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77.属性力にランクがある理由。

腹黒プリンス、目は覚ました。

「ああ、そうか。ここの子らはまだアスガイア入りは解禁されておらぬ、か。では一人目の同道者は我にならざるを得んなあ。こちらにはもう一人、誰ぞ詰めて貰うのが無難だろう。

 あとはもう二人くらい居れば、我とそなたの濃さは紛れないだろうかね?捕える相手の連行も考慮すると、そのくらいは最低限必要であろうし」

 やべえ、龍の王族以外の知り合いで引っ張り込める人がいないじゃん、なんて雑に考えてたら、ランディ様があっさり前言を翻した。そしてド正論。確かに二人で二人を連行するのは、無理がある。そもそも、一応あたしって身体的には普通の女性だしなあ。


「ああ、そんなのもありましたね。では私も無理か。いや、今の時期はまだここを離れないよう言われておるので、どのみち無理なのですが」

 イードさん、行く気だったの?それは微妙だと思うんだ。イードさん、対人戦闘の経験とか、多分ないよね?いやまあ、あたしもないけども。


「我は変化のパターンを少し変えれば多少マシだろうが、あとふたり、なあ。うーん、弟子を巻き込むか?しかしあいつも目立つよなあ」

 弟子ってフェアネスシュリーク様ですかね、あれは目立つと思いますよ。

 というか、この方も流石にこういう特殊な場面に引っ張り込める人材の知り合いなんてそういない、か。


「……なんで契約を消した?」

 そこにぼそっと、カルセスト王子の声。起きていきなり言うことが、それか。

 ちらりと眼をやると、長椅子に転がったまま、大変仏頂面の王子。ああ、声と感情表現のずれは収まってるのね。


「その契約の負荷で倒れたのよ貴方?ほっとくと一生飛べなくなるとこだったわよ?」

 化身を使うにも、戻るにも、健全な状態であること、という条件が付くのだと。それは以前マグナスレイン様を癒したときの雑談で聞いて、あたしも知ってるのよ?


「え、そんなはずは……っ」

 驚いたように起き上がりかけ、そのまま、またぱたりと長椅子の上に転がるカルセスト王子。ほら全然まだ調子戻ってない、というか初級とはいえ治癒かけたのにこれって、もう今日明日は安静に寝てろコースでは?


「属性力が不自然に減少した為に、身体が本来なら有り得ない負荷を受けているのだよ。致命的な状態になる前にそこな娘が契約を消した故、二、三日安静にしておれば戻る程度の減少値で済んだが、放っておいたら、命にも関わるものであったぞ。

 我らには到底及ばぬ十把ひとからげ程度とはいえ、守護聖獣だったものとの無茶な契約などするものではない。今回は一時的に身動きが取れぬ程度で済んだが、いかなどこぞの龍の血を持ち、常人より強かろうと、所詮そなたらは人族だ。放っておけば属性力そのものの力量差で摺り潰されるだけぞ?」

 ランディ様が辛辣な口調でがっつり解説してくれる。ん-、多分だけど、守護聖獣だった頃の契約じゃないかなあとは思う。今はもう違うようだけど。


「せめて属性がもうちょっと近ければよかった……あ、だめか、そのほうが悪い。混ざって戻れなく、ううん、取り込まれて消えかねないわね多分……ギリギリ今回の状況のほうがマシね」

 属性が合致してたら、今頃カルセスト王子の意思とか残ってたかどうか怪しい、と巫女さん系技能のどれかがジャッジ。うむう、今回の反属性多めのほうで、ギリギリセーフラインだったかあ。実際風属性の合致だけで、そこそこやばい感じに混濁が発生しかかってた感あるものね。


 カルセスト王子は、ぽかんとした顔であたしとランディ様を見比べている。その心の内は判らない。馬鹿鳥のほうは結構感情駄々洩れだったんだけど。


「ああ、一応馬鹿鳥のほうには確認してから消してるからね?どうもあいつそういう力量差で発生する問題とか考えてなかっただけみたい。契約そのものにそこまでの悪意はないと思うわ」

 騙された、なんて思わせるのもどうかと思って、最低限の擁護だけはしておく。それ以上の労力を割く気はないけど。


「仮にも人族の国を守護するモノだった癖に、そんな事にすら思い至らんとは、だから十把ひとからげだというのだ」

 大袈裟に溜息をついて、ランディ様が馬鹿鳥をこき下ろす。あたしもその点に関しては、全く異論はないので頷く。


 ぽかんとした顔のまま、あたしたちの言葉を聞いていたカルセスト王子が、ちょっとむっとした顔になった。


「……判った、それはまあ今は置いておく。で、そっちのお客さんって何処の誰なのか、俺まだ聞いてないんだけど」

 そうね、そう言われてみると、お客さんって認識した辺りまでで属性が揺らいで、そこから黒鳥と入れ替わってたから、イードさんの説明をちゃんと聞いてたか怪しいし、ランディ様はあいつには名乗らなかったもんね。


