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ポートフィリア

前回はすいませんでした……


今回はちゃんとお話を進めます。


シルファリオを出て3日目の夜明け前。


「あれがポートフィリアじゃな」


ステルスモードで低空に侵入したドレッドノートのブリッジから、まだ暗闇に包まれた港町が見える。


「こんな時間なのに漁師がけっこう漁に出ようとしてるな」


漁の準備をする漁師の姿が沢山確認できる。


「今日は海に感謝をする祭が開かれるそうなので、その祭で振舞う魚介類を取りに行くんですよ。みんな張り切ってるみたいですね」


イゼリアが解説をしてくれる。


「こんなに平和そうなのに危険な集団が潜伏してるのか……」


とてもそうは思えない。


「マコト。ドレッドノートを町の門の近くの森に降ろしてくれんか?」


「了解」


ドレッドノートを森の少し開けたところに着陸させる。


ハッチを開いて3人で降りる。


「ステルスモードのまま常に俺の上空500メートルで待機」


命令を下すとドレッドノートは上昇していったようだ。


「それではポートフィリアに入ろうかの。マコト、これがお主の身分証じゃ」


マリーから身分証を受け取る。


「……俺はギルドカードがあるんだが?」


「馬鹿者!」


「いてっ!」


マリーがジャンプして俺の頭を叩いた。


「お主は自分が大陸で1人しかいないAランク冒険者であることを忘れたのか!?そんな金ピカのギルドカードかざして町に入ったら大騒ぎになるじゃろうが!!」


「なるほど……でも頭叩くことはないんじゃないか?」


「馬鹿は体に教えこまえなければわからんだろう?」


マリーがニヤリと笑う。


ときどき可愛げがないなコイツは。


「はいはい、そこまでにしてください。早くポートフィリアに行きますよ」


イゼリアに場を治められポートフィリアの門まで歩いた。


「町に入りたいんですが」


イゼリアが町の門番に話しかけた。


「旅行者か?」


「はい。この町のお祭を見にきたんです」


イゼリアが笑顔で応答する。


あの笑顔には警戒心のかけらも生まれないな。


「そうか。この町の祭は盛大だからな、楽しんでいくといい。おっと、身分証の提示を頼む」


3人で身分証を提示する。


「わざわざシルフィアから来たのか……遠路はるばる、ようこそポートフィリアへ。通っていいぞ」


「ありがとうございます」


3人でポートフィリアの門を潜る。


しばらく歩いてマリーが話しかけてきた。


「まずは潜入成功じゃな」


「これからどうするんだ?」


「とりあえず宿をとろう。祭は正午から開始じゃから、それまで休んで行動開始じゃ」


「りょーかい」


3人で適当に町を散策して宿を見つけた。


「朝日と潮風亭ね。ここでいいか?」


「かまわん」


「大丈夫です」


「じゃあ入るぜ」


扉を開けて朝日と潮風亭に入った。


「いらっしゃい」


宿屋のちょび髭を生やしたおっさん亭主が挨拶してきた。


「部屋を2つとりたい」


「どのくらい泊まるかね?」


「まだ決めてない」


「じゃあその日払いでいいよ」


「1泊いくらだ?」


「朝食つきで1人3000フレだよ」


「じゃあとりえず今日の分だ」


銀貨を1枚渡す。


「はい、お釣り。部屋は2人部屋と1人部屋1つづつでいいのかい?」


銅貨を10枚受け取る。


「ああ」


「じゃあこれが部屋の鍵だ。201が1人部屋。204が2人部屋」


「ありがと」


「ごゆっくり」


鍵を受け取って2階にあがる。


「じゃあまた正午に下で集合しよう」


「うむ」


マリーたちと別れて部屋に入る。


「可もなく不可もなくって感じだな」


大きさは6畳ぐらいで、ベッドとチェストが1つづつと1人がけのイスと丸テーブルが1つと窓が1つ。


窓を開けて空気を入れ替える。


「とりあえずボーっとしてるかアスール」


「そうだね」


ベッドに寝ころがりぼーっとする。


「ふぁ~……ん?」


15分ぐらい経ってノックが鳴った。


「はいはい。どちらさん?」


