表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国日本を世界一豊かな国へ!  作者: わびさびわさび


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/99

第93話 新産業

1548年(豊新2年)4月上旬 インドゴア




インド西海岸中部のマンドウィー河の河口にある天然の良港を有する島に建設された港湾都市ゴア。古くから貿易港として栄え、14世紀からはイスラム系王朝の下でアジアと中東・ヨーロッパを結ぶ東西貿易の中継拠点として繁栄した。


ゴアは今や、単なる交易都市ではなかった。そこは、広大なポルトガル海上帝国の全植民地を統治するゴア総督府が置かれ、帝国の心臓部として脈打っていた。ゴアとポルトガルの首都リスボンとの間には、遠く喜望峰を経由する定期航路が開かれ、数多のポルトガル人をアジアの地へと送り出し、そしてアジアの膨大な富を本国へと持ち帰る動脈となっていたのだ。


さらに、この地にはローマ教会の大司教座が設置され、ローマ教会において全アジアを管轄する中心地としての役割を担っていた。異教の地にあって、ゴアは信仰の拠点ともなり、多くの宣教師たちがここからアジア各地へと旅立ち、福音の種を蒔いた。


大航海時代の荒波を乗り越え、アジアの玄関口として確立されたこの地には、富と権力、そして信仰。ゴアは、これらすべてが凝縮された、まさに「東洋のリスボン」として、その比類なき繁栄を謳歌していたのである。


活気に満ちたゴアの街を見下ろす高台に、豪奢な総督府がそびえ立つ。その執務室は、磨かれた木製の床が陽光を反射し、壁には異国の地図が広げられ、大航海時代の息吹を伝えていた。

この日、広大なポルトガルの海外植民地を統括するゴア総督、ガルシア・デ・サは、重厚な机の向かいに座る一人の修道士と、静かに面会を続けていた。


「ほう。総督は、私にジパングへ赴けと、言われるか?」


質素な修道服に身を包んだその修道士は、良く日焼けした瘦身で、まるで幾多の困難を乗り越えてきた旅人のようだった。しかし、彼の表情には疲労の色は微塵もなく、むしろ揺るぎない自信と燃え盛るような宗教的な情熱が溢れ出し、その深い瞳の奥には、すべてを見通すかのような鋭い知性の光が宿っていた。


「うむ。ジパングは、この所急速にアジア地域において、その勢力を拡大してきておる。所詮は辺境の野蛮人の異教徒に過ぎぬが、先年にはスールー王国を滅ぼし、ルソン周辺に盛んに幾つもの拠点を造り進出して来ておる。このままでは、万が一にも我が国の権益を脅かしかねんからな。一応は、手を打っておきたいのよ。」


「確かに布教で赴いた、マラッカやモルッカ諸島の港でもジパングの船を見掛けましたな。」


「しかしな。対策を立て様にも、東の果てに有る島国の事など、詳しき事なぞ誰も知らん。もし、マルコポーロが云う様に本当に【黄金の国】であるならば、是が非でも我がポルトガル領の一端に組み入れたい。それには…」


「我等がイエズス会の協力が必要と、云う事ですな。」


「そうじゃ。ジパングの民に主の教えを広め、我が国の侵略の先兵として活動して貰いたい。」


「我等は、何も貴国の為に活動しておる訳では有りませぬ。その辺は誤解無き様に。ただ、主の慈悲を知らぬ、哀れな異教徒達に主の教えを広める事は、我が生涯の使命。総督殿からのその申し出、このザビエル、有り難く受けさせて頂きましょう。」



こうして、イエズス会の創設メンバーの1人で、後にカトリック教会により聖人として認定される、聖フランシスコ・ザビエルの、史実より少し早い来日が決定した。





1548年(豊新2年)5月上旬 春日山




「クククッ。婿殿、何時までも貴様の天下が続くと思うなよ。」


「フフフ。今日こそは、殿への下剋上を果たさせて頂きまする。」


「旦那様、今日こそ御覚悟頂きます様に。」


「本日の勝者は、私の【粉雪】が頂きますわ、新様!」


「中将様の、天下も今日まで!私の【ヒメラギ】ちゃんの走りをご覧ください。」


ジジイ共はともかくとして、まさか嫁達にまでこの様に挑まれるとは⋯⋯些か物寂しさを覚えるものの、俺は負ける訳にはいかぬ!


