Act.20「キスの雨」
※病気・医療・ドナーに関する描写は現実と異なる場合がございます。
恐れ入りますが、予めご了承の上お読み頂けますよう宜しくお願い致します。
「あんた今、自分が何言ったか解ってるの!?」
「そうわめくなよ。俺がお前の事を好きだと、何か問題あるのか?」
「大ありよ!だって、あたしは・・・・」
彼女は言い淀み、その瞳の奥が揺れた。
「お前が何をそんなにためらってるのか知らない。話したくない事なら無理には聞かない。だけど俺は、たとえ何があっても、お前の手を離してやるつもりはない」
多少強引にでもいい。コイツが俺のものになるなら、どんな手だって使ってやる。
コイツを一人で泣かせるなんてもう、したくない。
「お前は俺の妹で、俺のいちばん大事な女だ。ずっとそばにいて欲しい。もっとも、嫌だって言っても諦める気はさらさらないけどな」
きっぱりと言い放った俺の言葉に、彼女はしばらく沈黙し、やがて小さく言った。
「・・・・でも・・・・だってそんな・・・・信じられない・・・・・・」
瞬間、俺は彼女を抱き寄せ、もう一度その唇を塞いだ。
「んっ・・・・んんっ・・・・」
小さな抵抗を見せた彼女の手を掴み、俺はその唇を貪る。
口角を割って舌をすべりこませ、彼女のそれと絡ませていく。
漏れる吐息は熱を増し、やがてそれは身体中に伝染していく。
抱き寄せた彼女の身体からスッと力が抜けたところで、ようやくその唇を解放した。
「・・・・これでも、信じられない?」
囁いた俺に、彼女は小さく呟いた。
「・・・・・・・ばか」
頬を赤く染めてうつむく彼女はあまりに可愛らしく、俺は少しだけ意地悪がしたくなって、その耳にふぅっと熱い息をかけた。
「ひゃんっ!」
ビクリと震えたその身体を優しく抱きしめながら、その耳に囁く。
「・・・・・・好きだよ」
腕の中で小さく震えたその全てを、激しく愛しいと思った。
再びその唇を塞いだ時、彼女の腕が、俺の背中に回るのを感じた。
「・・・・んっ、ふっ・・・・」
熱が増して行く。
耳に響くのは微かに漏れる吐息と、遠くに聞こえる雨の音だけ。
世界に二人だけのような甘い錯覚の中、俺達はキスの雨に身を委ねるのだった。