62話 最後の学校行事
事件から2ヶ月と2週間が経過した。
「それでは、これより文化祭をスタートします!」
今日は文化祭だ。
というのも、事件の影響で、本来予定していた期間に文化祭が開催できなかったのだ。
それに伴い、ジルさんは文化祭の日をずらして開催することにしたのだ。
「んで…何やるんだ?」
そんな中、俺はラボの前にいた。
当日ではあるが、俺は影魔術研究会が何をするのかを伝えられていなかったのだ。
「そりゃ…ねぇ…」
エルに聞いてみるが、答えようとしない。
「なんで隠してる?」
「ま…まあ…とりあえずラボに入ってよ!」
…怪しい。
一体何を企んでいるんだ?
俺は恐る恐るラボの中に入った。
「な…なんだ…こりゃ…」
そこには他の影魔術研究会のメンバーがいた。
1期生も2期生も全員だ。
そいつらは全員、白と黒の服に身を包んでいた。
男はまるで指揮者のように決められたスーツ。
そして女は…
…黒い服とスカートの上に、エプロン…
まさか…
「メイド…喫茶……」
…いや…男もいるからコスプレ喫茶だろうか。
何にせよこれは…
「仮装喫茶です!」
マジか…
これは予想外だった。
まさかこんなものを計画していたなんて…
…待てよ?
なんでわざわざ俺に隠してたんだ?
やるものを講師になぜ内緒にする?
別に否定されるかもわからないのに…
…否定?
…俺に否定されるなにかがあるのか?
まさか…
「…俺もやれ…ってことか?」
そう聞くと、女性陣全員がとんでもない目つきで迫ってきた。
「「「「「「…はい!…ぜひ…」」」」」」
…つまりあれか。
これは俺にこの服装をさせるために計画してたってことか…。
『先生…逃げられませんよ』
さらに念話でラーラからの追撃まできた。
俺は「男性陣!助けてくれ!」と言わんばかりの視線を送った。
それに対して男性陣は…
親指を立ててグッジョブをするだけだった。
クソッ…あいつらグルか…
すると、みんなの後ろから見ていたニナが近づいてきた。
「ニ…いや…カナル…さん?」
「レオ…」
するとニナはニコッと笑った。
「…やって?」
「………」
こうして俺は、強引に衣装を着させられるのだった。
「先生!似合ってますよ!」
「やっぱ先生はこういうのも似合うな!」
俺は衣装を着させられたあと、開店前の会場…という名のラボに連れてかれた。
いわゆる公開会…俺からしたら公開処刑の処刑場だ。
「なんでわざわざ俺まで……」
「だって先生、いっつも似たような服にローブ纏った姿なんだもん!」
「1回くらい違う服装もしてほしいよなぁ?」
「だからって…なんで今なんだよ…」
「それは…ねぇ…」
エルたちが答えづらそうにしていると、フェイから言葉が飛んできた。
「カナルとのカップリング仮装は見たいだろ」
「「「「「「…!?」」」」」」
俺は驚いた。
え?
バレてんの?
俺…学校内でそういうの見せたことないんだが?
1期生の方を向くと、俺とは別の意味で驚いているようだ。
その顔は「言っちゃうのかよ!?」とフェイにいっているように見えた。
てか…カナルも1期生と驚いてるってことは…
バレてるのは知ってたみたいだな…
…ん?...ってことは…
「カナル…言ったのか?」
「…話しちゃった」
やっぱそういうことか…
「なんだったら本名も…」
………。
……え?
「え!?本名も!?」
マジかよ…
てことは俺…
彼女を本名で呼ばないやばいやつじゃん!
