はじめての闘い その25 ―花占いをする時、だれもが「きらい」からはじめる3―
"摂"氏は敷居を抜けて、バスルームから、"ジュネス"邸<離れ>のベッドルームに、戻りました
――先程、鼻についた、腐った<メール>なニオイはもう、しません
――リフレッシュして、そのものが回帰したのです…
――それは、目の前にいる"蜘蛛宇宙人"の体臭
――または香水?
十分に距離を取って、
「わたしの実力を、あなたは、わかっているのですか?――わたしには、あなたのそれが、わからないのに?」と、"摂"氏。
「予想はつく――こっちの方はな」
――そして"蜘蛛宇宙人"は、自分の<タンプ>(蟀谷=こめかみ)を二度、その人差し指で突きました
――黒革の<ガン>に包まれた、指
「――でも、<ベリ>の方は、まだわからない」
と、"蜘蛛宇宙人"が続けるので、
「<ベリ>?」
「そうだ。<闘い>の方だ」
――そんな、毅然。
「わたしは、争いなど好みません」と、"摂"氏
――少し、声が弱くなりました。
「でも、よく挑戦されるだろう?」
――その声、挑戦的。
「さぁ…」
――そして、間。
「これからは、そうなるさ」
「どの様な理由から(そう言っているのですか)?」
「オレの経験からだ」
「経験は、<知性>や<知識>そのものではありませんよね?――勿論、知性を、より優れたモノへと進展させる為にそれが役立つだろうことは認めます。しかし、問題は、経験を得た人間がそれを、どう活用するかであって、経験――」
「わかったわかった――」
ストッペ!
という意味の、顔の前に突き出された<掌>
――そして、黒革のガンを、顔の前で、左右に揺すりました。
「――わかったわかった。もういいよ」
そして、"蜘蛛宇宙人"は続けます
――ベッドに腰掛けたまま、体勢を前屈みにして。
「お前、学校で嫌われているだろ?」
「ええ、そう思いますね――実際、直接そう言われたことが、何度かありますし」
そして、
「それが?」
という顔付をしました
――因みに、"摂"氏は<ロボット>で
――はありません
――<人間>です。
「とにかくこれから、"敵"がいっぱい、襲ってくる」
「そんなことはありませんよ」
否定のジェスチャー。
「そんなことはない――今までだって、何度かあった筈だ」
「そうですね――<競争>はありました」
「そんな話をしていない――どうせお前の言う<競争>なんて、学校のヤツとか、目上のヤツとか、あとは近所のヤツとかとの、ポイント稼ぎの話だろ?」
「そうですよ――他に、誰と何が?」
「<そいつら>の話なんかしてない!」
「では、①<誰について>、そして②<どんな闘いについて>発言しているのですか?」
「知の闘いだ」
「ち?」
「知性の」
「そうなんですか――しかし、あなたは未だ<誰について(①)>か、答えていませんよね?――それで、誰と闘うんですか?」
「<人間>とだ」
「宇宙"人"ではないわけですね?」
「宇宙人なんか、いる訳ないだろ――」と、自分の意見に自信満々な"蜘蛛宇宙人"。
「では、外国"人"なんですか?」
「そうじゃない――同じ国に住んでいる<人間>だ」
「では、あなたが既に提示した例に当てはまるのではないですか?――あなたは否定しましたけど…。同じ国に住む者はほとんど、同級生か、目上、目下、そして隣近所…」
「違うんだ――お前が未だ知らない、会ったこともない、見たこともない<奴等>なんだ――存在していることさえ、気づいていない」
「知らないヒト?」
「ソイツラに会った時、お前は、ソイツラが<実力>を持っているが故に、敬意を払う
そしてお前は、<実力>を示すことで、ソイツラから敬意を払われる
ソイツラは、お前が<ヤマアラシ>の様になった時に、血塗れになりながら抱きしめるだろうし
お前も、同じことをするんだ」
「でも、"敵"なんですよね?」
「"敵"であり、"仲間"なんだ!」
"摂"氏は、この時になってはじめて、
ベッドの上、目の前に座る相手が、
<<気味が悪い>>
と思いました。
<<怪しい団体にでも、勧誘されているのだろうか?>>
[そんな事は無いのですがね……
――寧ろ、"ジュネス・ルィェ"は、"摂"氏が"ソイツラ"に会う様なことがなければ、と願っていたのだと思います]
「一体、誰の話をしているんですか?」
――本人は気付いていませんでしたが、"摂"氏は、ひどく感情的になっていました
――そして、気づいていませんでした
――身にあるその<熱さ>は、皮膚に染みこんでいた<昼間の暑さ>、その<名残>ではないのだ、ということを。
「オレとお前だよ
――そして、<奴等>だよ
――そこら辺の人間の話じゃない
――そんなの、問題でさえない
――ソイツラに会った時、お前は
生きなければならなくなる」




