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72.予感と予兆と対応準備。

イードさんが大師匠相手に警戒しすぎて言葉遣いがずっと別人モードで書きづらい。

「さて、じゃあ本題に入ろうか。

 黄白麒麟なんだけど、偽装が厳重過ぎて、接近しちゃうと逆に判らなくなるんだよねえ。多分僕が偽装の影響域に入っちゃったってことなんだろうけど」


 ほほう、つまり離れた場所からだと、居場所が判るのか……なんか地味に面白い仕様だけど、偽装側の特性なのか、真龍の特性なのか、どっちだろう。


「大師匠すら欺ける偽装、ですか?」

 イードさんは訝し気だ。

 そういやあの子の話って、直接イードさんにしたっけ?

 カルセスト王子がしてる気は、しないんだよね。


 あの子を暫くここに置くってなった時に、聖獣の子だって話自体は、誰か、多分サクシュカさんかマグナスレイン様がしたはずなんだけど。した、よね?


「うむ、むしろヒントこそ貰っているとはいえ、この隠蔽を遠隔でなら感知できる、ってほうがどうかしているね、我ながら。

 とはいえ、我々は隠蔽を読み解くほうの能力には元々難があるんだけども」

 ランディ様は結構慎重に言葉を選んで話している。

 どうやら、まだ何かを警戒している。そして、あたしにも微妙な、微弱なそれがなんとなく、判る。


 ん-、逆探は流石についてなさそうだから、あたしがこの警戒対象を認知したことは多分ばれないな、おけおけ。

 そして、遠隔検知に関しては、この話しぶりだと、どっちかというと真龍の能力のほうかな?

 なお本題モードになった段階であたしの思考もシエラが隠蔽かけてます。


 なお話題にされている本人は、庭先で尻尾をゆったり振り振り庭師さんズの作業を眺めたり、遊びにきた幻獣の子達と戯れたりしている。とても、平和な光景。


 だけど、今の状況、そしてあの子自身の願いの為には、この光景にほっこりして先延ばし、なんてことは、多分もうできない。まあ、いつもの勘だけど。


 なんか、世界のどこかで、やばいカウントダウンが開始された気がしてしょうがないのよね。まあ、カウントの桁自体は一日一減るくらいで数字はほぼ三桁に近い所からっぽいし、カウントゼロになったところで、この国やあたしたちには直接影響はしないやつ、って感じもするけど。


 でも、そのカウントゼロで、多分、あたしたちの知らない所で、あたしたちの知らない人がたくさん死ぬ。そんな予感がするのよ。

 それは、流石に気分が良くないの。気付いてしまったなら、もう無視はできない。それがあたしの性格だしね。


 まあ、自分の手の届くもの全てを救うって宣誓しちゃった聖女様のようにはなれないし、なるつもりもないけど。

 あーそうだ。聖女様との連絡を受け持ってくれるような召喚獣、探さなきゃかー。普通の鳥だとほぼ確定で契約をびびられちゃって、棚上げ状態なのよねえ。


「ひょっとして、遮音結界でも張るべきですか。といっても私は使えないし」

 イードさんが何かあるらしいことに気付いたものの、ちょっと困り顔。まあこの人はホントに召喚術しか使えないからねえ。


「ああ、それなら」

 サクシュカさんにやり方を教えてもらったし、風属性の初級だからあたしも遮音結界は使えるようになっている。

 気休めのような気はするけど、部屋と、ちょっと範囲を広げてあの子も入れておこう。

 耳がずっとこっち向いてるから、ちゃんと話は聞いてるはずだし。


「おや、遮音結界も使えるのか」

 イードさんが知らなかった、と顔に書いている。

 まあ使うのは初、というか、イードさんの前で風系魔法使うの自体が初ですね確か?

 あ、ちなみに遮音結界は結界と言いつつ、護法ではありません。普通の風属性、非攻撃性一般魔法だ。


「ええ、なんだか出張中にいろいろあって、すっかりこれとか、結界術が得意になっちゃいまして」

 守護魔法は相変わらずライトブレスしか使えないけどね。


「結界術連打する出張って嫌な話だねえ」

 あたしの言い方に、ランディさんが苦笑している。

 まあ気持ちは判る。たった数日で護法が称号なしから中級だもんね……この人多分あたしの称号も読んでるよね?


(魔力称号がないので、一つ以上隠していることは判るけど、隠れてるのは本当に判らないなあ、強固な隠蔽だね。で、この[もふもふ中級者]って何の称号だい?)

