似ている。

 魔石からそれを取り出したヴァルを見上げたフワワに、ヴァルはまだ顔を強張らせてはいたけれど確かに笑みを見せた。


 「クラフターのお仕事を見せてあげるよ。フワワさん」


 そう言ったヴァルに、フワワは青い目を不思議そうに瞬かせたのだった。




御覧くださりありがとうございます。

次話の更新は6/27(土)になります。

お気に召したら次話もよろしくお願いいたします。

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