目力の暴力
戦闘訓練も始めて数日。
カイルさんの【先見の明】によればあと2週間ちょっとで決戦の日。
戦闘訓練の形式はいたって簡単。
鬼ごっこ後の多少消耗した状態で同じくらいの実力の相手と戦う。
戦った後、互いの反省点を言い合って、あと数人と同じことをやって終わり。
ただ、中位層や下位層はともかく、上位層は同じ相手とばかりになってしまう。
よって、俺たちが交代で相手をしている。
レインとアミラが戦っているのを見ながら、膝の上のプリンセの頭を撫でる。
「そういや、そろそろだっけか? 商人たちが来るのは」
「そうだね。今日だったと思うよ。一応、迎えに行くように言われてるしね」
「へー」
俺たちも城から食料を給料として貰っているわけだから、他人ごとではない。
どんな品ぞろえがあるのか見たいな。
「それ、俺も行っていいか?」
「いいけど、なにかあるのかい?」
「いや、ただの興味本位だけど」
「うん、まぁ、支障はないだろうからね」
この状況で戻ってくる人達っていうのにも興味があるし。
「終わりました」
「ほい、お疲れ」
やはり、粗がある俺はかなり時間がかかってしまうこともあるのだが、キラとレインは相手のレベルに合わせながらもいつでも終わらせられるような立ち回りをしている。
俺には出来ない芸当だが。
なにしろ攻め手が少ない。
ただ、参考にはしたいな。
「次は僕だね」
「よろしくお願いします!」
エイグはキラとやるときだけ気合いが格段に違う。
いや、別に悪いこととは言わないけどさ。
好きな人にいいところを見せたいってのは誰にでもあるだろうし。
ただ、なんというか、こう。
戦い以外でアプローチは出来ないものか。
いや、アプローチはしているのか。
キラが知ってか知らずかスルーしてるだけで。
「さっきキラさんと何の話してたんですか?」
レインが俺の隣に座る。
「例の商人たちの話だよ。キラが出迎えに行くっていうから、ついて行こうかなって」
「……なにか狙ってます?」
「そんなに俺信用ない?」
そんなに俺は何かすると思われてるの?
「いえ、大抵リブレさんがよくわからない動きをするときって何か狙っているっていう信用がありますよ」
「それは信用というのか?」
いや、一応は言うのか。
「で、今回は何もないんですね?」
レインが俺の眼をじっと見る。
碧色の瞳に見つめられ、思わず俺は眼をそらす。
「あ! なんでそらすんですか!」
「いや、なんか心の内側まで見られてるような気になって……」
「そんな特殊な眼を持ってるのはリブレさんだけです! ほら、こっちを向いてください!」
レインの手に両頬を挟まれ、強制的にレインの方を向かされる。
うーん。
こういうやり取りもなんか嬉しいな。
周りからの「他所でやれよ」っていう視線が凄いが。
意に介していないのは俺の膝の上に相変わらず鎮座しているプリンセと、俺の背中に乗っているオーシリア、あとはキラとエイグくらいか。
エイグは本来なら思ってるだろうが、今は必死だからな。
「いや、精々なにか良からぬことを考えていないか見てやろうとしか思ってないって」
「思ってるじゃないですか」
とうとう白状させられてしまった。
特に重要ではないけど。
なんか負けた感が凄い。




