出航
ドレッドノートを使った初依頼です。
ドレッドノートに物資を積み込み、出発の準備を整えた。
今はシルフィア城内の執務室で国王とイゼリアともろもろの確認中。
「同行者は……陛下とイゼリアの2人ですか?」
「そうじゃ。イゼリアの実力はお主も知っておるだろう?」
たしかにイゼリアはミシャとエリスを除けば、俺が出会った中でも最強クラス。
旅の同行には申し分ないが……
「陛下と近衛騎士団の副団長が2人も国を空けて大丈夫なんでしょうか?」
「その点は大丈夫じゃ。イゼリアは特殊任務に出るということで一時的に暇を与えていることになっておるし、わらわに関しては出かけているあいだも城の中で公務をしているという設定になっておる。今回のことを知っておるのはお主とイゼリアとわらわの専属従者だけじゃ」
「なぜそのようなことを?」
「言ったであろう?国の転覆やわらわの暗殺を企んでいるの者はほかにもおると。公務に関わる者たち……それこそ大臣などの中にそのような考えを持っている者がおらんとは限らんのじゃ。だから今回の道中はお忍びじゃ」
「そんな……」
俺は思わす心配そうな顔になってしまった。
「そのような顔をするでない。わらわの周りが敵だらけなのはわらわが一番わかっておる」
国王は少し寂しそうに笑った。
こんな子供にそんな顔させちゃだめだよな……
「……かならず今回の依頼、成功させてみます!」
「うむ。やる気になってくれたようじゃのう。期待しておるず、マコト殿!」
寂しそうな顔から一転、国王はニカっと笑った。
……もしかして俺乗せられた?
恐るべし少女国王。
「ということで、よろしくお願いしますね、マコトさん!」
イゼリアが笑顔で俺の腕をとり握手する。
「ああ、よろしくイゼリア」
俺も笑顔で握手する。
「ほうほう……」
それを見て国王が意味深に頷いた。
「それでは私たちは準備を整えてくるので、マコトさんは先にドレッドノートに行ってください」
「わかった」
俺はドレッドノートの停泊している広場に行った。
(もう衛兵とか騎士はいないんだな)
(さすがに、おしごとがあるんでしょ)
(そりゃそうか)
広場に着くとすでに広場に騎士たちはいなかった。
まだ広場の封鎖は解かれていないようだが。
ドレッドノートのハッチを開け、2人を待つ。
(今回は大変そうだな)
(でも、こまってるひとは、ほうっておけないでしょ?)
(そうだな)
(あるじさまは、おひとよしだからね)
(辛辣なことを言うな……)
(でもそこが、あるじさまのいいところ)
(ありがと。アスール)
(どういたしまして!)
(ん?あれは……誰だ?)
ドレッドノートに茶色いフードつきのローブを被った2人組が小走りで近寄ってくる。
俺の前まで来た。
「わらわたちじゃ。中に入れてくれ」
フードの中から国王の顔が見える。
「陛下?なぜそんな……」
「いいから!先に入っておるぞ!」
そのままそそくさと2人はドレッドノートの中に入っていった。
俺も続いて中に入る。
「どうしてそのような格好を……」
「早く扉を閉めてくれ!」
「あぁ……はい」
ハッチを閉じる。
「ふぅ……」
2人がローブを脱ぐ。
国王は淡い黄色のシャツに、下は茶色の膝丈パンツに茶色いブーツ。
イゼリアは白いシャツに薄紫ジャケットを羽織り、下は腰に剣を下げ黒いパンツを茶色のブーツにインしている。
町の少女と女冒険者といった様相だ。
「お忍び……ですか?」
「そういうことじゃ。似合うか?」
国王は服をつまんだりしながら確認し、イゼリアはウェーブのかかった髪を頭のうしろで束ねている。
「2人ともお似合いですよ」
「そうかそうか!」
「ありがとうございます!」
2人とも喜んでいる。まぁ国王は普段こういう格好しないんだろうな。
「そうそう、マコト殿。これからわらわはマリー=ブランと名乗るつもりじゃ。お主もマリーと呼んでくれ」
あんまり捻りねえな。
「あと、わらわに対する敬語も禁止じゃ」
「よろしいんですか?」
「よろしいもなにも、これからは町に潜入して調査も行うつもりじゃからな。お主のような歳の男がこんな小娘に敬語なんぞ使っておったら、不自然極まりないじゃろう?」
「わかりました」
国王は不満げに俺を見た。
「今からじゃ」
「はい?」
「今から敬語は禁止じゃ」
「ですが……」
「わざわざ使い分けてボロを出されるのも嫌じゃ。だから、これからこの道中のあいだは一切敬語は使ってはならん」
「わかりまし……」
「ならんと行っておろう!?」
怒られた。
「わ、わかった。これでいいか、マリー?」
「うむ。わらわもお主をマコトと呼ぼう。しかし、敬語を使われんというのも新鮮じゃのう!」
カッカッカと豪快に笑う国お……マリー。
「すいません……」
イゼリアが申し訳なさそうにしている。
「いや、いいさ。本当ならもっと我侭を言うもんだよ。あのぐらいの歳の子は……」
「そう……ですか」
「うちにも手の掛かるのがいてね」
そうだ。ミシャたちに手紙出さないと……
国王からの依頼を受けて少し帰りが遅くなりそうだという旨を手紙に書き、ドレッドノート内で飼っていた伝書鳩に括りつけ、デッキから飛ばした。
「ワノクニ亭までちゃんと届けてくれよ……」
飛び去っていく鳩を見ながらつぶやいた。
「なにをしておるんじゃマコト?早く出発するぞ!」
「あいよ」
マリーとイゼリアとともにブリッジに向かう。
「目的地は?」
「サラエド帝国内のポートフィリアという港町に潜伏しておるとの情報じゃ。その町まで頼む」
「了解」
地図で確認する。
距離は……南東に1万2000キロってところか。この大陸はどれだけでかいんだ?
「どれぐらいかかりそうじゃ?」
「全速力で行けば10時間ってところかな」
「そ、そんなに早く行けるのか?」
「あくまで計算上だけどな」
「恐るべし、ドレッドノート……」
「マリーとしてはどれくらいに着きたい?」
「3日後にポートフィリアで祭があるそうじゃ。それに合わせて町に潜入しようと考えておる」
「じゃあ到着は3日後の夜明けごろでどうだ?」
「いいじゃろう」
「よし、じゃあ飛ばすぞ」
「うむ」
「よろしくお願いします」
2人が頷いたのを確認して、ドレッドノートに命令を出す。
「進路、ポートフィリア。速度、100。高度、5000。ドレッドノート発進!」
ドレッドノートが航行を開始した。
(ミシャたちにすぐに帰るって言ったんだけど、これは時間がかかりそうかもな)
(だね)
(あいつら怒るかな?)
(きっとわかってくれるよ)
(そうだといいけどな)
(みしゃちゃんたちのこともそうだけど、いまは、めのまえのことにしゅうちゅうしなきゃ!)
(りょーかい。とりあえずはポートフィリアに向かって……)
(ごー!だね!!)
気合入れなきゃな。
そのうちザインに居残り組のお話も書きます。




