青き血汐と緑の沙漠‐⑤
「――僕たちは植物じゃない、人間なんです!」
晒菜は意気揚々と言い放った。
「そうか……残念だよ……非常に残念だ……君と僕はどうやら分かりあえないようだね。どうやら私たちは対峙し退治し合わなければならないようだ。勝った方が正義だなんていう強引な思想の押し付け合いをするつもりはなかったんだが……どうやらそうするしかないようだな……」
一呼吸おいて、大鋸は……
「覚悟ッ!」
大鋸が晒菜に勢いよく飛びかかる。その手には大きな刀が握られていた。
「これでッ!」
晒菜はポケットにずっとしまっていた小刀、雄山院長からもらった知心剣を手にしていた。
「――これは知心剣といって殺すためではなく救うための剣だ。きっと役に立つはずだ」
晒菜は雄山院長の言葉を思い出す。雄山院長はきっとこの時のことを見据えて晒菜にこの刀を渡したのだと思った。
「大鋸さん! あなたを救います!」
――二人の戦いは一瞬で決着がついた。
身体能力の向上した晒菜とただの人間、大鋸とでは力の差がありすぎた。ひらりと大鋸の一太刀をかわした晒菜が大鋸の心の臓向けて一直線に知心剣を突き刺す。
「そうか……君は……碧血少年だったか……」
大鋸がぼそりとそうつぶやいて、その場に倒れこむ。それと同時に大鋸の緑色の肌は見る見るうちにもとの肌色へと変色していった。雄山院長が渡した刀は体内の葉緑素を取り除くためのものだった。
「これで……終わったんだな……」
晒菜は突然体の力が抜けるのを感じ、そのまま意識を失った。晒菜のその表情は、安堵に満ちていた。
安寧秩序の紊乱を正した晒菜、碧血丹心の士、晒菜升麻。
晒菜は世界を救った。
それだけが事実でありそれだけが全てであった。
碧血少年によって世界は一命を取り留め、緑一色だった世界にまた色が加わった。
これでめでたく晒菜の冒険は幕を閉じた。
「升麻君、後のことは私がやっておこう。升麻君、良く頑張った……」
三改木は晒菜の耳元で囁いて、晒菜の頬を撫でた。
「これで私たちも救われる……そして、私と君はこれでさよならだ……」
流涕、三改木も晒菜同様満ち足りた表情をしていた。
その後のことを晒菜は良く覚えていない。
気が付けば晒菜は午時花病院にいて、病室のベッドで横になっていた。
「あれ……俺は……」
晒菜には確かに記憶があった。
窓を開けると、一面、常盤色の真っ緑の世界が広がっていた。
という記憶が。
だから晒菜は病室のカーテンを思いっきり開け放ち、ドキドキしながらその窓から見える景色に目をやった。
だけどそこには普通の風景が広がっていた。
「そうか、俺は地球を救ったんだな……」
今まで散々見てきた窓からの風景が広がっていただけだったけれど、晒菜にはそれがいつもよりちょっぴり輝いて見えていた……
今までありがとうございました!少しでも楽しんでいただけたら幸いです。




