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魔王様、顔怖いです。  作者: ふかづめ
生活の質を上げよう
95/142

第95話 最強の宴会芸

 ポッドの枝に腰かけて運ばれわかった事、それは未知の移動方法による恐怖と振動。そして尻がもう一段割れるのではと思える程の衝撃と浮遊感の連続で、笑顔で周りを見通していたドーリーが凄いという事がわかった。


 気を取り直して送ってくれたポッドにお礼を言って風呂場へといけば既に今日の宴会に備えてサウナで汗を流している者がいたり、真っ赤な顔になりながら熱いお湯に肩まで浸かって我慢大会のような事をしている者達がいたりと賑々しくやっている。


 用意したい物があるのでサッと髪を洗い、石鹸で全身を洗い流して軽く湯に浸かって終わりという烏の行水のような入浴を終わらせて洞穴へと急げば、スライム君が既にあれこれと用意をしている。近くには他の料理班の子もあれこれと手を動かしていたり、自分の料理を味見する姿も見える。


「お疲れ様みんな。スライム君お待たせ、それじゃあ始めようか?」


 ポンポンと跳ねる魅惑のボディを一度撫でて始まるのは、ひたすら野菜を切る作業。今日は俺が最初にグスタールに行った時に購入した小麦粉を大量に使用してしまおうとスライム君と話し合い、料理班の子達も惜しげもなくそれを使った料理をしている。今回用意している物も、小麦粉と言えば……とスライム君に相談した時に彼が了承して協力してくれたからこそこうして準備が出来ている。


「このくらい……、このくらい……」

 しばらく俺とスライム君、途中からお手伝いをすると息巻くように加わったティエリが野菜の大きさを確かめながらゆっくりとだが、三人でそれぞれ野菜を切り続けていき、女性陣のお風呂の時間が始まる頃に入れ替わるようにやってきたペイトンに指示を出して様々な食材が入ったボウルの中をかちゃかちゃと混ぜて貰う。


 大量に出来たその生地のタネを鞄にしまい込み、俺の準備は完了。更にスライム君が何かをやっていたので、そちらは今日のお楽しみにしておくとしよう。


 ほかほかとした様子の、頭から湯気が昇っていると思わせるほどにお風呂で温まってきたゴブリン達が走ってやってきたので、フォニアに頼んで用意しておいた物を確認した後に宴会場へと向かう。

 既に宴会の席が用意され始めているが今日はそちらは手伝えない。何せ、これから一つ大掛かりな物を準備しないといけないからだ。


 鞄から鉱石を積み上げて手頃な高さにした後にフォニアから渡された鉄板を設置して、準備も完了。

 適温になるように調整をしつつ、試しに自分の分を焼いてみる事にしよう。鉄板で料理をした事はあまりないのでぶっつけ本番は怖い。


 準備をしたのはお好み焼き。

 鰹節も青のりもない、その筋の人達が見たら暴動が起きるかもしれないが、わざわざ鉱石でヘラを作ったりと、食べたい欲求に負けて色々と努力はしたのだしこれ以上はどうしようもない。無いものは無い、仕方がないのだ。


 鰹節の代替品は見つける事が出来た。スライム君が作った魚の保存食を薄くナイフで削り出して炙ってみたところ、いい味と風味を出してくれたのでそちらを使用する。


 暫く様子を見ていても火加減に問題は見当たらないので、一人前の生地を鉄板の上に広げるとたちまち香ばしい香りと賑やかな音が響き始めた。裏面が焼けるまでの時間を大体ではあるが計りながら様子を見て、後は待つ。頃合いを見計らって生地の上に肉を乗せるように敷き、裏返すといい感じに焼き目と焦げ目がついている。


 それから数回ひっくり返してから本命のソース、これ程に再現できるとは思っていなかったが、俺のあやふやな説明で現代日本で売っていそうなお好みソースを造り上げるスライム君。彼こそが創造神、ショタ神様なんていなかったんだ。


 そう考えていたら天罰と言わんばかりにちくりと腕輪に電流が走ったような気もするが、気にせずソースを塗っていく。刷毛のような物はないので、こちらは木べらで対応をしてみたが問題は無さそうだ。

