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事後報告 新しい依頼

なじられたい。

ザイン騎士団との演習の3日後。


俺はミシャとエリスを連れてザイン城に向かった。


この前と同じ応接室に案内されてガンツと対面する。


「依頼ご苦労だったな」


「いえ、頑張ったのはこの2人です」


ガンツの前で恐縮している2人を見る。


「うむ。マコト殿の言葉を信じていなかったわけではないが、この目でそなたらの戦う姿を見て本当に驚いた。まさかこのような可憐な女性達があのような力を持っているとは……そなたたち、名は何というのだ?」


「み、ミシャ=ムトウです!」


ミシャは慌てて答える。


「私はエリス=サリンバンと申します」


エリスは意外と落ち着いてるな。


「ミシャ嬢にエリス嬢か。先日の件で騎士達も心を入れ替えたようだ。そなたらに敬意と感謝を表する」


「いえ!そんな…!!」


「勿体ないお言葉でごさいます」


どっちが弟子だ。というかエリス、俺にもその100分の1でいいから敬意を払え。


「いや本当に見事であった。これは今回の報酬だ」


ガンツはミシャとエリスに金貨が10枚入った袋を手渡す。


1人頭1000万フレか。流石、公爵様は金払いがいい。


「こ、こんなにですか!?」


ミシャは驚いている。流石のエリスも少し動揺しているようだ。


「正当な報酬だ。受け取ってくれ」


「……はい」


「わかりました。ありがたく頂戴します」


2人はなんとか受け取った。


「時にそなたら。これから1月ほどのあいだ、なにか予定はあるか?」


3人で顔を見合わせる。


「いえ、特にはありません」


代表して俺が答えた。


「そうか。ならば少し相談があるんだが……」


「なんでしょうか?」


「実は私はこれから1月ほどダルハイムという町で開かれる武道大会の視察に行かなければならない」


「はい。それで?」


「本来、ザイン騎士団がその道中の警護と私の選出者として団長のアベルが試合に出るはずだったんだが、今回の演習で負った怪我で遠征ができなくなってしまってな……」


ミシャとエリスが申し訳なさそうにしている。


「いや、私が依頼したことだ。気に病む必要はない。むしろ、この事態を想定していなかった私に非がある」


今度はガンツが申し訳なさそうな顔をしている。


このままじゃ話が進まない。


「それで、相談とはなんでしょうか?」


「あぁ、その話の途中だったな」


ガンツがこちらを見据える。


「こんなことを頼める義理ではないのだが、そなたたち3人に道中の警護を頼みたい」


「それだけでしょうか?」


「マコト殿には私の推薦者として武道大会に出場していただきたい」


なるほど、ザイン騎士団の埋め合わせってことね。


「条件は?」


「期間は明後日から約1ヶ月間。依頼内容はザインからダルハイム間の移動中とダルハイム滞在中の護衛。道中かかる旅費や食事代は全てこちらが持つ。報酬は1人につき3000万フレ。マコト殿が大会に出場する場合はマコト殿にさらに5000万フレを支払う。当然大会で優勝すれば、その賞金と優勝商品はすべてマコト殿のものだ」


