18話 個人戦に相性と熱
翌日。
術使い闘技大会は2日目に突入した。
今日からトーナメント戦だ。
俺は朝のトレーニングついでに、闘技場の外に張り出されているトーナメント表を見に行った。
「…マジか……」
俺は驚愕した。
トーナメントには出場者の名前が書いてあるのだが、便宜上、二つ名を持っている神級魔術師、剣士、体術使いは、二つ名のみが表記されているのだが…
「二つ名ばかりじゃねーか」
トーナメント表の1/3が二つ名持ちだったのだ。
これは…勝てないかもな…
参加者30名に対し、二つ名持ちが10名。
まあまあ多いな。
てか、その人数が集まってるこの祭り、規模デカすぎだろ。
…まあ、神級相手にどれくらい通用するかを確かめられると考えればいいか。
俺はトレーニングを再開した。
数時間後。
いよいよ1回戦だ。
俺の初戦は「カール」という20代の男だ。
姓がないということは、混血のようだ。
「お兄ちゃ〜ん!」
お、今日もまた妹の声援が来たぞ。
俺はカオルに手を振った。
「ふん、神級だからって調子に乗るなよ!」
と、カールがいった。
「乗ってませんが?」
「チッ!」
相当嫌っているようだ。
まあ、構わないが。
「それでは、『カール』対『影纏のレオリオス』…」
スーーーッ……
俺は深呼吸をした。
「はじめ!!」
「ーー…ー………ー」
聞き取れないが、カールは詠唱を始めた。
なるほど、魔術使いか。
無詠唱で一気に叩くのも手だが、次の試合を考慮すると、魔術の手数はあまり見せたくない。
だが、体力消費もしたくない。
だから、剣術で、一撃で仕留める。
「くらえ!地獄の炎!」
おぉ、まさかの特級魔術。
なおさら長引かせたくはないな。
グイッ…
俺は足に力を込め、体を固定した。
そして、
「断地!」
剣力を飛ばした。
スパンッ!
カールが放った魔術はきれいに真っ二つになった。
「……へ?」
ドーーーン!
あまりの出来事に頭の回転が追いつかなかったカールは、そのまま攻撃が直撃した。
結果、ダウン。
「勝者、『影纏のレオリオス』!」
こうして1回戦が終わった。
俺はその後2回戦、3回戦に出場した。
結果は快勝。
魔術は見せまいと、ほぼ剣術のみで勝った。
ただまあ、流石に疲れた。
今日の試合はここまでなようなので、俺は帰った。
「ただいま~」
「おかえりお兄ちゃ〜〜ん」
「ゴへ〜ッ!?」
俺はカオルに飛びつかれた。
再会当初よりも心を開いてくれたのはありがたいが…
頼む…
今は飛びついてこないでくれ…
「おかえりなさい、レオ。晩御飯はできてますよ」
「いつもすみません」
「といっても、今日は屋台飯ですが」
俺は食事をしながらあることを聞いた。
「そういえば、手紙どうなりましたか?」
「今日の朝に出しました。多分明日の昼くらいにはドーラに届くんじゃないでしょうか」
「そうですか。ありがとうございます」
「お兄ちゃん。ドーラって誰?」
「俺の師匠で、ナナ師匠が好意を抱いている人だよ」
「はい…って、え!?なに暴露してるんですかレオ!?」
「アハハハ」
「コウイって何?」
おう、まだ知らないのか。
「…いずれわかるよ」
「…?」
翌日。
俺は準決勝に臨む。
対するは「逆手のリュー・ダリウス」である。
二つ名持ち…
つまり、神級の「何か」を使う。
それが魔術なのか、剣術なのか、体術なのかはわからない。
「それでは、準決勝、逆手のリュー対影纏のレオリオス」
………。
………。
「はじめ!!」
………。
………。
お互い見合った。
が、それは一瞬だった。
「断地!!」
俺は剣力を放った。
「流し手!!」
剣力は流された。
なるほど、流術か。
つまり彼は体術使いということか。
なら魔術だ。
「炎迎撃!」
この世界の術にはそれぞれ相性が存在する。
剣術は魔術に強く、体術は剣術に強く、魔術は体術に強い。
だから、俺は体術を使ってきた彼に魔術を使った。
キンッキンッ
……ん?
魔術が跳ね返ってきた。
…?………!?
「岩石壁!」
ドドドンッ!
危なかった。
少し反応が遅れていたらやられてた。
上級魔術を素手で跳ね返した?
んな訳…
俺は彼を見た。
両手には双剣が握られていた。
どこから出したんだ。
いや…そんなことは今はいい。
つまり、彼は剣術と体術の二刀流ということだ。
だが違和感がある。
彼は俺に多少の接近はするが、攻撃をしてこない。
なぜだ?
まさか……。
「影の領域、光襲の矢・雨!」
俺はわざと多段技で走りながら攻撃した。
そして、その攻撃はすべて俺に返ってきた。
やっぱりそうか…
彼は、流術と流剣術を極めたカウンター使いだ。
だから「逆手」か。
しかし、それだけではない。
構え方が流術と流剣術に当てはまらないものもある。
おそらくそれ以外の、「攻撃」の技も持っている。
なら…
ズズッ…
俺は足を止めた。
「…やりませんか?」
「……何を?」
「混術決戦…」
「…!?」
混術決戦。
主に殺し合い以外の決闘で用いられる単語。
近距離で魔術、剣術、体術を絶え間なく発動し続け、どちらが最後まで立っていられるかを競う。
彼、リューは非常に驚いた。
…が、その表情は笑みに変わっていた。
「いいねぇ…乗った!!」
俺とリューは互いに歩み寄り、距離10メートルぐらいの距離まで近づいた。
「おっとこれは…混術決戦だ!!!」
実況陣も観客も大盛りあがりだ。
「乗ってもらってなんですが、いいんですか?」
「安心しろ、俺は戯剣術も神級だ」
そうか、なら全力で…
………。
………。
………。
「あ…」
観客が食べ物を落とし、
地面についた。
ドーーーン!
カンッ!
カンッ!
ガンッ!
ここからは、2人の10メートル内の超近距離戦闘が始まる。
砂埃や攻撃の残像で、観客は状況を理解できてはいなかった。
俺とリューは、笑顔のまま、そこから1時間も戦闘し続けた。
「お兄ちゃん、3位おめでと~~」
結果、俺は負けた。
最後まで拮抗した戦いだったが、最終的に、俺の渾身の断地を受け流し、その流れのままリューは俺に戯剣術で食らわせた。
結果、治癒魔術で魔力切れとなり、俺は敗退した。
しかし、その後あった3位決定戦で勝利し、見事3位入賞。
景品は無名ではあるが、かなりの品物の剣だった。
俺はその剣をカオルにあげた。
「しかし3位ですか。やはりさすがですね」
「まだまだです。もっと技を磨きますよ」
「頑張ってください」
こうして俺の試合は幕を閉じた。
そして、今日までの試合を見たカオルは、兄の姿にさらなる憧れを持つのであった。




