まんぷく亭営業しています
昔書いていた話をリニューアルして新たに投稿始めました!
徐々に上げていくので是非読んでいってください。
東の大陸で1、2を争う大国であるガルシア王国。
初代王は厄災の魔王を打ち倒した異世界の勇者であり、その妃は精霊女王だと言われている。
そのためガルシア王国で有名なのは、異世界の知識が組み込まれた国の政策である。
その中でも
他の国とは比べられないほどに完備された上下水道設備とゴミの処理のおかげで美しく臭いのない街並み。
国民一人一人の識字率と計算能力の高さは学びたい者に無料で教える国営の学び舎のおかげ。
王政のため貴族と平民の身分の差はあるが、平民に不当な扱いをした貴族へ厳しい罰則が科せられる法律のおかげで、悪徳貴族は捕まりやすく苦しむ平民が他の国に比べて圧倒的に少ない。
そして、他種族を差別する事を固く禁じているためエルフやドワーフなどと言った人族以外の種族も多く住んでいる。そのおかげで、その種族でしか作れない特殊で希少な物が多く出回っているのだ。
そんな恵まれた国に住む、少し特殊な出生の姉妹の恋物語。
ガルシア王国王都、第三騎士団の建物の隣に立つ小さな食事処は周りの店とは違い土日だけが営業日という少し変わったお店がある。
変わっているのはそれだけではなく、提供されている料理も他では味合う事が出来ない。
とても言葉では言い表す事が出来ないほど美味しいと評判なのである。
お店の名前は【まんぷく亭】。
私、ソフィアと妹のレティシアの二人姉妹が経営しているお店は今日も沢山のお客さんで賑わっています。
そろそろお昼の営業時間が終わりに近づいて来た。
時間を確認しながら料理を作っていると、配膳担当のレティシアが軽い足取りで歩みよってくる。
「どうしたの?レティ」
私と同じピンクゴールドの髪を大きめのリボンでポニーテールに結び、私お手製のフリルエプロンを身に纏うレティシアは姉と言う贔屓目に見なくても美少女と言って過言ではない。
「お姉ちゃん、想像以上にお昼のお客さんが多くてストックのお肉が足りないかもしれないの」
「あら、確かに今日もとても繁盛していたものね……どうしましょう」
お客さんの来店人数が毎週増えてきているから先週より多めに設定して準備していたのに、それでも足りなかったなんて詠みが甘かったみたいだわ。
「今からならコカトリスくらいなら“かって”これるけど」
何か他の料理にしようかと考えていると、レティシアが新たにお肉を用意しようかと聞いてきた。
確かに今店にある食材の量では、この店に来てくれる人達のお腹を満足させてあげられそうにない。
「お願いしてもいい?」
「うん、良いけど」
レティシアの金色の瞳がシンクに積み重なっているお皿に向けられる。
「お店の事は私に任せてレティはお肉お願いね」
「うん!分かった、行ってきまーす」
「行ってらっしゃい」
一人でお皿を夜の営業時間までに洗って他の料理の仕込みをするのは大変だけど、お肉がないとうちの料理を楽しみに来てくれるお客さんに悲しい思いをさせてしまう。特にうちの店に来てくれる人達はお肉が大好きだからね。
「よし、もうひと頑張りしましょう」
準備を終えたレティシアが常連さんに気をつけて買い出しに行くように言われているのを聞きながらテキパキと片付けを始める。
「すまない、会計を頼めるか?」
「はーい!ただいま」
手を洗いレジに向かうと自分よりだいぶ背の高い男性が目に入る。
赤色のサッパリとした短髪に引き込まれそうな琥珀色の瞳、そして何より筋肉に覆われた厚い体格。
「本日のお会計は銀貨1枚銅貨3枚です。団長さん、今日のお味はいかがでしたか?」
「今日の料理もとても美味かった、特に甘じょっぱい味付けが格別だ」
今日のメニューはチキン南蛮定食と唐揚げ定食だった。
彼はチキン南蛮定食を頼んだのよね。
「ふふっ、お口に合って良かったです。またいらしてくださいね」
「もちろんだ、また来る」
今日もとても素敵だわ。
第三騎士団のルイス・グラシア騎士団長。
この国では珍しいガッシリとした体格に少し強面だと言われているけど端正な顔立ち、言葉数は少ないけどこちらを度々気遣ってくれる言動が優しい方。