「破格の条件ですね」


「ダルハイムに着くまでは盗賊や魔物も多々出没する。それに優秀な人間を雇うにはそれ相応の対価を払わなくてはならない。これは私の自論だがな」


「そうですか。ミシャ、エリスこの依頼を請けるか?」


話を聞いていた2人に尋ねた。


「断る理由がない」


エリスが当然だ。とばかりに答えた。


「そうだね。それにこうなったのも半分あたしたちの所為だし、あたしもやるよ」


ミシャも決心したようだ。


「弟子たちがやるって言うなら、師匠が断るわけにもいきませんね。俺もこの依頼やります。当然、試合にも出させていただきますよ」


「おお、そうか!助かった!」


「いえ、有益な依頼であれば請け負うのが冒険者の仕事です。なにより、その武道大会にも少し興味があります」


「そうか。そう言ってもらえれば私も安心だ」


「出発は明後日でよろしいんですね?」


「ああ。ザイン南門に朝の7時に来てくれ。移動にはこちらで馬車を用意する」


「わかりました。それでは俺たちは準備がありますので、これで失礼します」


そう言って部屋を出ようとする。


「あ、マコト殿に個人的に話がある。少し残ってはくれないか?」


「話……ですか?わかりました。ミシャ、エリスを連れて先に戻っててくれ」


「うん。わかった。行こうエリスさん」


「はい」


そのまま2人は部屋を退出した。


「それで、お話とは?」


「うむ。ザイン騎士団のことなんだがな。確かに改心したようなんだが、その……少し困っているというか、困惑しているというか……そのことで相談なんだが」


「と、言いますと?」


「騎士たちは奮起しておって、回復して訓練を積んだら是非再戦したいと申している。そのこと自体はいいんだが……」


あれで懲りてないとは……すごいガッツだな。さすが精鋭。


「なにかあったんですか?」


「あの日以来、団長のアベルを中心に騎士団内でおかしな集団が結成されてな」


「問題のある集団なんですか?」


「それがわからんからマコト殿に相談を持ちかけたのだ。集団がどのような活動をしているのかはわからない。だが、名前だけは割れている」


「名前だけ……ですか?」


「ああ。その名も『エリス様になじられ隊』だ。どうやらそちらのエリス嬢に関係がありそうなんだが……どうしたマコト殿?」


思わずソファからずり落ちた。


「え~と……とりあえず実害はないと思うので放っておいてください。というか深く関わらないのが精神衛生上よろしいです」


「そ、そうなのか?」


「はい。見て見ぬふりが一番です」


「マコト殿がそこまで言うのなら、そうしよう」


「それでは俺も失礼します」


「うむ。明後日からよろしく頼む。これが警護内容の確認表だ」


「はい」


なんか最後の最後でどっと疲れたな……








「ただいま~」


「あ、お帰りマコト!話は済んだの?」


「うん」


チラっと座布団に座ってお茶を飲んでいるエリスを見る。


「ん?なんだ?」


「いや、おまえも大変だなぁと思って」


「なんだか知らんが、わかればいい」


「ああ。これからも頑張ってくれエリス」


「あ、ああ。わかった」


エリスとミシャが不思議そうな顔で俺を見ている。まぁ気にすんな。


「とりあえず今日は飯食って風呂でも入って寝よう。明日は町に出て買出しだ」


「わかった!」


「了解だ」


翌日3人で保存食などを買い込んでワノクニ亭で警護の相談をする。


「ザインからダルハイムまでは馬車で5日。途中に集落はないから、夜は野宿。公爵は自分の寝台つきの馬車で寝る」


「馬車の台数は?」


「俺たちが乗る馬車1台、公爵が乗る寝台馬車が1台、公爵の侍従が乗る馬車が1台、あとは食料や公爵の荷物を積んだ荷台が1台の計4台」


「警護対象の人数はどのくらいだ?」


「公爵1人、執事が1人、メイドが3人、御者が4人で計9人だ」


「そんなものか」


「うん。俺たちの馬車は基本的に先頭を走る。盗賊や魔物なんかを見つけ次第撃破していく。夜は3人で交代しながら睡眠をとり、警戒をする。ほかになにか質問はあるか?」


「特にないかな」


「私もない」


「じゃあ次はダルハイムでの警護内容について。滞在期間は約1ヶ月。ダルハイムに着き次第俺たち3人で警護にあたる。向こうの宿では俺たちは公爵と同じ宿の隣室に泊まることになっている。基本的に向こうの騎士も護衛についてるから、まぁ俺たちは最終防衛ラインってとこだな。公爵が観光に行くときは俺たちだけで警護する。お忍びらしい。大会の観覧中は公爵の座る貴賓席の横で警護。俺が試合に出ているときはおまえら2人で警護するように」


「以上質問は?」


「「ない」」


「よろしい。じゃあ明日に備えて今日は寝るぞ」


「は~い」


「私も自分の部屋に戻ります」


「おやすみエリスさん」


「ちゃんと寝ろよ~」


「おやすみなさいミシャさん……おもえもな」


エリスは俺を一瞥すると部屋を出ていった。


「俺たちも寝るかミシャ?」


「そうだね」


「じゃあおやすみ~」


「うん。おやすみ」







翌日。準備を整えて3人でザイン南門に向かった。


「おはようございます。公爵」


「おお、待っていたぞ。ではさっそく出発しよう」


「はい」


3人で馬車に乗り込んで御者に出してもらうように頼んだ。


(それじゃあダルハイムに向かって……)


(ごー!だね!!)






武道大会かぁ……優勝商品なんだろう?

次回はエリスに関して少し掘りさげます。

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