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ゾーンの向こう側  作者: ライターXT
集合編
12/207

第11話   青春は、やったりやられたり

いい加減、試合終わらせます。

国巻のイレブンは、コンパクトに全体を固め、ボールを奪う機会を窺い続ける。


激しさのあるゾーンプレスは、滝沢たちを困惑させたが、時間が経つほどに、疲労感は増していった。


一瞬の隙を狙って、川村がロングボールを出す。再び滝沢が抜け出して、シュートを放った。


何とか木村が足を出してカットするが、それは不運にも坂田のつめた逆側に跳ね返り、ゴールに吸い込まれた。


あっけなく2-3と勝ち越されてしまう。


しかし、滝沢の後輩達は、負けた気でいない。

大下を始め、多くの選手が声を掛け合い、木村や坂田をフォローした。


「俺らがまた点取るからさ!」須賀はそう言い切った。


「交代!」美津田の声が響き渡る。


「中林に代わって、高井!!」


綾篠が正規ポジションの左SBに入り、右SBに鈴木で右WGに高井が入った。



中林は体力が限界だった。

汗は尋常ではない量である。


「あとはスタミナだけだな」中林に美津田はそれだけ言うと、ピッチを見つめた。



中林は13歳でタバコを始めた。理由はよくある友人からの勧め。タバコの味は、不良や大人に近づいていく高揚感の代わりに、スタミナを削っていった。

「まだやりてぇなぁ。」そう声にすら出せない疲労感に、中林はさらに悔しさを噛み締めた。



高井のチェイシングは荒削りだが、いいアクセントになった。

中学時代、控えとして実は一度も試合に出ていない彼にとって、ピッチに立てることがモチベーションの全てだった。



【走り回って潰すタイプ】という印象を滝沢達に与えた頃、高井を避けてボランチに預けようとしたボールを、竹下がカットした。


竹下のスルーパスはワントップの片部に入らず、相手川村がカットするも、こぼれ球を久保が拾う。持ち味の一瞬のスピードが光った。


しかし、相手ボランチとセンターバックが前後から挟もうとしてくる。その直前に左の大下に久保はパスを出す。


大下はクロスを出すと見せかけ、ボランチの松田にパスを出す。松田は精度の高いパスを相手ペナルティエリアに送った。


久保は相手CBと競り合いながら、ゴールをすると見せかけて後ろの片部にボールを送る。ほぼゴール正面で、片部はノーマークだった。しっかりゴールを決める。


3-3


執念と頭脳が生んだ同点ゴールに、メンバー全員が沸いた。



疲労の色が濃く出ながらも、ゾーンプレスを慣行する国巻イレブン。


残り時間は5分程度となっていた。


滝沢のロングシュートをしっかりと坂田が止めると、ゴールキックの蹴り方が少し違うことに、1年生2人が気付く。


助走距離がいつもより短い。


「意外とこの方が飛ぶ!」坂田のゴールキックは伸びたが、高井には届かず、相手MFに奪われる。


すぐに滝沢にパスを出したが、それを須賀は必死にカットした。


そばにいた鈴木にパスを出すと、鈴木は宿題に早速取り組んだ。


左足で振りぬいたロングボールは、相手DFの裏に飛んでいった。


滝沢チームは苦し紛れのキックと思ったが、それは一瞬で戦術の一つと気付く。


高井の速さは、この瞬間にトップスピードになった。


「右足の力を抜ければ!」


そう意識したトラップは多少膨らんでしまったが、相手DFにもGKにも取られない場所に転がった。


高井が全速力で相手ゴールマウスに突進する。


速めにキーパーが飛び出し、それに動揺した高井がシュートするも、ギリギリ弾かれてしまう。

悔しがりながらボールの行方を高井が追うと、彼は驚愕する。拾おうとしたのは相手DFでなく、味方ボランチの竹下だった。

高井と坂田の宿題をキャプテンの中で一番応援していた竹下は、坂田がゴールキックした瞬間から、久保や片部より早く上がっていたのだ。


竹下はロングシュートを放つ。


キーパーも戻りながら触ろうとするが、触れない。

ゴールに吸い込まれようとしたボールは



・・・なんとポストに当たって跳ね返ってしまう。



しかし、ボールの転がった先には高井がいた。


全力で放ったシュートは、ゴールネットを揺らした。



高井は大喜びだったが、キャプテンたちを含め、国巻イレブン達は落胆する。







「高井。お前はオフサイドなんだよ。」竹下が悔しそうに言うと、高井はその場でしゃがみ込んだ。


「・・・俺の・・・バカ野郎。」

高井はピッチの上で、うなだれた。


その後は急転無く、必死のゾーンプレスに滝沢チームが四苦八苦したまま時間が過ぎ去る。



・・・試合終了。



3-3  同点





下を向く者もいれば、上を向く者もいた。


「100点に近いな。」

「は?」美津田のつぶやきに、キャプテンたちが噛み付いた。


「勝てなくて、何が100点すか!」久保が大声でいうと、美津田は淡々と言う。


「内容がだよ。」

「・・・。」


「いいサッカーするじゃん。お前ら。」

黙って美津田を全員が見つめる。



「いいんだよ、今日がゴールじゃねぇ。今日はスタートだ。いいスタートだぞ。胸張れ。」


それだけ言うと、美津田はもう帰る支度を始めた。




「メシ、みんなで食うか?」滝沢が国巻イレブンに背後からそういうと、久保は右手で抑え気味に拳を握り締めた。

無理に終わらせた感・・・否めず。

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