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レインキス  作者: 七瀬 夏葵
第二章「加速する想い」

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Act.16「守りたい」

朝日が目にしみる。

散々飲み明かした俺と山田さんは、その後二人で朝まで徹夜カラオケコースで延々歌いまくった。

現在時刻AM5:30。もうすぐ始発が出る時間である。


「じゃあイチ、俺、始発で帰るけどよ。どうだ、これから家に来ないか?アイツもたまにはお前の顔が見たいって言ってたし」


笑顔の山田さんを前に、俺はちょっとだけ考えた。

山田さんの奥さんとは、俺も会社の寮の役員をやってた同士の関係上で親交があるから、まあ、家にお邪魔する事自体はやぶさかじゃない。

しかし、それにしても一晩中旦那さんを付き合せた上に、朝から新婚家庭にお邪魔するのはさすがに失礼ってものだろう。


「あー・・・・、嬉しいんですけど、やっぱり今日は遠慮しときます。予定もあるんで」


「そうか?じゃあ、またな!」


山田さんは手を振って元気に改札の向こうへ消えて行った。

同じ徹夜明けなのにえらい元気な人だ。

俺は、山田さんを見送ってから一人寂しく歩き始めた。

その時だった。


「ん、あれは・・・・」


交差点の向こう側に、自転車で信号待ちをしている人物が目に入った。

俺が見ると、向こうも俺に気付いたようで、ハッとしたように俺を見たかと思うと、パッと自転車にまたがり、通りの向こう側へと走り出してしまった。

瞬間、信号が青に変わり、俺は弾かれたように走り出した。


「おい!ちょっと待てよ!!」


必死で叫んだが、前を走る自転車の主は一向に止まる気配が無い。

俺は、目の前の自転車まで何とか追いつこうと必死で走った!


「こら待て!何で逃げるんだよ!?」


走りながら叫んだが、自転車の速度は一向に弱まる気配がない。


「待てって言ってるだろーがぁっ!!」


俺は更に加速し、思いっきり走った!

その時だった。


「うわっ!!」


捨てられていたペットボトルに引っかかり、足がもつれた。

まずい!と思った次の瞬間、俺の身体はコンクリートに打ちつけられていた。


「いってぇ・・・・」


どうにか受け身を取ったものの、あちこちを派手にすりむいたらしく、ズキズキと痛む。

直後、キキッと音がして、バタバタとこちらへ駆けて来る音がした。


「だ、大丈夫!?」


倒れている俺を、さっきまで自転車で爆走していた人物が心配そうに覗きこんだ。


「はは、何とかね。それよりお前、何逃げてんだよ?お陰でこんな怪我する羽目になったじゃないか」


「ごめん・・・・」


申し訳なさそうに謝られ、俺はふぅーっと大袈裟に溜め息を吐いて言った。


「いいよ。許す。お兄ちゃんはそんなに心狭くないからな」


すると彼女は、泣きそうな顔で笑った。


「ありがとう・・・・お兄・・ちゃん・・・・」


その時、思った。


・・・・守りたい。

俺は、コイツを・・・・・


それは、心から溢れる、素直な気持ちだった。

理由なんかどうだっていい。

目の前にいるコイツを、守りたい――――。


昨夜のモヤモヤした気持ちはもう、何処にもなかった。

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