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1.製造番号 00328

『製造番号 00328。個体名・ツムギ。規約違反により、今回の報酬はなしとする』


 ふわふわの雲の上、どこからともなく響く警告に私は小さな手足をバタバタと動かした。

 同時に背中の羽根も動く。


「これには事情があるんです。待ってください。このままだと全然ストーンが貯まらないのですー!」


 大切に詰めた瓶の中身。まだ100個も溜まっていない、デコボコした形のストーン。

 一つ一つが輝いて綺麗だけど、全然足りない。


 シュトリさまが「早くたくさん集めてね」って言っていたのに、もうずいぶん長いこと新しいストーンが増えていない。


 天の声は、どこか呆れたように言った。


『ツムギ。本来ならば、しなくていい行為をしたのは誰ですか?』


「うう……。どうしても、あのワンちゃんを助けたかったのです。一日でも長く生きられたから、あの家族は笑顔で見送れたのです!」


『黙りなさい。今回のあなたの役目は他にあったでしょう』


「……はい」


『次回はこのようなことがないように』


 何を言い訳しても、天の声はもう返ってこなかった。


「シュトリさまは許してくれるかなぁ……」


 私は胸元に冷たい瓶を抱え、肩を落としながら雲から吊り下がった階段を降りていった。


 *   *   *


「おかえりなさい、ツムギお姉様!」


 ブロンドの髪を靡かせ、ノイルが私の身体を抱き上げた。

 弾力のある胸元にぶつかり、私は釘付けになった。……ぺったんこの私と全然違う。


「今回の報告はどうでしたか?」


「またダメだった」


 弱々しい声で伝えると、周りにいた天使たちが集まってきた。


「またダメでしたか!」


「気を落とさないで。お姉様はそれでいいのです」


「ずーっとこのまま、可愛らしいお姿でいてください」


 みんな私より後に生まれたはずなのに、成熟した体つきをしている。私は彼女たちの腰ほどの背丈しかない。


「それじゃあ、落ちこぼれなの!」


 人間界で役目を果たし、報酬のストーンを一定まで貯めることで成長できると言われている。

 私だけがいつまでたっても子どものようだった。


「シュトリさまがね、大人の姿になったらとっても良いことがあるよって教えてくれたのに……」


 涙があふれそうになって、目の前の胸に顔を埋めた。……やっぱり、うらやましい。


「……シュトリ様ですか……」


「シュトリ様ね……」


 みんな歯切れが悪くなりながら、シュトリさまの名を口にした。ノイルが私の頭を撫でながら、優しい声で諭してくる。


「お姉様はシュトリ様とお会いするのをやめませんか。あの方は上位の天使ですし……何か報告があれば、手紙を出しますから」


「なんで? このあと呼ばれてるんだけど」


「……」


 石のように固まったノイルは、周りの天使たちに叫んだ。


「あなたたち、お姉様は体調不良ですわよね!?」


「はい。今日はベッドでゆっくり休まないと」


「とても動ける状態ではありません!」


 私は首を傾げる。


「元気だよ?」


「いいえ! 本人が気づいていないだけで、無理をしてはなりません。絶対に!」


「そうなの?」


 成熟した天使である彼女たちのほうが物知りだ。どうやら私は具合が良くないらしい。


「今日は絶対にお家から出ないでくださいね!」




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