『実力』と、それを包む邸宅 その10 ―れーる ぬ ふぇ ぱ ら しゃんそん―
ちなみに"ジュネス"邸ダイニング・ルームは「L」(える)字型をしており、"摂"氏たちのいるテーブルは、「I」(あい)の部分にあります
――ちょうど、「I」の上辺(一画目)あたりに、二人は座っています。
底辺(三画目)を折れ曲がって、伸びて、
[Lの、角の部分の先に、"ジュネス"邸のキッチンが、別の部屋として、あります]
奥に、<オーディオ・プレイヤー>があるのです
――"摂"氏の座っているところからは、見えませんが。
音楽が来ました。
"ジュネス"も来ました。
"摂"氏は、スピーカーの質を聞き分けることが出来ません。
しかし、大金持ちの家にあるモノですから、質は良いのでしょう
――多分。
そんな"摂"氏でも、流れる音楽の種類だけは、確認出来ました。
<HIPHOP>(ひっぷほっぷ)です。
脚韻――それも母音押韻――が特徴的です。
格助詞母音韻ではありません。そして、
頭韻は、ありません。
"摂"氏は、心地良く感じました
――"摂"氏には、嫌いなモノなど、この世に無いのです
――基本的には。
「これは、最新の――いま人気の――歌なのですか?」と"摂"氏。
「いや、もうクラシックだね」
"ジュネス"は口ずさんでいます。
"ジュネス"は、"摂"氏が曲をどう思うか、質しませんでした
――顔さえ見れば、それまでの苛立ちが比較的、解消されていることは明らかでしたから。
その<HIPHOP>(ひっぷほっぷ)のクラシック曲は、クラップ(拍手)がわざとらしくない――そしてスネアドラム――同じ意味の言葉を延々と、
例1:「パーティーしようぜ!」
例2:「踊ろうぜ!」
例3:「のし上がって金持ちになんぜ!」
繰り返すことが無く――メロディアスで
――<HIPHOPER>(ひっぷほっぱー)誰もが重んじるライム(韻)やリリック(歌詞)部分よりも、寧ろメロディーに魅力があることが分かります。
それに添って流れる、ラップが五月蠅くないのです
――主張はあるのに、自己主張の押しつけがましさがないのでしょう。
そして、
「F」
を頭文字とする下品語を、一切、使用していませんでした。
そのクラシックは、<若くして死んだ仲間のこと>を歌ったモノでした。
「ダージ」
――つまり、<葬送歌>
――誰も、そうは呼びませんが。
多くがイメージする「ダージ」が持つ、典型的な悲壮感は無く、怒りも表面化せず、だからといって淡々とはしていない、冷たさの無い、鬱の無い、不思議な歌でした。
耳を澄ませて横を向く"摂"氏はもう、テスト勉強など、どうでも良いものでした。
――もともと、"摂"氏にとって、<学力テスト>など、どうでも良いことの一つでありましたが。
そしてその、<ダージ>な<HIPHOP>(ひっぷほっぷ)クラシックナンバーが終わります
――すぐにパーティー・チューンが始まりました。
「これは、アルバム?」と、"摂"氏は、プロファイルを改め、眉を顰めました。
"ジュネス"は、認めます。
しかし、選曲はランダムだということ。
さらに、"ジュネス"は曲の順番を、機械任せで、手を加えるつもりは無いとのことです。
[<CD>(しーでー)の時代でした――それから、<MD>(えむでー)なるモノもありました――今もあるのでしょうか?]