「私の師匠のそのまた師匠、つまり我が大師匠だよ。確かセスト兄も、ランディ師の名くらいは知っていたろう?」

 イードさんが再度説明する。超級召喚師ってそれだけで有名ではあるようだけど、ランディ様って真龍なの隠して活動してるんだったっけ。


《あれ、じゃあ超級召喚師って四人しかいらっしゃらないってことですね……?ランディ様が真龍族の召喚師でフェアネスシュリーク様の御師匠様だなんて話、今日初めて聞きましたもの》

 シエラが今頃気付いた、という声。そういえば、そう言うことになるのねえ。ほんとレアなんだな、超級。


「……あー、え?ランディ師の名前は確かに知ってはいるけど、フェアネス師の師匠?若くないか?え?種族、人族系じゃないって事か?何?」

 明らかに混乱した様子のカルセスト王子。まあ気持ちは判らなくもないけど、正直これはもう少し寝かせたほうがいい感じのやつだわね?本人を前にしてこの状態って、相当頭が回ってなさそう。


「う、だめだ。思考がぐるぐるする。気持ち悪い」

 とか思ってる間にギブアップするカルセスト王子。まあ水はともかく、光属性の削れが酷かったから、結構メンタルにも来てるはずなのよねえ。


「……もう今日は諦めて寝ちゃいなさい。今抱えてる事案は今日明日程度で大きく動くものじゃないんだから」

 そう声を掛けて、〈治癒〉も飛ばす。怪我の時とは違って、光の粒がどこかに溶け込むように消えていく、そんな感じ。多分足りなくなった光属性を補填する方向に力が動いてるんだろう。


「……ああ、嬢ちゃんの治癒、気持ちいいな……」

 ぽそっと、そう呟いて、そのまま眠りに落ちるカルセスト王子。なんだ、妙にかわいいとこ見せるじゃないか。まあ褒めても何も出ませんけど。


「……師匠、申し訳ありません、兄が無礼を」

 イードさんがランディ様に頭を下げる。


「いや、病人のやることだ、構わん。どうも我が思っていたより消耗が激しいようだしな。

 しかし我の予想以上の消耗、治癒で軽減、ひょっとして大きく減ったのが光、か?」

 ランディ様、真龍だけあって、人族レベルの属性値の増減とか判りづらいのかな?


「そうですね、馬鹿鳥、闇が人でいうところのほぼ特大だったので、その分、元々やや弱めだった光がより影響を強く受けてしまったみたいで」

 黒鳥の属性値は大きい方から風闇火でばらつきがそこそこ大きいタイプ、カルセスト王子は一応全部中くらい、ではあるんだけど、細かく言えば大きい方から風水光、なんだよね。

 黒鳥の火は人族の中よりちょい低い程度だったから、水属性はほんのちょっと減っただけで済んだんだけど、光は元々微妙に低めだったところに、相手のそれが人で言う特大近かったから、ランクが下がらなかっただけマシ、程度には消耗してしまっている。

 それでもランク変動を起こさなかったから、自然回復はできる。そこから伸ばすことも、努力次第ではできるはずだ。

 ランクダウンが発生すると、化身は恐らく不可能になる。いや、化身できなくなる程度なら、まだマシ、という可能性すらある。ランク変動しないレベルの消耗ですら、これだもの。


 属性値は努力である程度増やすことはできるけど、基本的に減ることはない。減ることを、身体や魂が想定していない。なので、滅多にない事ではあるのだけど、こうやって減少する事態が起こると、程度の差こそあれ、心身に異常をきたす。

 そして、限界まで減らすことで最大値が増える魔力と違って、属性値がランクダウンしてしまうと、元のランクに戻ることは、まずないのだそうだ。

 ただ、それでも普通の人程度の属性力だと、体調不良が数日続いて、あとはその状態に身体が慣れてしまうんだそうだけど、龍の王族の場合、化身のほうに不都合が出てしまう。まあ化身できなくなるわけだ。

 カルセスト王子、多分本人も飛ぶのは好きなのよ。そんな飛び方をするの。

 だから、彼本人の意思を確認するより、契約の強制解除を選んだ。あんな奴の都合で、空を取り上げられるなんて、あたしが、許せないから。

だもんで魔力ランクは称号のみだけど、属性力には極大~極小のランク分けがあるという次第。

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