91話 人族世界での会議
事件から1ヶ月が経った。
俺は村の復興を手伝い、その後にウェストンに行った。
現在、俺はウェストンの国王と会議をしているところだ。
「して、レオリオスよ。我らのもとに来た目的は何だ?」
「はい。その説明の前に、まずは、近年の竜獣の動きについて確認をとってもいいですか?」
「聞かせよ」
俺は村で起こったことを事細かに伝えた。
「…ふむ。なるほど…」
それを聞いた国王は少し考え込んだ。
そして、言葉を続けた。
「事の顛末は理解した。して、質問を戻すがレオリオスよ。ここに来た目的は何だ?」
その問いに、俺は答えた。
「私の見立てでは、この後に竜獣との大規模な戦いがあると考えています。それに伴う協力関係を築きたいのです」
それを聞いた国王は、言葉を放った。
「我が国としては、協力は惜しまないつもりだ。だが…」
国王は言葉を続けた。
「戦力協力となれば、ケーズバルトに向かわなくてはならない」
ケーズバルト。
人族世界の中心に位置する国であり、人族世界を統治する国である。
人族世界の貴族の多くはケーズバルトに集中し、いわば都なのである。
人族世界のルールを定めたのもケーズバルトだという話だ。
そしてレアケースではあるが、人族世界における戦闘行為や大規模討伐にはケーズバルトに申請する必要がある。
今回はそのレアケースなのである。
「しかし、その竜獣のこともあり、我は今、国から出ることができない」
つまり、国王自ら出向くことができないということか。
…つまり俺か?
俺が国王に向き直ると、こちらをじっと見ていた。
これはつまり「お前が行け」ということなのだろう。
…行くしか無いか。
こうして、俺は3日かけてケーズバルトに向かった。
幸いなことに、今回はウェストン国王からの伝達があったらしく、入国はすぐ済んだ。
門をくぐり国に入ると、中はとても栄えていた。
これはなんというか…ジークバルトによく似ている。
いや…各世界の中央国であると考えれば当然か。
本来であれば観光したいが、今日はそのために来たわけではない。
俺は国の中にあった馬を預ける専用の厩舎に馬を預け、王宮へと向かった。
「そこの者。名乗れ」
王宮の前につくと、門番に止められた。
「『レオリオス・パルト』です」
「証明できるものは?」
どうやらかなり警戒されているらしい。
ただ…証明できるものか…
…あぁ、そうだ。
「これでどうでしょうか?」
俺は身につけていたローブと手袋、腕輪を見せつけるように示した。
そこにはジークバルト、ファジサイト、ウェストンの紋章がそれぞれついていた。
それを見た門番はハッとして俺に向き直った。
「失礼しました!まさかそのようなお方だとは…!」
え!?なんかめっちゃかしこまってない!?
「き、気にしないでください!俺はただの魔術師ですから!」
その後、ちょっと面倒な手続きはあったが中に入れた。
そして用件を言うと、俺は速攻で会議室に案内された。
しばらくすると、そこに3人ほどの人が入ってきた。
1人は全身鎧に身を包んだ騎士のような男。
もう1人はローブを纏い、大きめの杖を携えた女性。
そして、その2人に挟まれる形で1人、シンプルなスーツのようなものにマントを羽織り、やや中年のガタイのいい男がいた。
うん…
なんとなくどういう人達か分かった気がする。
「失礼。おまたせしたかな?」
「いえ、とんでもありません。こちらから急遽押しかけ、お時間を頂いてしまい申し訳ございません」
「そうかしこまるな。まずは座れ」
俺は言われるがままに席についた。
「私は、この国を治めている『ディール・ラノス』という」
ラノス家。
現在、人族世界を統治している貴族。
先代貴族であるバルト家の消滅と同時に人族世界最高貴族として君臨し、今に至る。
現代における急速な人族世界の発展は、ラノス家の功績とも言えよう。
「お初にお目にかかります。私はウェストン所属、エイサールの魔術師の『レオリオス・パルト』と申します」
「…そうか。君がパレトの最後か」
…ん?
今なんて言った?
最後?
「失礼をお許しください。『最後』とは?」
「君の家族以外のパレトは滅亡した。それだけだ」
「ですが、姓を変えて存在すると以前聞きましたが?」
これはかなり昔の時の記憶だ。
たしか、魔術の修行を始めた時に聞いたことだ。
しかし、ディールさんはこう答えた。
「いや…全員死んだと聞いている」
俺は衝撃を受けた。
パレト家は母、カレラの血筋を除き全て滅んでいたのだ。
「それは、最近のことですか?」
「いや、たしか…28年前には滅亡している」
俺はさらに混乱した。
28年前。
その時、カレラはまだ16歳のはずだ。
17でバオスと結婚したらしいが、それではカレラは幼い俺に嘘をついたことになる。
なぜ嘘をついたんだ?
理由がわからない。
嘘をつくなら「私以外は姓が変わったりして滅んだ」ではなく「まだいる」や「わからない」という方が自然だ。
………。
…だが、今考えるべきことは違うと、ここで思い出した。
「すみません。脱線してしまいました」
「気にするな。家のことが気になるのは当然だ」
「改めまして、本日の要件なのですが…」
俺は事細かにこれまでの内容を話した。
「なるほど。つまり、竜獣との戦闘に備える許可がほしい。あわよくば協力してほしいということだな」
「はい」
あわよくば…と考えていた訳では無いが、人数は多いに越したことはない。
「私達は協力を惜しむつもりはない。協力させてもらおう」
「ありがとうございます!」
「そして、これは提案だ」
提案?
何か策があるということか?
「『三世界共同戦線』という言葉を知っているか?」
「三世界共同戦線…ですか?」
三世界共同戦線…
なんだったっけ?
どこかで聞いたことがある…。
………。
………。
…あ。
「たしか…カスラ戦線の時の…」
カスラ戦線。
およそ200年前のこと。
魔神カスラによる侵略を止めるべく起こった戦い。
魔神カスラは魔族世界を征服し、虐殺を繰り返した。
理由は不明。
さらに、カスラの正体も不明である。
カスラは竜族世界侵略時に竜獣を引き込み、竜獣と交易関係にあった三眼族も間接的に巻き込まれた。
これを見かねた当時のケーズバルト、ジークバルト、竜人、ドラマルトの王達が協定を結び、「三英傑」率いる軍がカスラの軍勢を打ち破った。
これが、カスラ戦線である。
そして、この「三世界共同戦線」とは、この時作られたものである。
カスラ戦線以来も、大規模な魔獣掃討などの時に発令されてきたが、片手で数えられる数しか無い。
「…まさか」
「今こそ、発令すべきだ」
そう言うと、ディールさんは立ち上がり、そして改めてこう言った。
「我、ケーズバルト国王、ディール・ラノスがここに宣言する!今より、『三世界共同戦線』を発令する!」
俺はこれを見て思った。
これは…この人は…きっと最悪のことを考えているんだ。
「竜獣が世界を滅ぼす」という結末を。
「私達だけのために、よろしいのですか!?」
俺はそう聞いた。
しかし、国王はこう言った。
「君たちのためではない。最悪の結末の可能性を限りなく『無』にするため。いわば、私のためだ」
俺はこれを聞き、この国王に尊敬を通り越し、畏敬の念すら感じるのであった。