第三騎士団の建物が隣にあり、騎士団内の食堂が土日お休みの為【まんぷく亭】でのお客さんは99%が騎士である。
このお店が開店してからほぼ毎回昼か夜のどちらかに来店してくれる団長さんを見るのが私の心の癒やしだ。
「よし!レティが帰ってくる前にスープの補充と、お米を炊いて」
心が癒やされた私は夜の営業に向けて動きだした。
「お姉ちゃんただいまー!」
1人と4体が帰宅する。
「レティおかえりなさい。その様子だとお肉は手に入ったみたいね」
レティシアの笑顔を見れば、お目当ての物以上の物が手に入ったのが分かった。
店の中にフヨフヨと浮遊する4体のレティシアの従魔も主の真似をしてドヤ顔をしているので、余程良いものを“狩って”来れたのだろう。
「見て見て、今回の成果!帰りにギルドによって来たから綺麗に解体されて直ぐに調理できるよ」
「あら、良かったわ」
可愛い見た目とは裏腹にレティシアはAランクの冒険者なのである。
冒険者ギルドではF〜Aまでランク付けされており、Aランクの上にSランクも存在するが、Sランクになる為には国一つ救うくらいの事をしないとなれないのでAランクが実質一番上である。
因みにこの世界でSランクの冒険者は2人しか存在していない。
そんな出来た妹とは裏腹に姉である私はびっくりする程の運動音痴なため冒険者など夢のまた夢、来世があったとしてもなれる気がしない。
「解体はね、ギルドマスターが暇だからってやってくれたの」
「ギルドマスター直々に……」
綺麗に切断された断面図にギルドマスターの腕が良い事が見て取れる。
相変わらず可愛がられているようで姉としては安心だからいいのだけど、いくら暇だからって普通ギルドマスターが直々に解体をする事はないのよ。
「ルビー達が戦いたくてそわそわしていたからゴブリンの集落を1つを殲滅させて来た、って報告したらそのお礼だって言って無料でやってくれたよ」
ルビー達とは先程からレティの頭や肩に乗っている4体の妖精だ。
赤色が炎の妖精ルビー
青色が水の妖精ラズ
緑色が風の妖精エメ
黄色が土の妖精リン
「ゴブリンの集落を殲滅ね。それはギルドマスターが喜ぶわけだわ」
ゴブリンは1匹見かけたら50匹はいると思えと言われるほどの繁殖力の強さを持ち、1週間後には1.5倍に数が増えるので国やギルドとしては見つけしだい討伐してほしい対象だ。
弱い魔物といえど増え続ければ多勢に無勢なんて事もあり得るし、戦うすべの無い者にはゴブリンでも十分脅威なのだ。
だけど、厄介なことにゴブリンはなんの素材にもならず、不味くて食べることが出来ない魔物のため、冒険者は基本見つけても狩ることがない。多少国から報奨金が出たとしても割に合わないからだ。
損得勘定なしにゴブリンの集落を殲滅するなんてレティシアくらいだろう。
「皆、沢山戦えて楽しかったね。頑張ったご褒美あげる」
「「「「キューー!!」」」」
嬉しそうに可憐な羽を羽ばたかせて喜びを表すルビー達にレティシアはお手製のチョコレートケーキを一つずつ渡していく。
「あ!私もレティのケーキ欲しいわ」
ルビー達が幸せそうに口いっぱい頬張って食べる姿に私も食べたくなってしまった。
「良いよー」
「ありがとう。あいかわらずレティの作ったスイーツは美味しいわね」
疲れた身体にチョコレートケーキのほろ苦い甘さが染み渡る。
カロリーが気になる所だけど夕食を減らせば大丈夫よね。
「お姉ちゃんだって作れるでしょ。それに比べて私はスイーツだけで他の料理は下手くそなんだけど」
確かにスイーツはプロ級に作れるのに、レティシアは食事系の料理を作るのが苦手だ。
「それでも最近は2人前なら上手に作れるようになったじゃない」
「分量を完璧に量れる量ならなんとか出来るようになってきたかな。でもまだまだお姉ちゃんを手伝える程ではないよ」
「そんなこと無いわ、レティが綺麗にお肉やお野菜を切って手伝ってくれるからとっても助かってるわ」
しょんぼりと落ち込んでいるレティシアの頭を撫でる。
気持ちよさそうに目を細める姿はまるで子猫のようで愛おしい気持ちがこみ上げる。
「レティいつもありがとうね」
「えへへ、お姉ちゃんもいつもありがとう」
はにかむ妹の笑顔は控えめに言っても天使なのだけど、私ってシスコンかしら。




