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ゾーンの向こう側  作者: ライターXT
応答編(インターハイ)
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73/207

第73話   しゃべくり〇〇

「うぉー!デバじゃん!こんな所でコッソリ観てたのかよ。国巻に負けるとかマジでダッセーよな!まーけ犬!まーけ犬!」

「来てたのか・・・てか殺すぞ。高橋。」

「うわぁ!キレてんの!?さらにダッセェな!」


国巻が2点目を取った瞬間、観客席にて花野江高校の高橋が、同じUー15日本代表メンバーである桜台東の出羽を見つける。


共に【天才】と呼ばれる2人の関係ほど、表現しづらいものは中々存在しない。彼らは時には同胞であり、時にはライバルであり、時には宿敵にもなり得る。ただ、唯一共通していることと言えば、二人共【選ばれし者】だということ。天性のドリブルスキルと加速力を持つ高橋と、極めて高いボールコントロールと他人の意識するスペースを可視化できる出羽は、甲乙付けがたい傑作同士である。それは互いが極めて高い技量を持っていることで、容易に相手を認める要素にもなった。

高橋の憎まれ口はいつものことである。普段なら聞き流す出羽も、悔しいと感じた国巻からの敗戦をつつかれたことで、今回ばかりは珍しく怒りを露わにした。


「お前があの試合に出てないから!んなことが簡単に言えるんだよ!」

「いやいや、俺らはお前らが戦う前に、国巻に勝ってるし。余裕で。」

「は?余裕?」

「なんだよ。」

「お前俺にあの日、プレ大会の日の夜、『ビビった!』ってメール送ってきただろうが!」

「そうだっけ?」

「ざせんなよ!見してやろっか!?履歴!!」

「うわー!天下の天才、クールが売りのデバさんがこんなにキレたの初めて見たわ。寒~~~!」

「この野郎!大体、お前がいっつも俺のこと出羽で無くて『デバ!デバ!』って言うから、知らない間に『ディーヴァ』ってニックネーム付けられたんだぞ!いい加減にしろよ!」

「え?あれ、オレが発祥なの?」

「当たり前だろ?他にデバなんて言う奴いねーに決まってんだろ!」

「マジで?・・・ところでさぁ?」

「はぁ?」

「ディーヴァって・・・何?」




試合はその後互いに決め手を欠き、国巻の1点リードで前半が終了する。

終了の笛が鳴ったと同時に、2点目を演出した竹下は、猛ダッシュでピッチから去っていった。


「なぁデバ?あの2点目作った国巻の奴、何慌ててんだろうな?」

「知らねー。まぁ、上手かったけどな。」

「はぁ?あんなん大したこと無いし。仲間を吊りに使ってとか小狡い方法やるから上手くいったんだろ?」

「でも、大剛のディフェンダー2人は結構やり手じゃん。」それはラファエルと秦原のこと。

「足したらな。」

「え?たしたら?」

「そう。あの5番は確かに上手いよ。スキルは高い。でも体格は並じゃん。」背番号5番は秦原のこと。

「んで、もう一人の3番は、クソデカいし速い。でも、そんなに守りのスキルは無いと思う。」背番号3番はラファエルのこと。

「2人のいいとこ取りなら、お前も認めるほどになるってことか?」

「別に認める訳じゃねぇよ。ただ、【面倒臭いって思うディフェンダー】には必ずなるな。」

「そんなこと言ったら、国巻の3番はどうだったよ?」

「どうって?」

「あの3番はチョットは面倒くさかったんじゃねぇの?」

「いいや。違う。」

「え?」

「ちょっとじゃない。クソ面倒臭かった!!」

国巻の背番号3番とは、木村のことだった。


「マジで!?お前がそこまで??」

「いや、お前もやってみてわかっただろ?アイツは本気でムカつくよ。何でか全部フェイント読まれるかんな。最後はビューン連発したし。」

「ビューンって・・・まさか。お前が・・・全力ダッシュ使ったのか!?」

「国巻戦はほとんどそうした。」

「え!?お前がマジで走るのって滅多にないじゃん!」

「負けたお前ならわかるだろ!?あの国巻の3番がどんだけ止めるか!」

それは出羽も同意できた。それだけ木村の守備能力は高かったのだ。


しかし出羽は語る。

「でもさぁ。凄いよな。」

「あぁ?なんだよ?」

「あの3番よりすごい奴がいたって所が国巻の凄い所だよな。」

「な!!オレがメールした通りだったろ!?」

「だな。完璧にやられたよ。大したこと無いって思ってたんだけどな。」

「俺も俺も!!てか並みの奴より弱いって思ってたのに、完璧アイツにやられたからな!」

「一緒だわ。ナメてたら逆に噛み殺されたし。」

「マジで凄かったよ!アイツの【セービング】!!!」




「ん!!??」




「・・・どした?」



「せーびんぐぅ!?」



「だから・・・なんだよ??」


「高橋・・・お前・・・誰のこと言ってんの!?今、国巻の話ししてんだぞ!?」



「わかってるよ!だから!あの国巻の坂田ってゴールキーパーの話をしてんだろうが!」

「・・・お前が・・・。」

「はぁ?」

「お前がメールで凄いって言ってた選手って・・・【キーパー】なの??」

「当たり前じゃん。」

「トップ下じゃ無くて???」

「はぁ!?トップ下!??」


高橋から送られたメールには、「国巻には本気で凄い選手がいた」とだけ記されていた。出羽は国巻との試合後、高橋が言ってる選手は、トップ下で怪我をしてまで得点した須賀のことだと確信していた。

しかしそうでは無く、高橋の目に留まったのはキーパーだと言う事で、出羽は国巻の選手層の底知れないポテンシャルに驚愕してしまう。

そしてそれは、出羽が認める程の存在がフィールドプレーヤーにいたことを知った高橋も同じだった。



観客席にて天才同士が国巻談義をする最中、須賀の代りにトップ下で奮闘していた竹下が、大急ぎで会場内のトイレに駆け込もうとしている。

「やばい!オナラをメチャクチャしたい!でも・・・今オナラしたら・・・他のも出る!!!!!」


そんな竹下は個室トイレが満員になっているのを確認し、泣きそうになるのであった。

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