ドアの前に行って相手を確認する。


「イゼリアです。少しよろしいですか?」


「どうぞ」


ドアを開けてイゼリアを招き入れる。


「どうした?」


「いえ、マリーが寝てしまったので、話相手が欲しいなと思いまして」


「なるほど。とりあえずそこのイスにでも座ってくれ」


「はい。お邪魔します」


イゼリアは部屋の中央のイスに腰を下ろした。


俺もそれを確認してベッドに腰を下ろす。


「マリーは寝ちまったか。けっこう疲れてるのか?」


質問をするとイゼリアは苦笑しながら答えた。


「疲れているには疲れているんですが……どちらかというとはしゃぎ疲れたって感じですかね」


「はぁ」


「一国の王とは言え、まだ子供ですから」


「なるほどな」


俺も苦笑する。


「本来はもっと大人しい子なんですけど、マコトさんと一緒にいられるのが嬉しいみたいですね」


「そうなのか?」


「ええ。城にいるあいだもガンツ様から手紙で届くあなたの活躍に一喜一憂していましたし、今回のような件がなくてもいずれは王都に呼ぶつもりだったでしょう」


それは……なんだか恥ずかしくなるな。


「今あの子はあなたに自分のことをマリーと呼ばせているでしょう?」


「ああ」


「この呼び方は先代の王や王妃様、あと私しか使ってていなかったんですよ。それをマコトさんに呼ばせているのは信頼しているからです」


「そうだったのか……」


「あの子の周りは今敵だらけです。信頼できる人間もほとんどおらず、藁をも掴む思いであなたを頼ったんだと思います」


悲しいことだけど、それが現実か。


「だから、どうかあの子の力になってください。お願いします」


イゼリアが席を立って俺に頭をさげる。


「やめてくれイゼリア。君に頼まれなくても俺はやるよ。冒険者として依頼は完璧にこなすつもりだ。それに……」


「……それに?」


「子供に悲しい顔はさせたくない」


「……お優しいんですね」


「甘いだけさ」


イゼリアと2人でクスクスと笑いあう。


「とりあえずこの町に潜伏してるやつらはキッチリ倒す。な?」


「はい!」


イゼリアが元気に頷く。


そのあと正午になるまでイゼリアと談笑した。







「それでは町に出るとするかの!」


「おうよ」


「はい」


マリーと宿のロビーで集合して町に出る。


「おおう!これは盛大じゃのう!!」


扉を開けると通りには仮装した人間や出店が沢山見える。


「確かに凄いな」


テンションを上げまくっている町の人を見て俺もつぶやく。


そのまま通りを歩き、町の中央の広場に出る。


「なんでそんなに持ってる?」


マリーの手には出店で買った食べものが山のようにある。


「そべばおぶし、まぷびにびたなばばのしばばけべばぼ!」


「とりあえず口の中にあるものを食ってから話せ」


「むぐむぐ……んぐ。それはお主、祭に来たなら楽しまなければの!」


「おまえ本来の趣旨忘れてね?」


呆れ顔でマリーを見る。


「なにを言う!その場に溶け込むことが潜入の第一歩じゃろうが?」


自身満々に言うマリー。


でも、口にソースがついたまんまで言われても説得力のかけらもない。


「ほら、ソースついてますよ?」


イゼリアがマリーの口元についたソースを拭う。


「む。すまんの」


「はぁ……それでこれからどうするんだ?」


「まずはあの櫓の周りで踊り狂っている集団に混ざろうと思うんじゃが、どうじゃ?」


「どうじゃ?じゃねぇ!」


マリーにツッコむ。


「ダメ……かのう?」


マリーが俺をキラキラした上目遣いで見つめる。


「そんなキラキラした目をしてもダメだ!!」


「っち!つまらんやつじゃな……」


「この状況で俺に面白みを求めるな!」


「冗談じゃよ。まずは情報収集を行う。わらわとイゼリアのチームとお主に分かれて町の人間に聞き込みじゃ」


マリーが真面目な顔になったので、俺も話を進める。


「聞き込みの内容は?」


「なにか最近不審なことがあったかどうか。たとえば妙な集団が町に来たとか、用途不明の荷物が運ばれてきていないか。とかじゃの」