「ハッハハハ。弱い犬程良く吠えると言う。皆、纏めて叩き潰してやるが良い。

我【カゲシゲテイオー】よ!」





かつて越後国の国府が置かれ、日本海航路の要港・直江津を擁する越後府内は、確かに賑わってはいたものの、どこか武骨で貧相な面影を宿していた。しかし、俺が多額の資金を投じた全面改修、そして文化振興策が功を奏し、日本中から多くの文化人が移り住んできた。さらに先年、帝の御座所となり、帝と共に多くの貴族も下向したことで、この街は一変した。今や工房が生み出す新たな文物と京風の雅な文化が入り混じり、華やかな街並みへと変貌を遂げたのだ。


事実上、日ノ本の首都となり、史上空前の好景気に沸くこの府内には、多くの商人や仕事を求める人々が詰めかけ、その人口は二十万を超え、今なお増え続けている。


今や【華の都】とも【北越の大都】とも称えられるこの越後府内には、訪れる者たちを驚愕させる三つの建築物が存在すると言われている。一つは、俺が無駄とも言える情熱と莫大な資金を注ぎ込んで築き上げた新春日山城。二つ目は、文化区画に建設された煉瓦造りの美術館や博物館などの建築群。そして最後の三つ目が、先日行われた大規模な馬揃えのメイン会場ともなった、最大収容人数二万人を誇る、この越後府中競技場である。


今日、この府中競技場は詰め掛けた満員の観衆の熱気により異様な雰囲気に包まれていた。


本日、この府中競技場で行われるのは、熾烈な競争を勝ち抜いた駿馬達によるレース、要するに競馬である。


長尾領では、現在空前の競馬ブームの最中である。

勿論、そのブームの火付け役は俺だな。


現在、長尾領では年間50レース程が開催されており、本日はその中でも最も格式が高いとされている、最高峰レースである韋駄天シリーズの一つに数えられる景重杯が開催されるのだ。優勝者には一流の職人が丹精込めて造り上げた栄光の賜杯と、その賞金、総額は2000貫(2億円)送られる事となる。



「殿、未だ南朝方が健在の上に南方も不安定な最中、この様な事をしていてよろしいのでしょう?」


「ふふ。甘いぞ昌信、これは決してただの娯楽では無いのだ。戦で荒廃した民心を慰撫し、明日への活力を与える為の盛大な祭りの様なものよ。」


「それに加えて、長尾領の経済の活性化にも繋がるで御座るな。」


直家は判っているな、この長尾領での競馬の開催には幾つかの目的が有る。

昌信に話した様に荒廃した民心の慰撫に加えて、多くの人、銭が集まるイベントは直家の言う様に経済の活性化に最適だ。それに、競走馬の生産、育成、販売と日本に新たな産業を生み出す事が出来る。将来的には、優秀な仔馬を育て海外向けに競走馬を販売し外貨を荒稼ぎする事も可能となるだろう。今世では競走馬の3大始祖が日本馬と云う事が起るかもしれない。

やはり、直家は経済関係にも明るいな、こいつは将来は武将よりも、統治や商業に関わる部署に送ろうか。


「殿、某が将来手柄を挙げた暁には、テイオーの子を賜りたい。」


「拙者にも!」


そしてもう一つの大きな利点として、景持や昌景のように、褒美として駿馬を所望する者が増えたことだ。古来より馬と慣れ親しんできた武士階級に、この新たな競技である競馬が特に受け入れられたのだ。合戦で手柄を挙げた者が、褒美として新たに駿馬を求めるようになる。軍長クラスの報奨に頭を悩ませていた身としては、これはまさに朗報であった。