 そして問題となるマヨネーズ、塩分や油分、そしてある程度の濃度を維持している酢を使っているから大丈夫だとは思うが不安も多少ある。なので、先に俺だけ食べて調子がおかしくなったらそこで使用を中止しようと思ったのだ。

 サルモネラ菌の潜伏期間を全く覚えていなかった自分のバカさ加減と、出来上がった物を味見して大丈夫だと言わんばかりに触手で親指を立てるポーズを再現していたスライム君への絶大な信頼からなるまさに自爆技だ。


 試しに、カットした野菜をマヨネーズにつけて食べてみる。食べ慣れた物からは大分風味や酸味が違うがうまい、これはこれでいいな。ソースの方と合わせて舐めてみたが、絶妙な旨味で期待が高まる一方だった。


 そうこうしている内に完成するお好み焼きにマヨネーズやソース、魚の燻製を削り出した物をかけて完成。焼けるソースの香りで食欲が限界を超えそうだが、フォークで中を検めてみても生焼けになっている部分は無さそうだし第一号としてはいい出来。


 たっぷりとソースなどを絡めて一口含むと、強烈な旨味とソースやマヨネーズの風味、魚の香りなど美味さが押し寄せてくる。今なら目と口が光り出して、うまいぞと夜の空へ叫んでしまえそうだ。


 ポンポンと弾みながら、俺の傍へやってきたスライム君にも一口分をフォークで突き刺して差し出すと、触手の中へと吸い込まれていったお好み焼きがじわじわと消化されていっている。

 一度大きく跳ねた彼と半分ずつ分け合い、一足先に味を堪能している時気付けば時間も大分経過していたのだろう、風呂から帰ってきてしっとりと髪を濡らした女性陣や酒宴の席の準備が終わった男性陣にがっつりと囲まれていた。


 もし俺がソロで旅をしている冒険者だったなら、間違いなくこの後に王様らしき人に死んでしまうとは情けないと言われてしまう程に凝視されている中で最後の一口を頬張ってしまった俺とスライム君。


 考えてみれば、それもそうか。

 しこたま働いた直後、我慢に我慢を重ねた腹ペコの状態で来てみれば、味に酔いしれている俺と楽し気に跳ねるスライム君がいる訳だし、この視線の強さも納得できる。作った者の特権だからこれは、と言い訳を心で念じながら口に着いたソースを拭きながら一つ柏手を打った。


「おし、それじゃあ宴会を始めようか! お酒の準備もいいみたいだし、はい皆やるよ!」

「誤魔化されんぞ!」

「ズルイズルイ!!」

「僕タチノ分モー!!」


 勢いで何とかしてしまおう作戦は失敗したが、それからすぐに宴会が始まった。

 流石に今日はいつも以上に食が進み酒も勢いよく注がれていく。魔王やツマ、ムスメがよく顔を見せるようになってありがたい事に酒の在庫は潤沢。先日グスタールに行った時、酒だけはそれ程購入していなかったが現在この拠点には売るほどあるのだから問題は無い。


 宴会が始まってすぐにアラクネの三名もやってきたので、いよいよお好み焼きのような物を作り始めた俺は、様々な種族が一番に出来上がりを取ろうとしているその牽制の視線の中で鉄板をシャカシャカとやっている。


「もう、皆の分はちゃんと用意してあるから。足りなくなってもすぐ補充できるし、そんなに焦らなくても」

「何を言っているんだホリ、これは聖戦だぞ。新しい料理を頂いて魔王様に感謝を捧げてだな……?」

「そうだぞ! だからまず俺に感謝を捧げさせてくれ!」

「何を言ってるのゼルシュ! まずは私が……!」

「いやいや、私が先陣を切りましょう!!」


 わいわいとやっている中で誰が一番に食べるかと盛り上がりすぎて、こちらの品が完成したのに気づいていない彼らを他所に、完成品が乗った皿をヒョイと奪われてしまった。


「ホリの言ってたのはコレねェ。はァいフォニア。じゃあ、いただきましょォ」

「あいよラヴィ姉さん。ホリさん、頂きまーす!」


 手の上から消えていた皿を笑顔で眺めていたラヴィーニアとフォニア、こういった時にずる賢そうなコンビが奪ったそれを「アアァァアァッ!」と叫ぶ者達が見ている中で、両者がフォークで一口サイズに切り分けたお好み焼きを口に放り込む。