「それ…早く言ってほしかった…」
「ごめん…」
…まあ…まずそれはいいや。
とにかくこれで隠してた理由はわかった。
………。
…やむを得ん。
「…こうなったら…やるしかないな…」
「「「「「「え!?」」」」」」
俺はこの場にいる全員が驚くのを気にせず、食器の準備を始めた。
「おい…もう始まってんだぞ!?準備しろ!」
「は!?はい!!」
こうして、「影魔術研究会仮装喫茶」が開店した。
「あ!いらしゃいませ!」
「「「「「「いらっしゃいませ!」」」」」」
仮装喫茶はそこそこ繁盛していた。
中は満員で、外には短めの列があった。
「注文入りました〜」
「「「「「りょうか〜い」」」」」
基本は接客と料理を男女半々でこなしている。
俺はと言うと…
「オーダー入ったぞ?聞こえてるか分身?」
「聞こえとるわ!脳内にいちいち語りかけてくるな!」
本体が接客をして分身に注文を伝えるということをしている。
というのも、結構みんな働いているため、仕事の負担を減らすためにそうした。
なお、ラボ内はすべて1期生で回し、2期生は宣伝に行っている。
「中もやればいいのに」と2期生に言ったが、「それは1期生の仕事です!」と断られた。
その意図はなんとなくわかっていた。
俺とニナはもうすぐここを去る。
その前の1期生最後の思い出作りの場を作ってくれたのだろう。
『せ…先生…』
そんな事を考えていると、外を見に行ったラーラから念話がとんできた。
『どうした?』
『大変です!…外が…』
ドタドタドタッ!
念話で会話をしていると、後ろから足音がした。
「先生!大変です!」
来たのはライナだった。
「ど…どうした?」
「そ、外に…」
「外?外がどうしたんだ?」
「外が行列です!」
『外が行列なんです!』
念話とライナの声が重なった。
「ぎょ…行列!?」
俺は慌てて廊下に出た。
そこには長蛇の列ができていた。
「最後も結局…これなのか!?」
ここからは言うまでもない。
大忙しな喫茶の始まりだ。
それからしばらく作業をした後、放送が流れた。
「時間になりました!これをもちまして文化祭を終了します」
夕暮れ時。
文化祭は幕を閉じた。
午後の喫茶は大変だった。
行列はどうやら、「影纏のスーツ姿が見れる!」「カナルさんの本体!?」「エルの猫耳メイドだ!」等々、メンバーや俺の姿を見たがった生徒や客が押し寄せて起こったらしい。
俺が分身を出してなんとか店を回すことができた。
さて…とうとう文化祭も終わりか…
「先生!行きますよ!」
そう思っていると、1期生メンバーは俺の手を引き走り出した。
「え!?どこに!?」
「最後の思い出作り!」
思い出作り?
何をするんだ?
そう言って連れてこられたのは、中央の広場だった。
広場には大勢の人が来ていた。
「なんで…こんなに人が?」
「レオ…今年はね…」
ニナはその理由を俺に言った。
「夜祭があるんだって」
なん…だと?
夜祭。
高校の文化祭の定番と言えるイベント。
俺の記憶だと、劇をやったりバンド演奏があったりするはず…
「先生…バンドやるよ!」
「え!?今から!?」
混乱している俺なんて気にせず、みんなは俺を控室らしき場所に連れて行った。
「ナナさんから聞いたけど…先生ってバックラインできるんですよね?」
「え?」
あ、そういえば…
俺…前にナナ師匠とカオルの前で演奏したことあったな…
「…ハァ」
しょうがない。
こうなったら…最後だし…
「やるか!」
「「「「「「うん!」」」」」」
こうして俺は…いや、俺達は楽器とマイクを手に、壇上に向かった。
そして、最後の思い出作りをするのであった。
「いや〜楽しかった〜」
「ニナさん、歌上手かったですね!」
「いやいや…それほどでも…」
「あ、照れてます!」
「ちょ!?ライナくん!!」
「アハハハ!!」
夜祭終了後。
俺達は笑いながら各々の部屋に戻った。
「これで…終わりなんだよね…」
その時、エルがそう呟いた。
「しんみりするなよ」
「先生…でも…」
「これはたしかに最後だ。今日が終われば、あとは卒業だ」
俺はみんなに向かってそういった。
「でも、別れはすべてが今生の別れというわけじゃない。また会える」
「「「「「「………」」」」」」
「だから…今日は笑っていようぜ!今日が最高の思い出になるように!」
「「「「「「はい!」」」」」」
俺達はその後、楽しい話をしながら帰った。
これが俺達の楽しい思い出にできるように…
おまけ
パート紹介(楽器名は前世の世界の名前で)
ボーカル・・・ニナ&エル
ギター・・・モラ
ベース・・・レオリオス
ドラム・・・ライナ
ピアノ・・・ラーラ
その他パーカッション・・・フェイ&レオリオス(分身)




