17-1:嘘つきⅠ
17-1:嘘つきⅠ
もとより職業柄、王太郎の生活は不規則であったが、体内時計はむしろキチンと働いていた。
朝の気配を感じて、凹太郎は目を覚ました。
睡眠時間としては昨日は疲労度が高くて、12時間も寝ているので、12分には眠っているのではあるが。
薄明るく天井は発光している。
仕組み上、時間で変わる照明は起きろとも言っているようだった。
壁にある時計表示を見る。
それはデジタル表示で文字が浮かび上がっているように見えるタイプのものだ。
昨日寝る前にその存在に気づいた。
この世界の時計表記を学んだから気づけたのだろう。
凹太郎は立ち上がった。
風呂は入っておこう。
凹太郎の意識は目を覚ましたばかりにもかかわらず、起きざまにハッキリとしていた。
ただ、たんたんと生活を『処理』するモードになっていた。
その脳裏ではこの後のことを何度もシミュレーションしている。
何事も順序は大切である。
考えうる最悪。
その可能性は考えておいたほうが良いと感じていたからだ。
凹太郎はココに来てからのことを思い返す。
案外、異世界なんて慣れてしまうものだな。
そんな感想を零した。
そういう作品なら……。
凹太郎はシャワーを浴びながらなんとなしに思った。
風呂に入れば読者サービスの1つくらいはありそうだが。
20歳も過ぎれば、そういう期待を現実に求めることすらありえなくなる。
そういうのは虚構であるから楽しく、虚構であるから許されるもの。
シミュレーションの傍ら、凹太郎はそんな浅い思考を挟んでいた。
だが。
仮に今の世界よりもっと、いわゆるファンタジーのきちんとした異世界に呼び出されていたらどうなっていただろう。
凹太郎はきっと、自分では生き残れないだろうという予測がつく。
ココにはシャワーもあれば寝床もある。
ほんとに良いとこに呼ばれたもんだ。
しかし、この後の選択を誤れば凹太郎の死は確定。
凹太郎は体を拭きながら、想う。
一度は死んだと確信した命だ、おまけにしては良い時間ではあったさ。
凹太郎は服を着、会議室兼休憩室に向かった。
*
そこには、ミゴ、ポワポ、ヂィギィ、メパ、ガムニ、テージの6人がいた。
早朝から出勤とは大変ですね。
凹太郎は心の中でそう思いつつ、おはようございますと挨拶から始めた。
なんと言っても今日は王殺しの容疑者ルラをココに預かるのだ。
そのため開始時間が早いのだろう。
ココの労働契約がどうなってるのはわからんが……。
中央の長テーブルには文字のプリントされている紙が何枚か広げられている。
文字は読めないが、おそらくルラを預かる上での法やらの資料だろう。
ポワポがウェカポの入っているカップを凹太郎に渡してくれた。
ありがとう、と。
凹太郎はソレをすする。
やはりコーヒーとは似ているようで違うな。
凹太郎はリリンに振舞われたソレを思い出しながら飲んだ。
ルラを預かる行程の確認をミゴたちは話している。
凹太郎は気まずさを噛みしめながらもソコに割っていった。
「ミゴさん。
お話の途中すいませんが、先に1つご報告しておきます」
凹太郎の歯切れの悪い雰囲気に気づいてか、ミゴもそれに話を遮るでもなく耳を貸した。
「ええ、と。
まず、ルラさんのことに関してはそのまま続けていただいて構わないんですけども、その……昨夜の件の後、【ノロイ】という説は完全に無くなりました」
ミゴは無表情にも驚きが隠せないようで、胸元で持っていたカップを腹のあたりまで降ろした。
「どういうことだい!?」と、先に声を上げたのはメパだった。
ガムニ、テージも同様の想いを隠せない表情をしていた。
ヂィギィの眉間にはしわが寄っている。
ことと次第によっては、という睨みをしている。
ポワポはそもそも事態が呑み込めていないという表情だ。
「説明は二度手間になるのでアルディオさん、モンディさん、そして、ルラが揃ってからさせてください。
……そうですね。
それで納得するのは難しいかもしれませんので少しだけ。
昨日のことなんですが、18時ころになりますね、ミゴと一緒にこのラボに私はいたのです。
その時、ちょっとありまして、私は『リリン・シャトワーズ』と接見する機会を得たのです」
バシャッ……水の弾ける音がした。
皆の視線が向かうと、ポワポがウェカポ入りのカップを落としたのだとわかった。
「あ、ごめんなさい」とポワポは近くの棚にあった布巾ですぐに清掃を始めた。
テージとヂィギィもそれを手伝う。
ガムニやメパもテーブル上のプリントをまとめたり、何かしらしようと動いている。
ミゴはそれを横目に凹太郎の隣まで退避し、話をつづけた。
「オータロ。
確認ですが、『リリン』は本当に本物の『リリン』でしたか?
昨夜のことは私も見ていましたから、一定の理解は示します。
ですが、ことココで『リリン』という名が出てくるとやはり真実の相当性はだいぶ薄い。
流石にその名前が出てくると、ここのラボのメンバー、いえ、この国の人は何をおいてもの関心事。
私も漏れず、です。
詳細は今は結構ですので、少し、その時のことを話してもらえませんか?」
ポワポが凹太郎の言葉に先んじて大声を上げる。
「まってまって!!!!!
私も! 私も聞きたい!!!」
テージやガムニも「俺も!」「私も!」と続いて言う。
ヂィギィ、メパも同様なのだろう目を輝かせてコチラを見ている。
それはそうなるだろう。
凹太郎はもちろんそうなるとわかってはいた。
「そうですね。
では、今は少しだけ。
ミゴさんの言う通り、真実、リリンであったかという証明は難しい。
私の話は鵜呑みにはしないで、判断は各自に任せます。
ちょっと話す順序を考えるので、その間みなさん準備していてください」
凹太郎はウェカポを飲み干し、各自の準備ができるのを待った。
3分もしないうちに皆がソファに着席している状態になった。
凹太郎が司会のような立ち位置で出口と反対側の長テーブルの端に立っている。
凹太郎から見て左にミゴ、ヂィギィ、メパ。
右にテージ、ポワポ、ガムニが座っている。
凹太郎は昨夜の出来事について、情報を限定して話し始めた。
リリンの姿。
リリンの声や印象。
どんな場所だったか。
そこまで話して、ミゴから質問が出た。
「すみません、これだけは聞いておきたいのですが、リリンはあの伝説の事件について何か話しましたか?」
凹太郎としてはソレは後にしておきたかったが、他でもない、ミゴからの質問ならばできる限りで答えよう。
「具体的な……事件の真相は話してもらえませんでした。
しかし、ソレが今回の事件に関係しているのは確かです。
本人が間接的にそのように言っていたので。
……確かだと、私は考えています。
すみません、今はここまでとさせてください」
凹太郎はおもむろに両手の甲を、皆に見えるように示した。
「左手の甲の魔紋。
これはアルディオさんとの【任命】によるもの。
右手の甲の魔紋。
これはリリンとの間での契約によるものです。
今、私が示せるのは、ここまでです」
アイザック・ゴーマの小説挑戦作だぜ。
誤字、脱字は随時修正していくぜ。
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