第13話 分母と分子はバランス良くね
滝沢チームとの対決から2日後、選手達はグランド隅で美津田を待っていた。
「若宮ちゃん、一昨日の食事会、よく参加したね。」中林がニヤけながら話しかけた。
「あぁ、時々合コンに大学生いるんで、ああいう空気慣れてますから。」サラっと若宮は答えた。
「え!?大学生と合コン!!」
「よくありますよ。あんなサッカーガッツリって人たちの中は初めてでしたけどね。」
「・・・いいの?大学生が女子高生と合コンして。」
「よくわかんないですけど・・・。でも、楽しいですよ。ちゃんと奢ってくれるし。」
「・・・。」
サッカーと違う世界での若宮の経験値の高さを、中林は思い知らされた。
「おお、ちゃんとみんな来てるな。」美津田はレモリヤを飲みながら、部員達の顔を眺める。
「土曜の試合はご苦労さん。よくやったと思うぞ。アイツもメールで誉めてたよ。」
「滝沢さんですか!?」久保の問いに「もちろん」と美津田は答える。
「今日は、練習始める前に、お前らに決めて欲しいことがある。」
「はい?」キャプテン群を初めとするメンバー全員が身構えた。
「夏のインターハイ予選と冬の国立予選、どこまでいきたい?」
「え?」
「それぞれの大会で、どこまでいきたいか目標決めて欲しいんだ。」
「目標っすか?」
「うん。話し合いで決めて欲しいのよ。で、その目標によって練習とか作って行きたいんだわ。キャプテンたちぃ。」
「はい!」
「まず自分らの目標考えて発表してから、1年生2年生と順番に聞いていってくれや。よろしく。」
そこまでいうと、美津田はマネージャーの若宮を連れて自販機の方へと歩いていった。
「若宮、頼みが二つある。」
「なんです?」若宮は笑顔で美津田の顔を眺める。
「一つ目は、昨年度の退部届けの確認をして欲しい。」
「かくにん?」
「うん。退部者のリストを作って欲しいんだ。」
「何人辞めたか調べたいんですか?」
「いや。」
「・・・?じゃあ、なんでです?」
「3年生が11名、2年生が8名退部したとオレは聞いている。」
「・・・はい。」
「その全員が、ちゃんと辞めているかを調べて欲しいんだ。」
「ちゃんと?」
「そう。ちゃんと退部した奴はもういいんだよ。ただな、肝心なのは『実は来てないだけ』ってのが何人いるかなんだ。それを調べて欲しい。」
「幽霊部員ってことですか?」
「そう。」
「なんでですか?」
「今にわかるさ。あともう一つはな。」
「はい。」
「お前にスカウトをして欲しい」
「スカウト!?」
「うん。」
「何をスカウトするんですか?私、サッカー全くわかんないんですよ!」
「そんなの承知さ。」
「じゃあ、何しろっていうんです!?」
「お前には1年生を中心に、サッカー部に入りそうな奴を探して欲しい。」
「入りそう?」
「そう。運動神経の良さそうな奴、サッカーが好きそうな奴、スポーツやったらやる気のありそうな奴、昔サッカーしたことある奴。なんでもいい。一杯連れてきて欲しいんだよ。」
「私にサッカー部の勧誘やれっていうんですか?」
「そういうこと。4月は勧誘に一番の時期だ。この時期を逃す手は無い。高井や鈴木みたいに、サッカー部に初めから入る気だった奴はいるのはいるが、今のところ2人だけ。これでは今後がキツい。中学までサッカーやってたけど、高校までは・・・って考えてる奴もいるだろうし、体育の授業で成績が良いのに運動部に入ってない奴もまだいると思う。今の間にそういう奴らを取り込んでおきたいんだ。」
「私が・・・出来ますかね?」
「勧誘するのに、お前のビジュアルは最強の武器だよ。」
不安そうな若宮を横目で見ながら、美津田は冷静にそう言った。




