89話 竜との対峙
村の外にある林の中。
俺とドーラ師匠の戦いは続いていた。
キンッ!
カンッ!
ガゴンッ!
金属音や衝撃音が林の中に響き渡る。
俺は現在、持久戦をしている。
ひたすらドーラ師匠の攻撃を避け、規模の小さい技でのみ攻めている。
というのも、この試合の目的である「飛槍の雨」を発動するためには、辺りに人がいないことを確認する必要がある。
ニナとラーラには攻撃が行かずとも、他に散らばったみんなに飛んでいったらたまらない。
この技の飛距離がまだ把握できていない以上、むやみには使えない。
「どうした?受け身だけでは勝てないぞ!」
ドーラ師匠はそう言ってくる。
分かっている。
このまま持久戦をしたら絶対に負ける。
けれど、ここでは決定打が出せない。
どうすれば…
そんな時だった。
『全員林から出たぞ!もう村だ』
分身から念話が飛んできた。
どうやら、全員村に戻ったようだ。
なら…できる!
俺はかすかに笑みを浮かべた。
そして、それを見たドーラ師匠は「なにか来る」ということを察して、距離を取った。
「内透結界!」
俺はその隙にニナとラーラを結界で囲んだ。
そして、
「影の領域…拡大!」
ズンッ!
俺は影の領域の範囲を林の半分まで広げた。
「ここまで…」
それを見て、ドーラ師匠は驚いた。
林は中央から半径大体200メートルほどで広がっている。
つまり俺は今、半径100メートルで展開している。
ドーラ師匠の知っている影の領域は、これよりもかなり小さいものだ。
実際のところ、俺も少し無理をして広げている。
しかし、これで逃げ場は潰せた。
あとは…
「攻めるだけ!」
「ん!?」
俺は突きの構えをした。
そして、技を放った。
「飛槍の雨!」
無数の槍状の飛ぶ斬撃が、ドーラ師匠に向かって放たれた。
「あまい!」
ドーラ師匠はかわした。
が、そんなことは想定済みだ。
「師匠…ここは俺の空間です!」
避けられた斬撃はUターンし、再びドーラ師匠に飛んでいった。
「何!?」
この斬撃には、剣力だけでなく魔力も込められている。
つまり、影の領域の効果である「魔術の必中化」の適用対象だ。
「蛇線・飛剣乱舞!」
それを見たドーラ師匠は回避から相殺にシフトした。
俺とドーラ師匠の斬撃はぶつかり合い、相殺されていく。
こうなればやることはもう一つだ。
…我慢比べ
「「うおぉぉぉぉぉ!!」」
2人の斬撃のスピードはみるみる加速していき、結界内のニナとラーラには目で捉えられないほどになっていた。
そして、2人の斬撃は遂に、辺りの木を切りつけ、なぎ倒した。
だが決着はつかない。
2人の攻撃は止まらない。
「ここっ!」
俺はそう叫んだ。
すると、周囲から影分身達が飛び出してきた。
「分身だと!?」
ドーラ師匠は驚いた。
それも無理はない。
だって、さっきまで分身は戦いに介入してこず、弾かれたあとは消えたと思っていただろうから。
分身が弾かれた後、分身たちは「影潜り」で影の中に隠れていたのだ。
このタイミングに備えて。
「「「「「「炎戒の龍!!」」」」」」
分身たちはドーラ師匠に向かって一斉に攻撃をした。
そして、ドーラ師匠はさばききれず、攻撃によって飛ばされた。
「ハァ…ハァ…」
俺は攻撃をやめ、その場でドーラ師匠の方を向いた。
ドーラ師匠はと言うと…
「………」
立って入るものの、その場から動こうとはしなかった。
そして、剣を鞘に納めた。
どうやら…終わりらしい。
「どう…でしたか?…」
俺がそう聞くと、ドーラ師匠は微笑んだ。
「上出来だ。お前の奥義は完成でよいだろう」
俺は、ドーラ師匠に認められた。
この瞬間、俺は心の底から喜んだ。
しかし、体はかなり疲れていたようで、喜ぶ元気はなかったようだ。
「さぁ、帰るとしよう。神級の証は後に渡そう」
そう言って、ドーラ師匠は俺を担いだ。
「ありがとう…ございます」
俺は結界を解き、4人で林を後にした。
林を抜けると、日は少しずつ傾いていた。
今は…前世のおおよそ15時くらいかな?
そう思っていると、
『おい本体…大…だ』
途切れ途切れに念話が聞こえた。
分身からのようだ。
『おい!どうした?』
俺が念話で聞き返すが、応答がない。
何だ?
そう思っていると、
「…そこのラーラとやら。治癒はできるか?」
ドーラ師匠がそう聞いてきた。
「え?できますが…どうしたんですか?」
「ならば、我とレオリオスにやってくれ」
ドーラ師匠はいつにもまして慌てたような声でそう言った。
「どうしたんです?師匠?」
「村を見てみろ」
俺は村を見た。
「…え?」
そこには、バカでかい結界が張られていた。
そしてその上空には…
竜獣の軍勢が飛んでいた。
日常編 ー完ー
三世界共同戦線編に続く