 心底判らん、不思議だ、という雰囲気の念話が飛んできました。

 いやそれはあたしにも謎でしてね?あとはある程度納得いくんですけど。


 実は、この称号、取得理由が書いてないんですよ。

 元の世界由来の称号に多い現象だそうだけど、あたし、元の世界では病院暮らしで、もふもふには全然縁がなかったから、そのセンはまずないのよね。

 思考本体は隠蔽中なので、取り合えず返事だと意識して、理由不明です、とだけ答えておく。


「さっき言ってた神様からの強制依頼もその時の話ですしね。

 ところで遮音だけじゃなくてもうちょっときっついの張れますけど、どうしましょうね」

 流石に龍が踏んでも壊れない系物理結界は要らないっぽいけど、なんか魔力結界張った方が良いような雰囲気がするんですよねえ?


「ああ、そうだねえ。ちょっと偽装かけるから、待ってね。えっと、あそこの子まで入れればいいかな?」

 ランディさんがそう返答して、耳だけこっち向けてる白い獣人の子を示す。


「はい、範囲はそれで」

 あまり広範囲を指定すると、偽装系はぼろが出やすいっていうから、ある程度範囲は絞ってもらうとしてもだ。あの子は当事者だ、ちゃんと入れとかないといけない。


 偽装が完了したという合図があったので、魔力結界を構築する。偽装の内側に、慎重に。効果時間は……まあ二時間くらい見とけばいいわね、途中で消すことだってできるし。


「わあ、きれい」

 麒麟の子が結界の魔力光を見て、嬉しそうな顔になる。ふふん、褒めていいのよ!


「これはまた、初心者とは思えぬ緻密な……まあおかげで助かる。

 我は護法は得意ではないのでな。

 全く、十把ひとからげの守護獣の分際で、真龍に監視を付けるなど、タダで済むと思っておるのかね?」

 結界を確認したとたんに、口調も態度も尊大な感じに変わるランディ様。

 なるほど、ここまで全てが、偽装か!


 いやどうも真龍族の話を伝え聞いたときに一緒に齎されていたイメージと、ランディ様の口調と態度が微妙に合わんなーって思ってはいたのよ。

 最初は個体差ってやつだと思ってたんだけどねえ。


「大師匠のその口調も随分久し振りに聞きますね……」

 イードさんの表情がなんか微妙な方にぶれてる。

 あっこれこの人格面倒な方だったりするやつでは?まあ手遅れだけど!


「娘、隠蔽しているからと不遜な事を考えておらんだろうな?

 まあ二十年も生きておらぬ小娘では大したことも考えんか……ともあれ、そこな麒麟の子よ、こっちにおいで、別に取って食いはせぬし、無理に連れ出すなどもせぬからな」

 あっそういえばお茶の準備しにいったジェニアさんを閉め出してしまった気がする?


 いや、庭から回り込んでお茶セット持ってきてたからセーフだ、麒麟の子におやつをついでで持ってきたらしい。

 フェアネスシュリーク様が消えてその師匠に変わってるせいで、ジェニアさんが不思議な顔してるけど。これどうしようね?まあパニクってはいないから、後でいいか。


 呼ばれた麒麟の子は、おやつに貰ったふかし芋を片手にやってきた。

 食べる直前に呼ばれちゃったから、ちょっとしょぼんとしている。


「おお、すまんな、取り合えず傍にいれば良いからな、お芋は食べていてよいぞ」

 最初よりもだいぶんと優しい口調でランディ様が麒麟の子に話しかける。

 にっこり笑ってお芋に手を付ける麒麟の子がかわいい。

 そして、お芋、というランディ様の表現も、ちょっと可愛い。


「何をにやついておる。ああ、おなごは小さきもの愛らしきものを愛でるというからそれか。

 そういうところは普通の人の子なのだな」

 こちらに向きなおって地味に失礼というかなんというか、微妙な事を言い出すランディ様。

 そういうところが普通ってそこ以外は普通じゃないと?


 ……まあその、なんだ、魔法絡みでは、確かに普通では、ないかも。


「……丸め込まれておる」

 うっかり黙り込んだら、まさかのイードさんに追い打ちをかけられた。


 丸め込まれてるわけではない、現実をちゃんと見てるだけよ!

 まあイードさんにも判るように表情に出ちゃったのは失敗だと自分でも思うけど!

これでもランディ様は真龍の中では人懐っこい性格です。

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