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荒ぶる戦乙女

女性には敬意を払いましょう。

エリスがチート神信者になってから3週間。


「おじいちゃんおねがい!」


「ミシャちゃんの頼みならいくらでも!」


のやり取りで作成されたエリスの装備ができたので、ミシャとエリスは装備を慣らしに依頼に行っている。


俺は以前頼まれていた依頼の確認のため、ガンツの住むザイン城に向かっていた。


外周街を抜け、内周街を歩く。


「騎士ってのはヒマそうだな」


騎士団詰め所と書かれた建物の前を歩いているのだが、中では騎士らしき男たちが昼間っから酒を飲みつつトランプに興じていた。


「まぁ俺も半分ニートみたいなもんだし、人のことは言えないか……」


最近はウィングドラゴンの素材で莫大な売上金が懐に入ってくるので、あまり依頼をこなしていない。


「異世界来てまでニートって俺……」


落ち込みそうになる。


(きょうはおしごとのはなしをしにいくんでしょ、あるじさま?)


「そうだったな。公爵様直々の依頼だ大仕事に違いない。よっし!気合入ってきた!!」


(そのちょうしでごー!だよ!!)


「おう!」


内周街から中央街に入る検問の前。


「止まれ!ここから先は平民の立ち入りは禁止されている」


衛兵に止められた。


「これ見せれば通してもらえると聞いたんだが?」


ガンツから貰った手形を見せる。


「これは……!?し、失礼しました!どうぞお通りください!!」


ビシッと敬礼されて通された。


う~ん。さすがシュタイン印の通行手形。


それから少し歩いてザイン城の前まで辿りついた。


しかし……


「デカイ城だな……」


町の中から見ても大きかったけど目の前まで来るとますます大きい。


「マコト=ムトウ様でいらっしゃいますか?」


門の前にいた執事らしき老人に話しかけれた。


「ああ、そうだ」


「ガンツ様が中でお待ちです。さあどうぞ」


そのまま執事に案内されて城内歩く。


絨毯敷きの廊下を歩き、突き当たりのドアの前で執事が止まった。


「こちらにいらっしゃいます。どうぞ」


ドアを開けられたので中に入る。


応接室なのだろうかテーブルを挟んでソファが二つ。


天井には大きなシャンデリア。


壁には巨大なガンツの肖像画がかけられていた。


「わざわざ足を運んでもらってすまないな」


奥からガンツが現れた。


「いえ。それで依頼の内容は?」


「まぁ、とりあえずかけたまえ」


「はい」


促されてソファに座る。うわ、柔らか!


おもむろにガンツが話を切りだした。


「今回、マコト殿にはザイン騎士団と演習を行って欲しい」


「ザイン騎士団?」


「このザインに駐留する私の私設騎士団だ」


さっきのあいつらか。


「なぜ演習が必要なんですか?」


「ザイン騎士団は王都の近衛騎士団に次ぐ精鋭だと自負している。だがな、最近任務もなければ事件もないので弛んでいるように感じてな」


まぁ確かに弛んでたな。


「それで演習ですか?」


「ああ。それも、できれば演習でザイン騎士団を徹底的に痛めつけてほしい。もちろん死者は出さずに」


「よろしいんですか?」


「うむ。きついお灸を据えてやって欲しい。正直、以前からどうにかしなくてはと考えていたんだが、さすがは精鋭を集めただけあって生半可な相手では返り討ちにあってしまう」