 そして、複数ある眼を全て閉じて味を堪能しているラヴィーニアと大きく切り分けたソレを一口で頬張ってみせたファニア。歯を食いしばって睨みつけるアナスタシアを筆頭としたそれを見守っている視線の先で、二人が口の中の物を飲み込んだ。


「んんー、美味しいわァこれェ」

「ホント、サイコーにオイシイよこれ!」


 その言葉を聞いて、最早食欲のブレーキが壊れてしまったまだ食べれていない者達に問答無用に皿を突き出され、出来上がった物を半分ずつに切り分けて数を回していると、途中で頼もしい親方スタイルのスライム君がやってきた。

 どうやってつけているのか不思議なねじりハチマキをしている彼が二つのヘラを巧に使い、自前の鉄板でお好み焼き屋を始めた事で供給が需要に追いつき始めた。

 全体に行き渡り始めると今度は鉄板が奏でる音に混じってお好み焼きを堪能している声がトレントの並木道から聞こえ、更に宴会は盛り上がってきた。


 スライム君が加勢してくれたが、それ以上に腹ペコ達の消費は早く、どれだけお好み焼きをひっくり返しても口元にソースをつけた者達が突き出してくる皿のペースが収束する気配はない。俺とスライム君は天ぷらショック以来の働きぶりを見せる事となり、あの時よりも増えた人数で更に忙しくなった。


 それから山の様にお好み焼きを作り続けた結果見えるのは、満足そうにお腹を叩いて寝そべった状態でもう動く気配を一切見せない、満足という言葉を体で表現する口の横にソースや削り節をつけているアリヤ達や他種族の姿。


 それ以外にも色々な物に魚の燻製のけずり節をかけて食べているリザードマン達に、マヨネーズを野菜につけて食べると美味しいよと言った俺の言葉に踊らされるようにあちこちで一番マヨネーズに合う野菜を探しているケンタウロスやミノタウロス。

 お好み焼きを楽しむオーク達やマヨネーズをあれこれとつけて味わっているハーピー達など、目的が散ったおかげで大分自由になったが風呂上りだというのに汗だくになってしまった。


「ヒューゴー、悪いんだけど……」

「わかっておりますよ、あとでお湯を入れておきます。お疲れ様でした、おいしかったです」

「ホリ様、あのぱりぱりしたの、なんですか!?」


 マリエンが興奮そのままに身を乗り出して聞いてきたので、猫人族の為に魚の燻製を炙った物を別に用意してみた。

「これだよ、スライム君が作った保存食を薄くスライスして、火で炙ってみたんだ。美味しかった?」

「はい! 口の中にいつまでもあって欲しいくらいです!」


 ああ、猫だもんな……。猫人族と談笑をしながら削り節もどきでお酒を頂いていると、目の前に出来立てのパイが置かれた。

 その料理を置いてきたスライム君はいつの間にかねじりハチマキを取っていて、彼にお礼を言って早速頂いてみると、マヨネーズとチーズ、他にも色々な物が使われているようだが、お好み焼きを半分しか食べていない空腹にはそれが何なのか手を止めて味わう事が出来ないほどにウマイ。


「スライム君もちゃんと食べないとダメだよ? いつも皆に振舞ってばかりなんだから」

「ご馳走様です、美味しいですよ」

「今日のご飯も最高でした!」

 俺とヒューゴー、マリエンの三人の感謝の言葉に喜びを表現したスライム君が、俺の持っていたカップの酒を飲み干すように吸収するとポンポンと跳ねながら鉄板のある場所まで戻ってしまった。


 ミノタウロスやケンタウロスもそうだが、猫人族も藁で作りたい物があるのだとか。話を聞く限りだと畳のような物らしく、寝床にあるといいですよと彼らが言っていたので、実物を作ったら一度見せてもらった上で俺の分も用意してもらおう。


 藁の方も数に限りはあるし、ペイトン曰く全員に行き届く量ではあるが贅沢に使える訳ではない。使い方はそれぞれに任せる事になっているが、無駄遣いだけはしないように各種族代表者が目を光らせてくれるように話はつけてある。


