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73.目標は何処に?

たいとるはこれだが逸れる話、理由はまあそれなりに。

「ふふん、伊達に千年生きてはおらんぞ。まあそれでも我は真龍の内では若造だがのう。まあ取り合えず麒麟の子の現状については良く判った。隠蔽は敢えて解除しておらんのだな?」

 自慢げに胸を張るランディ様。真龍って千歳でも若造なのか、そっか。


「そうです。強制解除だと何らかの悪影響が出る可能性もありますので、保留しています。設定された目標を達成すれば自然解除されるものなのですけど、問題はその目標ですね……」

 ヘッセン国に呼び出し食らってる間も、この問題には全く進展がなかったそうなので、以前確認したことをそのまま説明する。


「ふむ。……なるほど、下手人の族滅、ときたか。まあそれ自体は問題ないな、幸か不幸か、相手はひとりで、同族なぞ居らんという話だ。居場所も一応割れておる。

 問題は、どこぞの守護神が噛んでおる気配があるとやらで、十把ひとからげ共が侵入できんとぼやいておった位か。真龍たる我に飛脚まがいの事をさせる度胸はあるくせに、不甲斐ないことよ」

 ランディ様も隠蔽の仕様と状況は読み解けたようで、思案顔、かと思えば軽い調子で重要な情報を投げてきた。


《ひとり?妙な話です。それであれば、そもそも族滅、などという目標は指定不可能なのではないかしら》

 シエラが疑念を抱いている。まあ確かに、ちょっと用語と噛み合ってないわね?


「……もうひとり、いるはず。まだ、いきてる」

 麒麟の子が、ぼそりと呟く。


「ほう?……ああ、成程。血の復讐だから、そなたには判るのだね。だがそうか、二人か。本当にあの十把ひとからげども、盆暗が過ぎるぞ?」

 ランディ様は、やっぱり麒麟の子には優しい感じで対応している。が、さっきから口にしている十把ひとからげ、とは?


「それにしても、大師匠。そもそもなぜ、御自身が仰るような飛脚まがいの事を引き受けなどしたのです?」

 イードさんの疑問。まあもっともではある。あたしもちょっと、興味がある。


「そりゃあお前、この依頼を最初に受けてしもうたのが不肖の弟子の方だからに決まって居ろう。そなたならまだしも、フェアネスは所詮ただのエルフだからな?流石に自国のそれでなかったとして、かつ十把ひとからげ共とはいえ、守護聖獣が相手では、あやつの手には負えんよ」

 そりゃそうだ、という返答でした。そうよね、真龍から見たらこの世界のエルフは人族と同義よね。って守護聖獣?それって……


《守護聖獣が一からげ呼ばわりされる数いるなんて、サンファンだけですわね?流石に十把もいませんけど》

 やっぱそうよね?つまりこれって、サンファンの守護聖獣の四体がこの案件の依頼者ということ?


「ハイエルフでも無理、ですか……」

 ランディ様の返答を聞いたイードさんが眉を寄せる。あら、フェアネスシュリーク様、ハイエルフなんだ。

 とはいっても人族系上位種って、この世界だと割と微妙らしいんだよねえ。魔力と寿命が増えるだけ、らしいよ。ソース?種族研究の専門書、イードさんに借りた奴。


「ハイエルフでも、そこの娘の魔力量の半分もないのだぞ?無茶を言うでない……いや、待て、例を誤った。そなた、魔力も隠蔽しておるな?……我より、多くないか?」

 うげ、ちょっと待って、メリエン様の隠蔽見破ったぞこの人?!


《うわあ、流石真龍族。実は真龍族って神様方と対立気味でして、神力の絡むものはちょいちょい見破ってくるんですよねえ》

 シエラ、そういう情報は出来たら先に!まあ今回は諦めようか。


「すみません、あたし他人の魔力量は良く判らなくて」

 取り合えず自分からは比較できないから、こう言うしかない。


「そりゃあそうだろうとも……他人の魔力量を見る事が出来るのは、我々真龍の魔力量位が限界だ。それを越すと全て自分のそれに紛れて判らなくなってしまう。以前魔力量を一時的に増やす薬の実験台になった時は、そりゃあ酷かったものだ、世界丸ごと失認しそうになって慌てて吐き出したものよ」

 それは怖い。でもそれって、彼らは世界そのものを魔力だけで認識してるってこと?

