ゆるく依頼遂行中
梅雨は憂鬱ですね……
朝日と潮風亭に戻り、マリーたちに報告をする。
「なるほどのう……それは怪しい」
「俺もたぶんそれが本命だと思う」
「私たちのほうは、めぼしい情報はなかったのでマコトさんの情報に頼るしかないのが現状ですけどね……」
3人で顔をつき合わせて唸る。
「俺としては、これからその船に潜入して情報を収集してくるつもりだ」
「1人でか?」
マリーが尋ねてくる。
「ああ。そっちのほうがやりやすい。それにイゼリアはマリーについていたほうがいいだろう?」
「そうですね」
イゼリアが頷く。
「ならばよい。気をつけるんじゃぞ?」
「ああ。それじゃあ行ってくる」
宿を出てさっきと同じ岩場に隠れる。
「気配は……減ってるな」
船の中の気配は4人から3人になっていた。
「これなら行けるかな。どう思うアスール?」
「だいじょうぶだとおもうよ」
「じゃあサクっと潜入開始ということで……『エアロイクイップメント』」
風を纏い、海上に出る。
「甲板には1人しかいないな」
甲板の人間がこちらを見ていないのを確認して甲板の上のタルの影に降り立つ。
まあ明かりもないし、こんなに暗くちゃ俺のほう見ててもわからないか。
周囲を見渡し特にめぼしいものもなさそうなので、船室の入り口の扉の前へ忍びよる。
「気配からして一階の船室にはいないかな」
さっき隠れていたタルを古代魔法で転がして甲板の1人の注意を逸らす。
「今だ」
完全に気をとられているうちに中に侵入。
「さて」
とりあえず音を立てないように船内を見て回る。
調べていた部屋の一角で海図を発見した。
「航路は……ポートフィリアからシルフィアの岬までか」
海路でシルフィアなら検問もないしありえるな。
「ん?」
下から声が聞こえる。
残りの2人か。
階段の近くまで行き、聞き耳を立てる。
「ったく。こんな時間まで荷の見張りとはな」
「そうぼやくな。明後日の朝には出発だろ?」
若い男たちの声のようだ。
「ああ、そしてノゲイラ様の下でシルフィアを変革する」
「あのガキを殺してな」
くっくっくっくと押し殺した声で笑う2人。
それを阻止しようとしてる人間がここで聞いてますよ~。
「とりあえず裏はとれたから戻るか」
そそくさとその場を立ち去り、甲板に続く扉の前へ。
外の男は扉からだいぶ離れたところにいる。
音を立てないように扉を出て、すぐに海に飛び込む。
「『エアロイクイップメント』」
海面ぎりぎりで低空飛行しながら陸地に戻る。
「さって……確認も済んだし、報告に戻ろうか」
「うん」
急いで宿に戻った。
「……ということなんだが」
「うん。それは確定じゃな」
「そのようですね」
宿の部屋で報告すると2人ともうんうん頷いた。
「そやつらは、確かにノゲイラの下で、と言ったんじゃな?」
「ああ」
「やつが黒幕か……」
やれやれといった様子でマリーが首を振る。
「知り合いなのか?」
「知り合いもなにも、我が国の財務大臣じゃよ」
「ああ……そうか」
俺は複雑な表情になる。
「気にせんでよいぞ。問題は次の財務大臣を誰にするかじゃ……頭が痛いのう」
マリーはあんまり気にしてないようだ。
「それで、これからどうする?」
マリーに今後の動きを相談する。
「そうじゃな……明後日出航すると言っておったんじゃろ?」
「ああ」
「ならば陸地で襲撃するより海上で制圧したほうが逃げ場がないじゃろう」
「なら明後日まで待つのか?」
「そうじゃな。それまでは1度ドレッドノートに戻って空中から監視するのがいいじゃろ」
「じゃあもう行くか?」
「焦るでない。まだ朝ごはんを食べておらん」
さいですか……
「というわけで、それまで一眠りじゃな。イゼリア、部屋に戻るぞ」
「はい」
「じゃあまた明日の」
そう言って2人は部屋に戻っていった。
「いいのかな?あれで……」
「あるじさまがしんぱいしても、しかたないんじゃない?」
「まあ当事者があれだしな……俺たちも寝るかアスール」
「うん」
特に深く考えずそのまま眠りについた。
翌朝、朝日と潮風亭でしっかり朝食をいただいてから町を出た。
「着陸しろドレッドノート」
来たときと同じ場所にドレッドノートを着陸させる。
「ハッチオープン」
ハッチを開いて中に入る。
全員中に入ったのを確認してハッチを閉じる。
「高度500メートルまで上昇」
俺たちを乗せてドレッドノートが上昇した。