 ヒューゴー達と話をしていると、周囲に突然どよめきのような物が起きた。最初はマヨネーズの新しい食べ方でも見つけたのだろうかと思って気にしていなかったのだが、その騒ぎの中心が足の根を動かして目の前にやってくると独特な髪を揺らし、こちらへと軽く頭を下げてきた。


 その彼女が見えたのか、人だかりの中からもう一人の精霊ドーリーが歩み寄ってきてラーシルの横に並ぶ。


「お姉様こんばんは!」

「ええ、こんばんはドーリー。そしてどうもホリさん。父上成分の補充に来ました。よろしいですね?」


 最初の頃は謎の成分摂取を謙虚に申し出てきていた彼女、今では至極当然の事のように涼しい顔をしていて、威風堂々と頼み事をする彼女には風格すら感じられる。やっている内容は拗らせたファザコンなのに……。


「どうもラーシルさん、それは構いませんがお聞きしたい事もあるのでどうぞ座って下さい」

「いいでしょう、時間はあります。こちらの都合でいつも無理を言っているのですし、答えられる事ならば答えましょう」


 ラーシルは大きく息を吐くと、そのまま俺の右側に座りちらちらとある箇所を見ている。そこまで執着する父上成分、もはや危ない薬だろう。ショタ神様に会う機会があればどういう教育を行ってきたのか聞いてみたい。


「ど、どうぞ!」

「あら、ありがとう亜人さん。でもごめんなさい、私貴方達や魔族のような下等にゃひゃあっ」

「おっと、失礼。腕が当たってしまいました」


 水の入ったカップと色々な料理を用意してくれたマリエンを冷たく見据えた彼女が何か不穏な台詞を吐きそうだったので、咄嗟に首筋に腕輪を当ててみたが……。


 こうかはばつぐんだ! と言わざるを得ない。ピシリとした空気を纏った彼女が一気に腰砕け寸前までいったぞ! 座った状態じゃなかったら倒れ込んでいたであろう彼女がやばいのか腕輪がやばいのか、父上成分中毒者怖いなぁ。


「お聞きしたいのは植樹……、この辺りを以前あったような森林地帯にしたいんですよ。それは可能ですか?」

「オホン、出来ない事ではありません。やろうと思えば、以前とは少し違う物になってしまいますが遜色ない自然溢れる姿にもできますよ」


 腰が砕けた状態で一度強く睨みつけてきた彼女の視線を躱《かわ》し、落ち着いたところで本題を言ってみたが思いのほかいい解答が帰ってきた。俺にそう告げた彼女は、スライム君が出した野菜スティックの入ったカップとマヨネーズと香辛料を合わせた物を入れた器を眺めている。


 食うのか、食わないのか……? 不思議な緊張感でごくりと唾を飲み込んで彼女の動向を見守っていると、野菜スティックを一つ手に取りマヨネーズと香辛料が入った器に刺し込んだ。


「ですが、そ(・)れ(・)にも条件があります。ここの土ではまだそ(・)れ(・)を行う事は出来ません。魔素が強すぎて、木の生命力が負けてしまいます。地中内のそれを弱められれば可能でしょう……ッ、……!?」


 言葉を言い終え頬張った野菜スティック、スライム君特製トッピングのソースが舌に合ったのだろうか。二度見して何かを確かめると、一際視線を強めて自身の食べた物とマヨネーズと香辛料が入った器を交互に見ている。


「そうですか、それなら現状で打つ手は無さそうですね。ですがもし条件が整ったのなら、ここを再生する時に力をお借りしてもよろしいでしょうか?」

「ええ、以前にも、言いましたが、私は父の意思を、尊重します。ですので出来る事があれば、協力は、しましょう。お約束します」


 彼女は言葉の合間合間に次々と野菜スティックにこれでもかとスライム君特製のトッピングをつけてポリポリとやっては次のスティックに手を伸ばして俺と会話をこなしていく。樹の精霊は野菜好きなのか? その様を見て魔族の中の野菜好き達が満足そうに頷いて仲間を見つけたと言わんばかりの視線を送っているのが目に入ってしまい、笑いを堪えるのが辛い。


