表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

 第一話 むかしむかし

 その昔、ミシェラン皇国と言う国がございました。

 たいそう栄えた国で、賢王が五代も続き。

 王都ランシェは並ぶ物もない程立派な都でがざいました。

 この国を治めているのはラモン・マグサイ・ミシェランと言う賢王でございます。

 賢王には幾人もの子供がございました。

 その中にアランと言う皇子がおりました。

 金髪碧眼でたいそう見目麗しい皇子で驕ることなく剣と勉強に励んでいたそうです。


 ある時、皇子は森で一人の少女と出会いました。


 その日皇子は森で狩りをしていて、供の者と逸れてしまったのです。

 皇子は仕方なく猟番の小屋に向かいました。

 森の真ん中に猟番の小屋があるのです。

 小屋に向かう途中に花畑があり。

 そこで少女が眠っておりました。


「こんな所で眠るのは危ないよ」


 皇子は白いマントを纏った少女をゆり起こしました。


「う……ん……」


 少女はゆっくり起き上がり王子の方に向きました。


「君は誰だい? どうしてここで眠っていたの?」


 皇子は尋ねました。


「わたし……お婆様のお墓の前で眠ってしまったの……」


 よく見ると少女の前に大人の頭ぐらいの石が置かれています。

 パサリとフードが後ろに落ちて少女の顔が露わになりました。

 少女は青みがかかった銀の髪に緑の瞳。

 その顔は天使のように美しい。

 皇子は一目で恋に落ちてしまいました。

 少女も凛々しい王子に一目惚れしてしまいました。


「私の名はアラン。君の名は?」


「わたしはラナだよ。森でお婆様と薬草を作りながら暮らしていたの。でも……お婆様が亡くなって……それで町で暮らそうと思ってお婆様のお墓にお別れを言いに来たのに、疲れて眠ってしまったの」


「そうか……薬師のおばばは亡くなったのか……」


 少女は悲しげに俯きました。

 皇子はその顔に見惚れながらも手を差し出しました。

 少女は頬を染め皇子の手を取り立ち上がりました。


「そうかラナは一人ぼっちなんだね。だったらうちに来ないか? 薬師なら大歓迎だよ」


「いいの? アランの所は薬問屋なの? 文句を言う人はいないの?」


「薬問屋じゃないけど。そうだな文句を言う奴がいたら私の婚約者だと言えばいい」


「婚約者?」


「ラナは俺の事が嫌いか?」


 ラナは真っ赤になった。

 森の中で暮らしていたラナはおばば様と時折訪ねてくる、商人のお爺さんしか知らなかったのです。


「ず……ずるい言い方だよ。わ……私達初対面だよね。婚約は早いんじゃないのかな?」


「初対面じゃないよ。森のおばばを尋ねた事があった。その時会っている」


 アランは思い出しました。


「あ……猪に襲われて怪我をしたお兄ちゃん?」


 ラナは思い出した。

 8年前に王族がこの辺りで狩りをして皇子の一人が怪我をしたのだ。

 森に住む薬師の祖母の元に怪我をした皇子が運ばれてきて。

 皇子は1ヵ月ほどおばばの世話になったのだ。


「酷いな~ラナは僕のことを忘れていたの? 僕は覚えていたのに」


「だってだってアランは顔にも怪我をしていて包帯男だったよ。声変わりして声も変わってしまっているよ」


 皇子が答えようとした所でアランに声をかける者たちが現れた。


「皇子。こちらにいらしたのですね」


 ガチャガチャと騒々しく屈強な男達は現れ。

 はぐれた護衛騎士達が20人ばかり森の中から出て来ました。

 手に弓や槍を持っています。日の光を受けて騎士達の鎧がきらりと光る。


「? 皇子その娘は?」


 40代の騎士団長が皇子に尋ねた。

 森の中に若い娘が居るのは不自然だった。

 敵国の暗殺者かも知れない。或は夜盗の類かも知れない。

 騎士達は油断なく身構えた。


「彼女はラナ薬師だ。城に連れ帰る」


「皇子いけません。かような得体の知れない者を連れ帰るなどと!!」


 家来たちは驚きました。

 皇子が初めて我儘を言ったからです。


「ラナは昔世話になった薬師の孫だ。今僕らは婚約をした」


 家臣は急なことで大慌てです。

 皇子は家来の言葉を無視して娘を連れ帰りました。




 皇子は少女を城に連れ帰り。賢王と皇妃に少女を紹介しました。


「父上母上。この娘はラナ。森のおばばの孫だ。私は彼女と結婚します」


 皇子は2人に娘と結婚すると宣言したのです。

 慌てたのは周りの貴族達。


「なんと!! どこの馬の骨と分からぬ娘と結婚だと!!」


「気は確かか?」


「王賢とお后は恋愛結婚だったが、后は伯爵令嬢だったぞ!!」


「いくら身分は関係ないとはいえ薬師だと!!」


 彼らは自分の娘を皇子の妻にと望んでいたからです。

 賢王には幾人もの皇子と皇女がおりましたが。

 性別に関わらず、一番優れている者が賢王に選ばれるのです。

 そして一番優れているのは第三皇子のアランだったのです。

 兄弟たちは内心喜びました。伴侶に選んだ相手も選定の対象になるのです。

 王位継承を放棄したように見えました。


「お父様よろしいでしょうか?」


 賢王の前にアラン皇子の姉であるテレサ姫がスッと手を上げました。


「なんだテレサ申してみよ」


「いくら恋愛が自由な王族でも余りにも身分差がございます。そこで三年間王族としての教育を施して見てはどうでしょうか? 今はアランも恋に浮かれていますが、真実の愛ならどんなに離れていても愛が冷めると言うことはないはず。アランには辺境の守りに就かせれば良いでしょう。丁度辺境はスタンピードが起こりやすい時期です。そこで武勲の一つでも立てれば箔が付くでしょう」


「うむ。それは良い案だ。流石【知姫】と言われることはある。アランもそれでよいか」


「わかりました。御命令なら謹んでお受けいたします」


 不満はありましたがアラン皇子はその案を受けるしかなかったのです。

 元々アラン皇子は王位継承には関心がございません。

 姉の提案に乗るしか選択肢は無かったのです。


「アラン……」


 アラン皇子は優しくラナにキスをして微笑みました。


「私は必ず帰ってくる。兄弟達は私が王位を狙っているのではないかと疑心暗鬼になっているが。私は王位を辞退し臣下に下ろうと思っている。」


「ラナは平民でもアランの側に居られるのなら幸せだよ。どうか無事に帰って来て」


 城の中庭で、二人は別れを惜しみました。

 アラン皇子は辺境へ向かい、ラナは城に残りました。

 この後惨い運命が訪れるとも知らず。






*************************************

 2019/7/11 『小説家になろう』 どんC

*************************************

最後までお読みいただきありがとうございます。

ぎっくり腰になって痛いです。

作品のスピードが遅れて申し訳ございません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