「そこで俺ですか」


「そういうことだ。ザイン騎士団の団員はマコト殿の顔を知らぬからな。まさか1人の相手に負けるとは思わないだろう」


「つまり、負けたときの衝撃が大きいほどいいんですね?」


「そうなるな」


「それでしたら、俺より適任がいます」


「ほう、誰だ?」


「俺の愛弟子と、その愛弟子の弟子です」


「なぜ適任なんだ?」


「実力はあるのですが、見た目は獣人の少女とエルフの若い女性です」


「確かに負けたらただごとではないな。しかし、本当に実力は確かなのか?」


「私見ですが、おそらく2人がかりならドラゴンも倒せるでしょう」


「そこまでか!?」


「はい」


「う~む。マコト殿のほかにそのような人物がいたとは……」


「あ、でも勧誘はやめてくださいね?2人ともまだ修行の身ですので」


「その実力で修行の身とは……まったく恐ろしいな、そなたたちの一団は」


「いえいえ」


「それならば人選はマコト殿に任せる。演習は明後日の正午だ。私もひそかに見に行くので、楽しみにしているぞ」


「ご期待に沿えるよう頑張ります」


「それではまた演習終了後に会おう」


「はい。失礼します」


そのままザイン城をあとにした。






冒険者ギルドでミシャとエリスが帰ってくるのを待って依頼の説明をした。


「というわけで、おまえたち2人にザイン騎士団を叩きのめしてもらいたい」


「なぜ私たちなんだ!?」


エリスが食ってかかってきた。


「それはさっき説明しただろ?」


「納得できん」


「意固地なヤツだな」


「なんとでも言え」


拗ねてしまったようだ。


「ミシャからもなんか言ってくれ」


ミシャに救援を頼む。


「ねぇエリスさん。確かに理由は納得できないかもしれないけど、これはあたしたちにとってもいいチャンスなんだよ?」


「……」


「あたしたちはまだ対人戦の経験もないし、なにより公爵様直々の依頼なら、そう簡単に断れないでしょ?」


「……ミシャさんがそう言うなら、私もやります」


不承不承と言った感じでエリスが承諾した。


「いや、よかったよかった。そう言えば、新装備の感想はどうだエリス?」


「これは素晴らしいものだ。くださったアドルフ老に感謝しなければいけないな」


エリスの新装備


上半身は深緑の半袖ブラウスの上から茶色い革のベストを羽織り、下半身は膝上15センチのホットパンツと黒いニーハイソックスが絶妙な絶対領域を作っている。


靴はベストと同じ色の革ブーツ。


腰の剣帯には黒い鞘のレイピアを挿している。


まさに冒険者ルック。


もちろん素材は全部ウィングドラゴン。


「そう言えば、なんで弓じゃなくてレイピアなんだ?」


前はレイピアではなく、弓を背中に背負っていたはず。


「あぁ、そのことか。弓自体はウィングドラゴンの素材で作れるんだが、今の私の全力で矢を放つと、目標に当たる前に弓が空気摩擦で燃え尽きてしまう。流石に矢までウィングドラゴンの素材を使うわけにはいかないだろ?」


「なるほど」


「それに今の私には魔術があるから、遠距離はそちらでカバーできる。レイピアは単純に昔使っていただけだ」


「そういうことね」


「じゃあ話も終わったし、ワノクニ亭に帰ろうか?」


「りょーかい」


「わかりました」


ミシャの呼びかけに応じて3人でワノクニ亭に帰った。





演習当日。


俺はミシャとエリスを引き連れてザイン郊外の演習場に足を運んだ。


「私はザイン騎士団団長、アベル=ローダーだ。相手は貴殿1人か?」


団長のアベルと顔合わせをする。


「いや、俺は戦わない。やるのはうしろの2人だ」


うしろに控えるミシャとエリスを指差す。


「なんだと!?」


「あの2人が演習相手だ」


「2人とも女……しかも片方は子供じゃないか!?ここはサロンや託児所じゃないんだ、なぁそうだろおまえたち?」


馬鹿にしたような物言いと表情でうしろの部下に振り返る。


部下もそれに呼応したように笑い声をあげ、


デートなら付き合ってやるよエルフの姉ちゃん!


とか


俺が遊んであげまちょうかお嬢ちゃん?


とか言っている。


「ガンツ公爵直々のご指名だ。文句があるなら領主様に言え」


「チッ!わかった。こちらもなるべく怪我はさせないように努力するから、そちらもうまく逃げ回ってくれ。おい、おまえたち!さっさと終わらせて酒飲みにいくぞ!!」


「「「「「おーう!!!」」」」


そのままアベルは自陣に戻った。


俺は2人のほうに向き直った。


「先方はあんな感じだが、どうする?」


「「……潰す」」


ミシャとエリスは完璧に切れた様子でハモッた。


「……殺すなよ?」


「殺さなきゃいいんでしょ?」


と屈伸運動しながら答えるミシャ。


「死よりも恐ろしいことがあると、あいつらに教えてやる」


拳を鳴らしながら騎士団を睨みつけるエリス。


「おっけー任せた」


そう言って俺は少し離れたところにある岩に腰を下ろした。


(完璧にできあがってるな。ここまでは俺とガンツの思惑通りだ)


(そうだね)


(これからどうなるか……しかし見てるあいだヒマだな)


(じっきょうでもする?)