「う~む。やはりドレッドノートの中は快適じゃのう!」
ブリーフィングルームのソファにどっかり座りこむマリー。
「そうですね」
イゼリアもポートフィリアの中のように気を張っていなくていいせいか、気楽そうだ。
「マコト。アイス!」
マリーがおねだりしてくる。
「場所わかってるだろ?自分でとってこいよ」
「めんどくさいのう……」
マリーがため息をつく。
「俺はおまえの従者じゃないからな?」
「わかっておるよ。しかたない、自分でとってくるとするかの」
マリーがダルそうに調理場まで歩いていく。
それを無言で見つめた。
「……すいません」
イゼリアが申し訳なさそうに謝った。
「別にイゼリアのせいじゃないだろ?」
「それはそうですが……」
「イゼリアもずっと気を張ってて疲れたろ?部屋に行って休んでろよ」
「よろしいんですか?」
「ああ。見張りは俺だけで十分だしな」
「それじゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」
イゼリアはそのまま自室に戻っていった。
「さてと」
ブリッジまで行き、操縦席に座る。
「進路南東に速度50で移動開始」
船のある地点までドレッドノートを移動させる。
「あとは監視するだけだな」
「そうだね」
「んでもって、動いたら上空を尾行」
「うん」
「マリーのゴーサインが出たら襲撃っと」
「それまでやることないね」
「そうだな……」
ぼんやりと外を眺める。
ミシャたちは元気にしてるかなぁ……
「ミシャちゃ~ん!マコトさんから手紙が届いたよ~!!」
1階から女将さんがあたしを呼んでいた。
「ちょっと待って!今行くから!」
急いで階段を降りる。
うしろからエリスさんも来ているみたいだ。
「女将さん!手紙は!?」
女将さんに駆け寄る。
「ああ、これだよ」
受け取った手紙を慌てて読む。
「……」
「なんて書いてあるんですか?」
エリスさんが横から声をかけてくる。
「今、国王様から依頼を受けてるから、どれぐらいで戻れるかわからないって……」
「本当ですか?」
「うん……ほら、読んでみて」
エリスさんに手紙を渡す。
「……本当みたいですね」
手紙を読み終わったエリスさんの顔に影が差す。
「なんでマコトはいつも厄介ごとに巻き込まれるんだろうね」
「私にはわかりません。そういう星の下に生まれてきてるんでしょうか」
…………
「なんだいあんたち、そんな寂しそうな顔して?」
「女将さん……」
「なんて書いてあったんだい?」
「マコトがしばらく帰ってこないかもって」
女将さんはなにか考え始めた。
「マコトさんはどこにいるんだい?」
「……詳しいことは話せないって書いてあるけど、たぶん王都かな?」
マコトは任務の詳細は話せないらいしけど、たぶん国王様の命令で動いてるなら王都にいるはず……
「なら迎えにいけばいいじゃないかい」
女将さんはさも当たり前のように言う。
「でも……マコトは留守番してろって……」
「マコトさんはあんたたちの顔を早く見たほうが喜ぶよ」
「そう……かな?」
不安そうな顔をすると、女将さんあたしの頭を優しく撫でてくれた。
「そうだよ。だから行っといで。この宿は私がいれば大丈夫だから、ね?」
「……うん!」
いい子だねって言って女将さんがもう一度撫でてくれた。
「エリスさんも行くよね!?」
「当然です!」
エリスさんも嬉しそうだ。
「それに、燻っているのは私たちらしくないですし」
あたしはその言葉に強く頷いた。
「うん!もしマコトに叱られたら、一緒に怒られようね?」
「はい!」
「ほら!そうと決まればさっさと行きな!!」
女将さんがあたしたちの背中を叩く。
「うん。それじゃあエリスさん、急いで準備しよう!」
「はい!」
エリスさんと階段を駆け上がり、準備を整える。
「王都には2日もあれば着くでしょ?」
「はい」
準備を整えて階段を降りる。
「女将さん!行ってきます!!」
「留守番よろしくおねがいします!!」
「はいはい。2人とも気をつけてね」
女将さんに手を振ってワノクニ亭を出る。
西門に向かう途中で保存食を買っていく。
「これで大丈夫だね」
「はい」
「「それじゃ王都シルファリオへ向かって……」」
「ごー!だね!!」
ん?なんでアスールは1人で叫んでるんだ?
アスールはザインからなにかしらの電波を受信したんですよ、きっと。
だからあまり深く考えないでください……




