暗躍するものたち
日間ランキングで1位になりました。あな恐ろしや……
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これからも頑張ります!!
「これがドレッドノートか……間近で見ると凄い迫力じゃのう!」
国王はドレッドノートの船体に触れながらキラキラした目をしている。
「中にご案内します」
ハッチを開き、国王の手をとって船内に招き入れる。
「うむ。苦しゅうない」
尊大な態度で俺の手をとる国王。
なんか子供が背伸びしているようで可愛らしい。
「おぉ……!これはまた凄いのう!!」
ドレッドノートの内装に驚き、壁をぺたぺた触る。
「通路や操舵室を除いて改装していますので、そちらの部屋にもご案内いたします」
「うむ!」
そのまま国王を引き連れ、船室、ブリーフィングルーム、食堂などを案内した。
「ほう……本当に改装してあるのう。なかなか趣味がいい」
「ありがとうございます」
「……これならば合格じゃな」
「?」
なにかボソっとつぶやいた。
「一番下の階にはなにがあるんじゃ?」
「倉庫と……あとは風呂です」
「風呂……とな?」
「はい。普段はお入りにならないんですか?」
「うむ。聞いたことはあるが、実際に使ったことはないのう」
「ではご案内しますよ」
「よしなに頼む」
国王を風呂に案内する。
「これは……すごいのう」
「一番力をいれましたので」
国王が風呂場を見渡す。
「なるほど、これは楽しみがまた1つできた」
さっきから、ときおりぶつぶつとつぶやいているが、なんだろう?
「では、待ちに待った操舵室を見せてもらえるかの!?」
「かしこまりました」
ブリッジにあがる。
「おぉ~!なんだこれは!!景色が見えるではないか!!!」
国王大はしゃぎ。本当にただの子供にしか見えない。
「基本的にこちらで操舵を行います」
「飛んだらどんな景色なのかのう!?」
聞いてない。
「マコト殿!飛ばしてくれ!!」
両手をぎゅっと握り締め、俺を見てくる。
「……よろしいのですか?」
「うむ。国王権限で許す!」
主権乱用だろそれ……
「では、そちらの座席にお座りください。機体が安定するまでは立たないようにお願いします」
「心得た!」
座席についたのを確認してドレッドノートを発進させる。
「微速浮上」
ドレッドノートが浮上を開始する。
「おお~!飛んでおる!!」
今にも立ち上がりそうだ。
まぁ喜んでいるようなので、サービスでもするか。
「方向このまま。速度400。高度500」
一気に加速して上空に飛び出す。
「おおおぉぉ!!!」
もう今にも踊り始めそうな勢いだな。
目的高度に達したので、速度を落として自動操縦にする。
「もう立っていただいても結構ですよ」
「そうか!」
座席を飛び出して窓から外の景色を眺めている。
「この船は飛ぶことしかできんのか?」
「本来は戦闘を行うことができるはずなんですが、今は武装は使えないようです」
「そうか」
「ただし、飛ぶ以外にも魔術障壁の展開やステルスモードの使用はできます」
「語感だけではなにができるかわからんのう」
「魔術障壁というのは魔法を防ぐ盾のようなもので、おそらく下級魔法程度ならいくらでも防げます」
「ほう」
「ステルスモードというのは、この船を外から見えなくする機能のことで、船が完全に透明になると考えていただければ結構です」
「ほうほう」
「もともと強襲用に造られたものなので、そういった機能があるようです。それ以外にも私の意志次第で船を遠隔操作することも可能です」
「なるほどのう。いいことを聞いた……うむ。気に入ったぞドレッドノート」
1つ頷くと俺のほうへ振り向く。
「話がある。一度シルフィア城に戻ってくれ」
さきほどの子供のような顔でなく、シルフィアの王としての顔になっていた。
「……わかりました」
俺はドレッドノートを広場に降ろした。
