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生い立ち

レオを引き取った公爵家にも事情があった。

次期当主である長男と次男の素行不良である。


特に長男がひどかった。後継ぎという身で誰も強く出られないのをいいことに好き放題し、癇癪を起し使用人に辛く当たる。次男は勉強を抜け出してはお絵描きばかり。

ふたりは矯正のため貴族子弟が通う寄宿学校に入れられた。


入れたはいいものの長男は問題を起こしたびたび家の者が呼びだされ、次男は講義を抜け出して落第する始末。そこで目を付けられたのがレオンである。

レオはふたりのお目付け役兼お世話係として寄宿舎学校に送られた。このままでは伝統ある我が家の威信にかかわる。問題を起こす前に止めるのがお前の役目だと。


まだほんの少年でしかなかったレオには酷な話である。ところが、レオはこの役目をうまくこなした。ふたりにこき使われながらも手を抜くところは抜き、肝心なところは駆け引きで抑える。加えて学業の成績は常にトップであった。素行不良の兄弟とは違って教師の覚えめでたく、また長男の強硬を抑え込める稀有な存在として重宝されていた。


そうしてなんやかんやありながらも高等学院まで進んだとき、レオは田舎から出て来たアルフレッドと親しくなった。友人は作らない様にしていたがこのアルフレッドとだけはなぜか気が合った。レオが仕える長男様からの嫌がらせもうまくいなすだけの才覚もあった。もっとも、この頃には長男様は女遊びに目覚めるようになり、用事のない限りレオを呼び出すこともなかったが。比較的自由な時間を持てるようになったレオはアルフレッドとつるむことが多くなった。次男は相変わらず学業には一向に身を入れず絵ばかり描いていた。


一足先に無事に学校を卒業した長男様は成人し社交界デビューを果たした。

長年有力議員貴族の一角とし権勢を誇っていた父親は、せめて政務の手助けくらいはと期待していたが、相変わらず問題ばかり起こしていた。


事は翌年に起きた。


レオの学校卒業後、公爵家にある一通の手紙が届いた。

レオを近侍として仕えさせよという召集令状だった。交差する二本の剣に龍が巻き付いてた。ドーリア王家第二王子の紋章である。

父親は飛び上がって喜んだ。王族の一角に食い込める又とないチャンスである。宮廷に上がるにあたって無冠ではいけないとレオの身分を考え始めた。

それが長男の不興を買った。


この家を乗っ取ろうとしている、と攻撃の矛先はレオに向かった。

レオは招集は辞退するし身分もいらないと言ったが長男の怒りはすさまじく刃物沙汰にまでなった。(その理由は長男が当時付き合っていた愛人の一人がその話を聞いてレオに乗り換えようとしたからである。)


この結末は父親が引退し、長男が正式に爵位を継ぐということで何とか治まった。公爵を引退した父親はチェスターと名乗るようになった。次男はもともと向いていなかった貴族社会に嫌気がさし、当時付き合っていた恋人と駆け落ちし行方知れずになった。


レオもこの機会に家出し、船乗りになった。


爵位を継いだ長男はいっとき大人しくしていたが公爵としての実務能力には甚だ乏しく、常に父親が目を光らせていなければ名門としての威光は地に落ちていただろう。

チェスター卿は隙あらば息子をスキャンダルか病気ででも引退させ、レオを指名するという野望を捨ててはいないのである。こうして機会があるとレオを呼び出し歓待する。


「・・・頭も、なかなか大変スね」

何と言っていいかわからないクロウが何とかひねり出した語彙少ない貧相な感想に、濡らしたタオルで頬を冷やしていたレオは小さくふんと鼻を鳴らしただけだった。



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