82話 家を直そう 1
雪が降り始め、季節は冬となった。
俺は相変わらず魔術の研究をしている。
しかし、最近はそれだけではない。
ニナと結婚し、いよいよ俺も大人の階段を登ったのだ。
結婚式から2週間ほどで夫婦らしいこともしたし、それらについても学んだ(主にバオスから)。
そんなある日のこと。
俺のもとに手紙が来た。
差出人はラーラだった。
レオリオス様へ
先日の結婚式へのご招待、ありがとうございました。
あれから2週間ほどが経過しましたが、いかがお過ごしでしょうか。
今回手紙を送ったのは、お願いしたいことがあるからです。
季節が移り春となれば、私とエルは卒業となります。
その後、私達は再びレオリオスさんと共に仕事や魔術研究をしたいと考えています。
もし可能でしたら、私達を村に住まわせていただけないでしょうか?
もちろん、それに条件があれば飲ませていただきます。
どうか、快い返事をお待ちしています。
ラーラ・センター
…なるほど。
村に住みたいときたか。
現在、村は復興と開拓を進めている。
人はいくらでも欲しい。
ましてや、その人材が魔術師ならなおさらだ。
しかし住む場所がない。
どうしたら…
俺は自分の机で考えた。
その時だった。
ビキッ!
どこからか不吉な音がした。
まるで、気が折れたような音だった。
「ん?」
俺は音を感じた方向に目をやった。
それは床だった。
木の床を見ると、そこには亀裂が入っていた。
そして、それを確認しようと俺が立ち上がると、
ビキビキッ!!
亀裂はみるみる広がっていった。
そして俺の思考はとある情報で出てきた。
あれ…ここ、2階だよな?
ガラガラガラ!!!
「え!?」
床は崩れ落ち、俺も落下した。
俺の部屋は居間の真上にあったため、居間にあったテーブルに落下した。
居間にいたニナとルカ、バオスは驚き、飛び跳ね、即座に逃げた。
「…って、レオ!?」
バオスは俺の存在に気づき、駆け寄った。
その発言で、ニナとルカも俺に気づいて近づいてきた。
「天井…いや、床が抜けたのか?」
全員が上を向き、俺の部屋を見つめた。
そして、全員が思った。
これは…マズい
その日の夜、俺達は客間に集まった。
さあ始まりました。
10年ぶりくらいの家族会議。
今回は新たにルカを加えた新体制でお送りいたします。
「さて、今回の議題ですが…皆さんおわかりですね?」
俺の問いかけに、全員が首を縦に振った。
「今回の事件の原因…それは…」
「「それは…」」
俺の発言に、ルカとカオルが息を呑む。
「ズバリ、『経年劣化』です!」
俺はこの会議に先立ち、この家について調べた。
すると衝撃的なことが判明。
なんとこの家、パルト家が昔から所有していたものらしく、一番古い素材は100年以上のものだとか。
それが経年劣化によって崩れた、というのが今回の原因である。
「この家は正直もう古いです。なので、この状態をどうするかを話し合いたいのですが…」
「答えは決まっているんじゃないか?」
俺が話していると、ドーラ師匠がそう言った。
「…そうですね」
そう。
俺はさっきの手紙の件。
結婚が続いた件。
村の役目の件。
これらを考慮したうえで、もう結論は出ていた。
「この家を、立て直します!」
これに対し、その場にいた全員が首を縦に振った。
「だけどお兄ちゃん。どうしてそうなるの?今は冬だよ?」
「あぁ。それに関しては…」
俺はさっきの手紙の件を含め、みんなに説明した。
「…ってことは、ラーラちゃんとエルちゃんを家に?」
「まぁ…正確には別の建物を作って、そこに住ませるつもり。通路くらいでつなげるのはいいと思うけど」
俺がそれを言うと、ニナやカオルは納得したようだった。
「それにあの手紙…もしかしたら…」
俺は少し懸念が湧いたが、気にしないことにした。
とにかくまあ、まずは立て直しだ。
俺は早速、村の設計士のもとに行き、設計を考えることにした。
と言っても、今は夜だし、それは明日になるのだが。
数日後。
俺は村の設計士と一緒に家のデザインから間取りまでを話し合い、図化し、計画をねった。
そして今日から作業スタートである。
メンバーとしては、俺、ナナ師匠の二人と大工や設計士を含めた作業員10名の計12名だ。
作業としては、まずは家を解体し、そこから骨組みを作った後、魔術で壁を作っていく。
最後に内装を作り完成、という手順だ。
そして今、俺は杖を構えている。
「うっし。じゃあやってくれ!」
後ろで俺を見ていた大工がそう言った。
なんでも、建物の解体の際、その家の持ち主が最初に解体し始めるのが通例らしい。
家への思い出や感謝、気持ちの整理をつけるなどの意味があるんだとか。
だが俺は思う。
それ…バオスの役目じゃね?
とはいえ、俺もこの家には思い入れがある。
この機会は多かれ少なかれ、ありがたいことだ。
「今まで…ありがとう」
俺は目を閉じ、静かにそう言った。
「…行きます!」
俺は杖を構え直し、魔力を溜めた。
俺のコールに反応し、周りの人は全員離れた。
そして俺は魔術を放つ。
「風破裂!」
ボンッ!
俺が魔術を発動すると、壁に大きな円形の穴が空き、中が見えた。
中は解体前に全て村に作った仮小屋に移したため、空っぽだ。
けれど、その間取りや材質に思い出を感じる。
本当に…ありがとう。
「こりゃスゲーや、魔術だとこんなに解体が速いんだな」
作業員は俺の開けた穴を見て言った。
「え?やり過ぎでした?」
「いや。本来はこの大きさまで1時間くらい作業してもらうんだよ。それが一瞬だもんな」
こうして解体作業は始まり、わずか1日と数時間で終わった。
解体を終えた夜。
俺は仮小屋で休んでいた。
部屋にはニナがいる。
「ねえレオ?」
「ん?どうした?」
「レオの前世だと、家ってどんな感じだったの?」
「家か…」
俺は昔の自分の家を思い出した。
大きさは今の家よりは小さく、白ベース。
1階にはリビングとキッチン、物置部屋と風呂があった。
2階には家族3人の各部屋があり、俺の部屋は階段から一番奥にあった。
部屋はシングルベット3つ分くらいの大きさで、ベットと机があった。
机には本や教材、ゲームが混在し、上の方にはエアコンがあった。
床には台に上がったテレビと、毎日のように使っていた楽器があった。
今思えば、面白みのないごく普通の家だ。
けれど、旅をしている間は感じなかったものが、この世界と前世の家に共通してあった。
「この世界と同じだけど…温かいところだったよ」
「温かい?何が?」
「色々…ね」
俺はここで、家の意味について考えさせられた。
いや、家族について考えさせられた。
「俺達も、父さんと母さんみたいな…こんな温かい家庭を築けるのかな?…」
俺が呟くと、ニナは俺の前に立って言った。
「頑張ろう!それを目指すのが夫婦で、家族でしょ?」
「…うん。そうだな」
俺はこの気持ちを大切にしようと思った。
そして改めて、家直しに全力で取り組もうと思った。
「よし。もう寝るか?」
「レオ。今日は一緒に寝てもいい?」
「え?…いいけど?」
「やった!」
こうして、ニナと一緒に一夜を過ごした。
この翌日、俺が夜の間に疲れて寝坊したのは、また別の話である。