シルフィア城に戻り、今は国王と俺とイゼリアの3人で円卓の会議室にいた。
「率直に言おう。わらわはお主に依頼を頼みたい」
「依頼……ですか?」
「そうじゃ。ガンツの話によれば、お主は冒険者として依頼を請け負っておるのじゃろう?」
「そうです」
「なれば、わらわも一介の依頼人としてお主に依頼を頼もうと思う。だめであろうか?」
「内容をお聞きしないことにはなんとも言えません」
「……先日、隣国サラエドから使者が来ての、ある報告を受けたのじゃ」
やっぱりガンツが言っていたことに関係がありそうだ。
「どのような内容ですか?」
「使者から受けた報告の内容は、わらわを暗殺して国家の転覆を狙う集団が現在サラエドに潜伏しているとのことだった」
デカイ話だな。
「わらわはまだ死にたくもないし、そのような者どもにシルフィアを渡すつもりもないのでな、ここは1つサラエドに出向いてその集団を殲滅しようと考えておる」
「わざわざサラエドに出向かなくても、行動を起こすのがわかっているなら迎え撃ったらいかがですか?」
国王は首を振った。
「だめなのじゃ。行動を起こす前に潰す必要がある」
「なぜですか?」
「謀反を起こされたとあっては、シルフィア王家の名に傷をつけることになる。それに国民の不信感を煽ることにもなりかねん」
「だから事を起こされる前に潰すとおっしゃるのですか?」
「そうじゃ。それに、わらわが直接出向いて殲滅する必要がある」
「なぜですか?」
「力を示すためじゃ。今回報告にあった集団は氷山の一角にすぎん。この集団をわらわの手によって潰すことで、牽制になると考えておるのじゃ」
「なるほど」
「わらわはこのような外見と年齢じゃからのう。見くびられているのはわかっておる。だから、絶対的な力を見せつけなければならん」
国王が拳を強く握り締める。
「お主には謀反を企てる者の殲滅に協力して欲しいのだ」
俺の瞳を真剣に見つめてくる。
「ですが、ご自身の力を示されるのであれば、近衛騎士団を動かしたほうがよろしいのでは?」
「今回のことでサラエドからいくつか条件があっての、サラエド帝国内での活動には目をつぶるが、騎士団を大量に入国させることは敵対行為としてみなすとのことじゃ。つまり少数で動く必要がある。敵の規模もわからん以上、わらわとしては騎士団に匹敵する精鋭を連れていきたいと考えておるわけじゃ」
「それで私と言うわけですか」
「そうじゃ。それにお主にはドレッドノートがある。隠密性と機動性を併せ持つ完璧な移動拠点となるはずじゃ」
「確かにドレッドノートであれば敵に奇襲をかけるにはもってこいでしょうね」
「先ほど内装や設備を見せてもらったときに確信した。今回の件にはお主とドレッドノートが必要じゃ。頼む!どうかわらわに協力してくれぬか!?」
一国の王がプライドを殴り捨て、俺に頭を下げている。
ならば俺は自分の矜持を示そう。
「報酬はいくらですか?」
「お主の好きにしてくれて構わん」
「いえ、私はあなた自身の誠意が知りたいのです」
「……50億出そう」
隣のイゼリアが驚愕しているのを見ると、かなり思い切った額のようだ。
「……わかりました。この依頼お請けします」
「お主の英断に感謝する」
「いえ、有益な依頼は迷わず請けるのが冒険者です」
「なるほどの。それがお主の信条か」
「はい」
「そうと決まれば善は急げじゃな。ドレッドノートに物質を詰め込み、出発するぞ。詳細の説明は移動中にする」
「わかりました」
「……あとはその口調もどうにかせねばなならんのう」
「?」
「さぁ早く行くぞ」
「はい」
国王は勢いよく会議室を出ていった。。
俺もそのあとを追う。
(大変なことになったなアスール)
(なんとなくよそうはしてたでしょ?)
(いや、俺の予想より大事みたいだ。でも……)
(やるっきゃない。だよね?)
(そういうこと。行くぞアスール!)
(ごー!だね!!)
とりあえずミシャたちに連絡しないとな……
次回サラエドへ飛びます。