十話 リトライ
「お前が砂漠にできたクレーターの中で倒れているのを見つけた。装備を見れば分かる。お前、戦闘員だろう。」
男は鋭い目で私を見据えながら問いかけてきた。
「……はい。」
自分でも驚くほど、声が弱々しかった。何も守れなかった自分が、戦闘員であったことすら恥じるほどに。もう、そんな過去に目を背けたいと思っていた。
「そうか。戦闘員だったなら、体調が戻り次第、うちの部隊で働いてもらうことになる。」
「……何勝手に……。」
抵抗する気力さえ湧いてこない。言葉は小さく漏れたが、それ以上は何も言えなかった。
「なりたくないのか?お前の顔を見た時、AIに恨みでもあるのかと思っていたが……見当違いだったな。」
デリカシーの欠片もない物言いに、思わず腹立たしさを感じたが、そんな感情に構っている余裕はなかった。今は知るべきことが多すぎる。
「一つ……聞きたいんですけど、私の他に誰か……他に誰か、一緒に連れてきた人は……いませんか?」
声を震わせながら、私は勇気を振り絞って質問した。心のどこかでは、もう答えは分かっていた。
「お前一人だ。ほかに誰もいなかった。」
その答えが返ってくると同時に、覚悟していたはずの言葉が心に重くのしかかる。胸が締めつけられ、目頭が熱くなるのを感じた。分かっていたはずなのに……やはり、涙が溢れて止まらない。
「……そう、ですか……」
涙を流し、鼻をすすりながら沈黙する私に、男が静かに話しかけてきた。
「もう一人いたのか……戦友か?」
「いえ……私の師匠です。爆発の瞬間、私をかばって覆い被さって……」
「なるほど、そういうことか。」
「……そういうこと?」
「お前が倒れていた周りに、シールドを張った痕があった。おそらく、その師匠が覆い被さったときにお前にシールドを使ったんだろう。」
その言葉を聞いた瞬間、私は一気に胸が締め付けられ、申し訳なさでいっぱいになった。師匠が死んだのは私のせいだ。もしシールドを自分に使っていれば、今生きていたのは師匠だったかもしれない……。
「……私のせいで、師匠は……」
その思いに耐えきれず、顔を伏せて涙がこぼれ続けた。
「そんな顔をするな!」
突然の厳しい声に、私は驚いて男の方を見上げた。彼の表情は真剣そのもので、私の胸に響いた。
「お前は師匠の死を無駄にするのか?師匠はお前に託したんだろう。お前が、師匠の思い描いた未来に連れていくんだよ。」
その言葉が、私の中で何かを突き動かした。ずっと自分を責めていたけれど、師匠が私を生かしたのは、彼の意思だった。彼は、自分の命をかけて私を守り、未来を託してくれたのだ。ならば、私はその意思に応えなければならない。
そうだ……私は勘違いしていた。私が生き残ったのは、師匠の選択だったんだ。
「……そうだ……師匠は、私に未来を託したんだ……」
私のやるべきことが、今はっきりと見えた。師匠の思い描いた未来に行くために、私は戦わなければならない。
「私、戦います。」
たとえ、手足が無かろうとも。私は、この体がどうなろうと、最後まで戦うことを決めた。師匠の意思を背負い、AIを倒し、この世界に未来を取り戻すために。