 まあ慣れると便利なのかもしれない。視覚と違って全方位認識可能ってことだもんね。

 そして、あたしが他人の魔力量を測ることは、今後もできなさそうと判明しました。うぬぅ。


「不思議そうな顔をしておるが、そなたの存在のほうが余程不思議だぞ。その魔力量でなぜ失認を起こさぬ?」

 ランディ様が眉を寄せてこちらを見ているけど。


「魔力じゃなくて視力でものを見てるからじゃないですかね……」

 視覚と聴覚とあとは勘。その程度だもの、あたしの認識範囲って。充分制限されているから、普段の生活をしている分には、魔力は特に邪魔にはならないのよね。


《人に紛れるのはお得意だそうですけれど、結局のところは真龍族なので、人間のそういう制限はあまり把握しておられないのかもしれませんねえ》

 シエラが何やら微笑ましいものを見ているようなニュアンスでそんなことを言っている。なるほど?


「大師匠、真龍の認識できる世界と、我々の認識できる世界は、大幅に違うと、前にも申し上げましたよ。我らは、魔力だけですべてを認識できるほど、魔力そのものに通じておりません」

 イードさんが渋々、といった様子でツッコミを入れている。

 あーあーあー、そうか、魔力そのものへの理解度の深さからして、違うのか。成程なるほど?

 そりゃあ話が地味に嚙み合わないわけだわ。

 多分、人族の感知している魔力のあれこれって、全体から見たら上っ面くらいのもので、実際にはもっと深い世界があるんじゃないかな。

 ……あー、あたし、それをある程度掘らなきゃいけないのね、今なんとなくそんな気がした。

 そのための、馬鹿魔力なのか、馬鹿魔力だからそうしなくちゃいけないのか、は判らないけど。


「まあ普通の人族ならそうだろうがな……そなたも、そこな娘も、そうではないからな?自覚せいよ?」

 ランディ様もそれらしき発言。ってイードさんもなんだ?


「いやいや、カーラ殿はさておき、私など普通の範疇から漏れてなど、いませんよ」

 こら、あたしをさておくんじゃない。いやまあ魔力周りはさておかれてもしょうがないんだけども。

 それよりも、イードさんの言い方が、ちょっと引っかかった。嘘が、含まれている?

 いや、自分で認めたくない、か?この人、時々そういう謎な感情の動きがあるのよねえ。

 存在が特殊な感じがあるから、ある程度はしょうがないのかな、とも思うけど。

 いや、冷静に考えると、彼の感情の動き自体が何となくわかるのも、変だな?あたしのスキル、人間には通じないはずなんだけど。

 でも最初獣人の子だと思ってた麒麟の子の感情も、判りかねてたから、〈記憶と記録の魔法〉同様、あたしの認識でぶれるのかしら?

 ……いや流石にそれは違うだろう、あれは麒麟の子が感情を抑えてたのも理由だし、あたし、流石にイードさんを人間じゃないって認識はしたことないわよ?むしろ、非常に人間らしい人だと思う、カルセスト王子より、よっぽど。


《比較対象がそこなのも、どうかと思います》

 シエラの静かなツッコミ。いやだってあの人目がいつも笑ってない感じだし、なんか感情と発言がちぐはぐに感じる事があって、相対してると嫌な意味で落ち着かないのよ。


《そう言われてみると、初対面時はともかく、ふざけてるときってだいたい真顔ですね、あの方》

 そうでしょ?どうもあれが、落ち着かないんだ。苦手。



 随分と話が逸れたものだけど、理由はまあ簡単で、やることは決まっているけど、どこから手を付けるか、というか、最初に何処に行けばいいか、が今の情報だけでは決められない、だけなんだよね。


「んで結局、そのやらかした奴は何処に?話の流れ的にサンファンじゃない、ってのは判らなくはないんですが」

 場所は判ってるって言ってたから、攻めるならそこからかなあと思ったんだけど。


「いや実は、我は聞いておらんのだ。ただ、そろそろ此処にそれを知る者が来るはずだ。実の所、我もそれを待つために此処に来たのだよ」

 おうっふ。いやまあ知ってたらサクッとじゃあ行こうか!とか言い出すタイプのようではあるから、予測してなかったとは、言わないけど。


 でも、標的の居場所を知る者?誰だろう?ランディ様のいう十把ひとからげの誰かが此処に来る、ってことは流石にないよね?

そんなん馬鹿魔力のせい、のほうに決まってげふんごふん。

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