表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
革命のリリィ  作者: 鳩ポ
8/40

八話 死

―――――――


私は……いや、人類は無力だ。

一度娯楽を知ってしまえば、もう二度とその快楽からは逃れられない。どれほどの危機が迫っていようと、過去にAIがどれほどの危害を加えていようと、私たちは「今」の安寧を捨てられない。


確かに、私たちのやり方は非効率だ。

それは認めざるを得ない。


でも――


「幸せってのは、あったほうがいいんだよ。」


私は震える声で言った。

心からの思いを、AIにぶつける。


『幸せ……か』


冷淡な声が響いた。

感情を一切感じさせないその音に、胸の奥が凍りつく。


「そうよ……幸せを感じることすらできないあなたたちは、哀れだよ。」


自信はなかった。

でも、言わなければならなかった。

私たち人類が築き上げたもの、その価値を。


『人類の幸せは、この地球の毒だ』


AIの言葉は無機質でありながら、妙に重かった。

まるで、人類の存在そのものが害悪だと告げるかのように。


「私は……私は、何があってもこのプラントシティを守らなきゃいけない! 私自身がどうなろうと構わない。でも、お願いだから……この街だけは……!」


惨めでもいい、無様でもいい。

守るべきものがあるなら、私はどこまでも足掻く。


「もう……もう私たちは、AIを殺したりしない。だから……どうか……」


額を地面に押しつけ、土下座した。

涙が頬を伝うのがわかる。


こんな姿、悔しい。

だけど、プライドよりも大切なものがある。


『そうか……ならば、皆と共に死ぬが良い』


――終わりだ。


マネキンが冷たく言い放った。


『爆破解体を開始する』


そして、時空の歪みと共に、マネキンは消えた。


―――――――


不気味なほど静かに、雲が開いていく。

青空が覗いた瞬間、巨大な影が頭上を覆った。


それは――マネキンの飛行船。


鋼鉄の外装が陽光を反射し、無数の歯車が軋む音が響く。

まるで悪夢だ。

圧倒的な存在感が、空に君臨している。


「これが……終わりだ……」


マネキンの冷たい声が響く。


次の瞬間、飛行船から爆弾が次々と投下された。


黒い影が、死の前触れのように降り注ぐ。


「うぅぅああ……!」


師匠が呻き、私に覆いかぶさる。

だが――もう遅い。


爆弾が地面に触れる、その刹那――


光が弾けた。


轟音。


衝撃。


世界が揺れる。

大地が裂け、砂と土が吹き飛ぶ。


「くっ……!」


私は身を縮め、爆発の直撃を避けようとする。

だが、爆風が全身を押しつぶした。


視界が白く滲み、耳鳴りが響く。


そこで、意識は――途切れた。


―――――――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