(いいね)



「時刻は正午。ミシャたち2人と騎士団500人が試合開始を今か今かと待ちかねています。アスールさん、今の状況を見てどう思われますか?」


「そうですね。りょうしゃにはかなりのもちべーしょんのさがあります。それがしあいに、どうえいきょうするのかちゅうもくですね」


「ありがとうございます。中央に立つ衛兵の持つ旗が振り下ろされた瞬間から試合開始です」


「今、旗が、振り下ろされた!試合開始です!!」


「おっとまずはミシャとエリスが騎士団に突撃した!速い、速すぎます!まるで風のようだ!!」


「たぶん、かたまっているところにつっこんで、いっきにかずをけずるつもりですね」


「なるほど。ぐんぐん距離をつめていく2人に対し、騎士団は対応できずに棒立ちだ!これは危ない!!」


「せっしょくしますよ」


「そのまま2人が集団につっこんだ!すごい!人間がボーリングのピンのように吹き飛んでいきます!!」


「あのそくどでたいあたりされれば、とうぜんのけっかですね」


「そのまま2人は騎士たちを、殴る!蹴る!投げ飛ばす!!屈強な男性騎士が宙を舞います。すさまじい光景です!!」


「このままかたまっていては、ぜんめつするのもちかそうです」


「そうですね……おっと、やっとの思いで騎士たちは散らばり始めた」


「けんめいなはんだんです。これで、すこしはじかんがかせげるでしょう」


「それを見て2人も距離をとる。おや?2人で顔を突き合わせてなにか話し始めました。あれはなんでしょうか?」


「さくせんをきめているんではないでしょうか?」


「そのようですね。おっと、お互いに頷きあった。作戦が決まったようです」


「さて、なにをするかみものです」


「はい。2人そろって騎士団のほうに手を向けました。どうやら魔術を使用するようです」


「すででひとりずつたおすより、こうりつてきですね」


「たしかに。まずはエリスが土魔法で大量の拳大の石を精製しました。それをミシャが火魔法で熱する。石がまるで溶岩のように赤くなりました!」


「がったいまほうですか……ふたりそろってはじめてできる、こうどなわざです」


「私も初めて見ました。おっと、それを2人が風魔法で騎士団の上空に運び……叩きつけたっ!!」


「これはそうとうなひがいになりますよ」


「溶岩の雨『ラヴァレイン』と名づけましょう。ラヴァレインが騎士団を襲う!惨い、惨すぎる!!世界の終末の1コマを見ているようです!!!」


「それだけではないようですよ」


「あっと!ラヴァレインに逃げ惑う騎士を正確にエアバレットで撃ちぬいていく!まるで鴨撃ちだ!!」


「たてとよこのからのじゅうじほうか。これはにげられません」


「やっとラヴァレインが収まりましたが……フィールドには2人以外立っていません。死屍累々の様相です」


「とうぜんのけっかです」


「ここで試合終了を衛兵が告げます。ミシャ、エリス側の勝利です。試合時間は5分」


「はやかったですね~」


「一方的なワンサイドゲームに終わりましたが、今の試合を振り返ってどう思われますか、アスールさん?」


「きしだんがもうすこしまじめにしあいにのぞめば、すこしはねばれたとおもうんですがね……ざんねんです」


「実力差もさることながら、両者のモチベーションの差がこの試合結果に結びついたようです。おや?エリスが倒れているアベルに手を差し出す。試合を通じて友情が生まれたか?」


「おそらく、ちがうでしょう」


「そのままアベルの手を取って立ち上がらせ……あぁっ!顔面を殴り飛ばした!!そのまま仰向けに倒れるアベルを踏みつけつつ、なにか怒鳴っているようだ!音声を拾ってみましょう」


「えぇ~なになに『私たちを見た目で判断するから、こういうことになるんだクズ共!そして、おまえはそのクズ共の親玉、ウジ虫だ!!』だそうです。先ほど相当頭にきていたようですから、この辛辣な言葉も納得できます。エリスの隣でミシャも同意するように頷いている」


「じごうじとくですね」


「試合を終えて2人が戻ってきます。ここで演習終了です」


「今の試合、実況・武藤 真」


「かいせつ・あすーる」


「「で、おおくりしました」」


「なにやってるの、マコト?」


戻ってきたミシャに睨まれた。


「いや、なんでもない。それより2人ともお疲れ様。凄かったぞ」


「ありがと!」


「当然だ!」


「頑張ったご褒美になんか奢ってやるよ」


「やった!」


「私は甘いものが食べたい」


(とりあえず、ザインまで戻るか)


(ごー!だね!!)









死人……出てないよな?

そろそろ主人公にも仕事をしてもらいます。

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