「了解。聞き込みの範囲は?」


「わらわたちは女を中心にあたる。お主は男じゃ」


「あいよ」


「集合は午後9時に宿で。そこで情報交換を行おう」


「わかった。それじゃあ俺は行くぜ」


「うむ。有益な情報を期待しておるぞ」


「お気をつけて」


「ああ」


マリーとイゼリアに別れを告げて聞き込みを開始する。


そこらへんにいる男に聞いて回ったが、ヒットはゼロ。


すでに夕暮れどきを迎えた。


(どうするか……)


(じょうほうがあつまりそうなところってないの?)


(そうだな……酒場とか?)


(じゃあいってみようよ)


(うん)


通りを少し歩いて、町の酒場まで。


酒臭い店内に入り、とりあえずカウンターに座る。


「注文は?」


「ビールをくれ」


「あいよ」


酒場の店主に酒を注文する。


「お待たせ」


ビールが運ばれてきた。


「なぁ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど?」


「なんだ?」


酒を運んできた店主を呼び止めて質問する。


「最近この町で変わったことはないか?」


「変わったこと?」


「たとえば変なやつらを見かけるとか」


「そうだな……俺はないな」


「そうか……」


また空振りかな……


「ただ、ヨーゼフが変な船を見たとか言ってたな」


「そのヨーゼフってのは?」


「漁師だ。ほら、あそこのテーブルに座ってるやつだよ」


店主が指差したほうを見ると、3人がけのテーブルに真っ黒に日焼けをした厳しい顔の男が座っていた。


「ありがと。俺が聞いたことは忘れてくれ」


カウンターに銀貨を1枚置き、席を立った。


「あいよ」


店主は銀貨を受け取ってその場を離れた。


ビールを持ってヨーゼフのいるテーブルに俺も座った。


「あんたがヨーゼフか?」


「なんだおまえ?」


ヨーゼフがジロリと俺を見る。


「ちょっとあんたに聞きたいことがあってな」


「……スコッチ1杯だ」


「え?」


「スコッチ1杯で話してやるよ」


ヨーゼフがニヤリと笑った。


酒好きのようだ。


店員を呼び止めてスコッチを1杯ヨーゼフに頼んだ。


「で、聞きたいことってのはなんだい?」


「最近あんたがおかしな船をを見たと聞いたんだが」


「ああ、そのことか。ここの港から少し北に行ったところにある桟橋で、わりとデカイ船が泊まってるのを見た」


「それだけか?」


「漁に出たときに少し見ただけだが、あきらかにこの町の人間じゃないやつらがなにか荷物を運び込んでいたぜ」


「なるほど……」


これはビンゴかな?


「ありがとよ、ちょっと待ってろ」


そのままカウンターに行ってスコッチを1ビン買ってくる。


「これはお礼だ受け取ってくれ。そのかわり……」


「今のことは喋るなって言いたいんだろ?」


「話が早くて助かる」


「なにするか知らないが、気をつけろよ」


「ああ。それじゃあな」


ヨーゼフに別れを告げ、酒場を出る。


(とりあえずそれっぽい情報が手に入ったな)


(やどにもどるの?)


(いや、まだ時間があるし、その船を確認してこよう)


(うん)


そのまま町から少し離れたところにある桟橋へ向かった。









「あれだな」


気配を消し、桟橋近くの岩陰から様子を覗う。


「船と……小屋か」


30メートルほどの帆船と桟橋近くに割り大きめの小屋が1つ。


「気配を探ってみるか……」


目を閉じて気配を探る。


「小屋に30人……船に4人……武装してるな」


どうやら本当に当たりのようだ。


「よし、一旦宿に戻ろうアスール」


「うん」


その場を離れ、宿に向かう。


「あのひとたちをやっつけるの?」


「まだ確定じゃないから調査しないとな」


「なるほど」


「とりあえず戻ってマリーたちに報告だな」


「ごー!だね!!」











今夜あたり忍びこむかな。

次回、スニーキングミッションです。

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