俺は、日本全国に牧場を持つ酪農王でもあるからな。


信長が史実で、茶器のバブルを起こして、その茶器を褒美として家臣に与えた事と同じだな。茶器が駿馬へと変わっただけだ。


「賭けの胴元は、絶対負けない。美味しい商売。」


相変わらず鋭すぎませんか…凪さん


そう、賭けの胴元は負けない。それは古今東西今も昔も変わらぬ事実だ。


競馬のレースには莫大な金額が動く事となるが、集めた金の7割は客に還元するが残り3割は賞金や運営資金に充てられ、残った分は長尾家の利益となるのだ。今や畿内や九州からも観戦者が訪れるこの競技での収益は長尾家の貴重な収入源の1つとなっているのだ。


「さあ、いよいよですわ。」


珍しく、緊張の面持ちの諏訪ちゃんの一声と同時に


軍楽隊によるファンファーレが鳴り響き、各出走馬がゲートに入った


出走馬とオッズはこんな感じだ


カゲシゲテイオー(長尾景重) 1.5倍

粉雪      (美雪)   2.1倍

疾風      (千代)   2.3倍

風林火山    (武田晴信) 2.4倍

ヒメラギちゃん (諏訪ちゃん)2.5倍

越後戦鬼    (長尾為景) 2.7倍

軍神宗滴    (朝倉宗滴) 2.8倍

富士      (北条綱成) 2.9倍

三日月     (南部晴政) 4.5倍

尾張虎     (織田信秀) 4.7倍

美濃蝮     (斎藤道三) 4.8倍

弓取      (今川義元) 4.8倍

伊達ノ黒馬   (伊達稙宗) 5.5倍

一文字     (柿崎景家) 7.2倍

オイエサイコウ (上杉憲政) 11倍

クボウフタタビ (足利晴氏) 12倍


現在、韋駄天レースを8連勝中の俺のカゲシゲテイオーが堂々の一番人気、それに続くのが南方出征時に美雪が気に入って買い付けてていた葦毛のアラビア馬の粉雪、僅差で千代と諏訪ちゃんに土産で買って帰った黒毛の疾風、と白馬のヒメラギちゃん。他にも、晴信の風林火山やらジジイ共のアラビア馬も侮れん。


そんな、錚々たる面々が馬主として名を連ねる中に、ひときわ異彩を放つ「大穴」が二つある。一人は憲政君、もう一人は晴氏君。彼らはかつて河越の合戦で長尾家に敗れた元関東管領と古河公方という輝かしい(?)肩書きを持つが、敗戦以来、伝来の家宝を売っては春日山で気楽なニート生活を送っていた。


どうやら今は、この競馬にどっぷりと、のめり込んでいるらしい。競走馬を買う資金が足りず、あろうことか、上杉と足利の名跡を担保に俺に借金を申し込んできやがったのだ。


おい。それでいいのか名門?と思ったが、俺に損は無さそうなので貸してやった。

古き名門の名跡といえども、家臣の誰かに与えれば喜ぶだろ。


貸した金も、馬を売れば返って来るしな。


「さあ、始まりましたわ!」


空砲を合図に各馬が一斉にスタートを切った……



………………


「フフフフ。どうです中将様、私のヒメラギちゃんの走りは?」


結果だけ言うと、諏訪ちゃんのヒメラギちゃんの完勝となった。まぁ、負けたけど妻が嬉しそうなのは気分の悪いモノでは無い。


前半を抑え気味に走って、後半の直線に末脚を爆発させると云う、完全に諏訪ちゃんの作戦勝ちだ。


2着には千代の疾風、3着には晴信の風林火山が入った。


俺のテイオーは、騎手を振り落としてのまさかの失格である。


あいつ、早いけど気まぐれで気性荒いんだよなぁ。


「次は、私が騎手をします!」


美雪の粉雪も中々に気性が荒い、テイオーと同じく騎手を振り落として失格だ。


ジジイ共の馬は前半のハイペースが祟り最後の直線にて失速し、馬群の中に消えていった。

今回のレースで以外に善戦したのは元関東管領、古河公方の所有馬の2頭でそれぞれ、4着、5着と強豪を押しのけ入賞を果たしている。


こいつら、政治や戦は才能が無かったが、意外と馬を見る眼はあるのかもしれんな……




元関東管領・上杉憲政が開設した憲政牧場と元古河公方・足利晴氏が後に開設した古河牧場が世界を代表する名馬を次々と誕生させるのは、もう少し後のお話。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