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レインキス  作者: 七瀬 夏葵
第二章「加速する想い」
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Act.17「雨の檻」

ふいに雨が降り出した。

俺達は雨を避ける為、ひとまず近くの立体駐車場へと駆け込んだ。

休みの日の早朝だけあって車もほとんどなく、俺達以外誰もいなかった。

辺りはシンと静まり返り、激しく降りだした雨の音が、うるさいくらい響いている。


「しばらくここで雨宿りしよう」


彼女は無言で頷いた。


「・・・・なあ、お前、何でさっき俺を見て逃げたんだ?」


彼女はうつむき、しばらく黙り込んだままだったが、やがて静かに口を開いた。


「・・・・怖いから」


「は?怖いって、俺が?」


驚く俺に、彼女はハッとしたように顔をあげ叫んだ。


「違うの!お兄ちゃんが怖いわけじゃないの」


「じゃあ、何が怖いんだ?」


「ん・・・・・」


彼女はふぅーっと大きな溜め息を吐いた。


「なんか、訳があるんだろ?良かったら話してみろ、な」


その目に酷くためらうような色が浮かび、彼女は自嘲気味に笑った。


「・・・・ん。ちょっとね、色々あって」


それは、あまりに痛々しい、今にも泣きだしそうな笑顔だった。

それを見た次の瞬間、俺は思わず、彼女を抱きしめていた。


「お、お兄ちゃん!?」


彼女の驚いた声が、無人の静かな立体駐車場に響いた。


「いいから、このまま聞け」


抱きしめる腕に力を込めた。


「お前が何を怖がってるのかわからないけど、俺は、お前を傷付けたりしない。だから、大丈夫だ。安心して、そばにいていいんだよ」


言い聞かせるように言った。

それはむしろ、俺の為だったのかもしれない。

俺は、怖かった。

この手を離せば消えてしまうんじゃないか。

そんなふうに思うほど、目の前の彼女は儚げで、弱々しかった。

彼女の小さな身体が、震えた。


「だめ・・・・。だめなんだよ、だって、あたしは・・・・」


小さく言い、離れようとした彼女を、俺は強引に引き寄せた。


「――――――!!」


離したくない。

塞いだ唇が、俺の身体を熱くしていく。


外には雨の檻。

引き返す気はもう、なかった。

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