「ありがとうございます。それではこちらもその時が来るまで尽力しますね。おいしいでしょう? マヨネーズ。おかわりはいりますか?」

 彼女の手に握られている最後の野菜、そしてまだまだソースが残っている器と野菜を交互に見て、ラーシルは悔し気に唇を噛みしめている。


「……頂きます。下等な生物が食べる物、と侮っていましたが……悔しいですがおいしいです。おいしいですよ!!」


 何故か怒りながら次々と野菜を食べていき、料理班の中から野菜好き達があれもこれもと自分のオススメを彼女に挑むように出していき品評を貰っている。野菜しか食べないようだが、どれもこれもが野菜好き達の試行錯誤の末にスライム君に認められるまでになって作られた品、それらをやはり悔し気に完食していく。


 種族差別のような物は精霊が一際強そうだな、人間も魔族も嫌いって言ってたし。他の精霊、確か十六名いるって言っていたけど、そのどれもが差別意識高い事でまた揉めるのも勘弁してほしい。


 ポリポリという咀嚼音を出してオーガの漬物を食べてまた一つ唸っているラーシル。どうしてそれ程悔しがるのかも不思議だが、今のところ出された物は量こそ少ないが全て完食。


 そして一通りの品を平らげた彼女にすかさず腕輪を擦りつけるように撫で、何か問題が起きる前に休んでもらった。その直視しがたいラーシルの変わり果てた有様に、目の前に居たオーガが赤い肌の顔を更に真っ赤にして俺を見つめていたが俺に悪気はない。これは必要な措置なのだ。


 彼女をポッドの根元に寝かしつけて毛布で包むと、いつかの時のように一定時間毎に毛布の中から怪しい笑いが聞こえてくるが、気にしてはいけない。人間は慣れる生き物なのだ。


「ファッファ、まーたやっとるんかホリ。お主も罪作りじゃのう」

「わかってて言ってるよねそれ。まぁ、聞きたい事は聞けたしね。無意識にあちこちに喧嘩売られても困るからこうしておいた方がいいでしょ?」


 彼女に悪気はないのはわかっているが、言葉の端々に棘がある上に今は酒の席だからな、何かが起きるくらいならいっそのことこ(・)う(・)してしまった方が安心してお酒が頂ける。

 その後もあちこちから酔い潰れる者が現れて、大ボス(パメラ)に俺も挑んでみたが結果は完敗。その日は俺もポッドの根元で一夜を明かした。


 その酔いが原因か定かではないが後日、アリヤが注意してくる程の宴会芸を久々にしたらしい。こちらは全く覚えていないのでその詳細を聞いてみたところ、アリヤが俺がしでかした事を思い出したのか、照れた様子で俯いてしまい何も言わなくなってしまった。


 詳細はわからないが、男性陣には大うけだったという話をその場にいたペイトンが苦笑混じりに教えてくれた。勿論パメラ、ペトラの両名は顔を赤くして視線を合わせてくれない。ベルやシーも。


 一体何をしたんだろう……。前にもこんな事があったな、その時は闇の魔石を使ったモザイク芸だった。あれもアリヤとベルとシーに白い目で見られたな。


 ずきずきと鈍る頭の痛みと格闘をしながら、ペイトン一家と共に朝の食事を終え麦が保管されている場所へ向かうと他のオーク達や他種族の顔もちらほらと集まり始めている。


「お、きたきた。オハヨー! ペイトンさん達が言ってた道具、昨日完成させといたよ! いい出来だと思うんだ!」

 宴会の酒が残るような素振りもなく溌剌《ハツラツ》と動いているフォニア、彼女の後ろにはペイトン達や他の種族から注文された脱穀に必要な機器の数々が並んでいる。これだけの数を間に合わせてくれた彼女や、短い期間で腕を上げているイダルゴ達に感謝を込めておこう。


「おはよう。フォニア達凄いね、お疲れ様」

「へへへっ、今度おいしい甘い物よろしくね! それじゃあ私は二度寝するから! 藁が取れたら私の分は布団にしておいてほしいかな? じゃねっ」


 軽やかな足取りで彼女の自宅になりかけている工房へと帰っていった彼女を見送り、俺達は文字通り山のようにある麦へ挑んだ。


 それから麦を脱穀するだけでへとへとになり、現代で機械という物がどれだけ働き者だったのかを身を持って体験させてもらい、魔族との馬力の違いをまざまざと見せつけられた。


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