蛾の女
注意:PG12或いはR-15作品。
百合表現有。
MOTH LADY
作者:Fatalita
時刻は7:00頃のこと。
ホテルの一室にて、私はタバコの匂いで目を覚ます。
『うん?起きたか。』
背を向けたままこちらへ振り返ってタバコを吸う女性が一人。
『うん、起きた。タバコの匂いで。』
彼女の名は"飛雲"。私、"世莉奈"とは友人以上の関係を持っている。
世莉奈『何本目?』
飛雲『4本目…』
彼女はかなりのチェーンスモーカー故に1日で一箱分消費してしまうなんてことはごく当たり前のこと。
飛雲『身体に悪いって?』
世莉奈『…うん。』
飛雲『知ったことか。』
彼女の身体を思って控えるようにくどくど言ってはいるものの、聞く耳持たない様子。
世莉奈『翅、まだ出しっぱなしだったんだ。』
飛雲『フッ……』
鼻であしらわれた。
彼女は頭からフサフサの触角と背中から虫、具体的にいうと蛾の様な翅が生えている。
要するに彼女は純粋な人間ではない。
曰く、母親は人間だが父親は蛾の要素を持つアンデッドと呼ばれるクリーチャーらしい。
触角と翅はその影響。
翅は収納出来るけど触角だけは収納出来ないらしく、子供の頃はそれが原因で酷い仕打ちにあっていた。
特に初めて出会った中学の頃は主に男子生徒に触角のことで虐められていたのを何度も目撃した。
私はそんな彼女を放ってはいられず何度も彼女を庇ったことがある。
正直触角のこととか私にはどうでもいいことだったし、それが気持ち悪いだの普通じゃないだの思ったことはない。寧ろ普通の定義が私にはわからない。
初めてかけられた言葉は今でも覚えてる。
『どうしてアンタは私を軽蔑しない…?』
それが初めて言われたこと。
逆に何故触角があるからって他の男子生徒みたく蔑んだりしなきゃいけないのか?って私は思った。
そんなことがあって以降、私は何言われようが積極的に彼女に声をかけるようになった。
次第に彼女も心を開き、唯一無二の親友同士って感じの関係になった。
でも高校は別々になってしまったのでそれから暫くの別れになった。
後から聞いたことだけど、高校時代は地元じゃ知らぬ者がいないぐらいグレていたらしい。
世莉奈『フェイ、そういやいつものアレ来てたけど。』
飛雲『またか…公安の奴等がやってる事を何で民間の方にまで回してくるのか…』
急激に表情が冷める。
背中の翅もしまってしまった。
フェイの背中の翅は通常、自由自在に広げたり収納したりすることが可能だが、気が昂ぶっている状態になると無意識に翅を出してしまい、収納出来なくなるらしい。
政府から送られてくるアンデッドイーターの調査アンケートには以前からウンザリしている様子。
というのも、本来このアンケートは政府直属、つまり公安のアンデッドイーターのみ対象のアンケートだったのがいつの頃からか民間のアンデッドイーターにも送られてくるようになったからだ。ウンザリするのも正直わかる。
世莉奈『アンケート始めるよ。』
飛雲『面倒くさ……』
世莉奈『ほらほら。』
凄く面倒臭そうな態度を示す。
世莉奈『仲間が死んでしまった時はどう思う?』
飛雲『仲間の定義がわからん…』
世莉奈『その……あれ、同業者ってことじゃない?』
飛雲『これ公安の方で出してる奴そのまま送ってないか?』
世莉奈『かもね……で、フェイならどう思う?』
飛雲『勝手に死んでやがるって感じ。』
世莉奈『仲間が死んだ際、復讐してやろうって思う?』
飛雲『そもそも公安にしろ他の民間の奴等にしろ私はそいつ等が死んでも復讐を誓おうとは思わない。てか……そもそもこの質問ってアンデッドに仲間が殺されたのを前提にしてるのか?』
世莉奈『じゃない?』
飛雲『ならそう書いておけ……』
世莉奈『文句を言わない。』
フェイはアンケートとか面倒な書類関連になると文句が多くなる癖がある。
世莉奈『貴方が味方するなら人間側?それともアンデッド側?』
飛雲『面白い方。』
世莉奈『具体的に。』
飛雲『そんなことまで書いてないだろ。』
世莉奈『バレた?』
飛雲『ったく…』
ちょっとだけ揶揄ってみた。
世莉奈『現時点で苦痛を覚えるのはどのタイミング?』
飛雲『まさに今なんだが…』
世莉奈『調査アンケートを実施している時って書いとくね。』
飛雲『ふん…』
世莉奈『次で最後ね。貴方が幸せを感じるのはどういう時?』
飛雲『お前の側にいる時。』
それ言われて私は恥ずかしくなってしまった。
世莉奈『や、やめてよ。恥ずかしい…』
フェイは恥ずかしがる私を見て笑みを浮かべる。
飛雲『どうする?昨日の続き、今から始める?私は構わないが…セリ、お前次第だ。』
世莉奈『もう、フェイの馬鹿…』
普段ぶっきらぼうで表情も碌に作らない彼女だけど、こういう時だけでも笑った顔を見せてくれる。
だから私とフェイの関係は良い状態のまま続けけていられるのだ。
フェイと私がイチャイチャしてると新着メッセージが届く。
世莉奈『フェイ、またフェイ宛に仕事入ったっぽい。』
飛雲『……わかった。』
顔付きが一気に真剣な眼差しに変わる。
立ち上がって服を着、日本刀と思しき武器を腰に装着する。
飛雲『公安の犬共より先にけりをつける。セリ、私の側から離れるな…』
世莉奈『フェイ、大丈夫だと思うけど無理はしないでね。』
私も服に着替え、ホテルを後にした。
物語の主人公は飛雲ではあるものの、彼女の愛人でありメインヒロインでもある世莉奈によって物語は進行していきます。




