第55話 チワワにも牙はある
してはいけないと言われると、興味が沸いてしまいあえてしてみたくなるのが人情だと思う。例えば、笑ってはいけないよと言われると笑いのハードルが下がり、どうでもいい事でも面白く感じるアレ。
年末にテレビで笑ってしまうとケツを叩かれるあの状況に酷似した物にまさか自分が陥る事になるとは思っても見なかった。
その類で個人的な思い出では、会社の重役が勢揃いしている会議で隣の上司がドラ〇もんの絵を書類に書いて「やぁぼくアンパ〇マン!」というセリフを吐いている絵を見せられた時などが挙げられる。
こうなってしまったのも、自分が蒔いた種なのだから甘んじて受け入れる事としよう。
そう、今この空間は真面目な会議を行っていて、笑ってはいけない空気が醸し出されており、一定時間毎に自分を落ち着かせないと不意に変な笑いをしてしまいそうになる。
それは恐らく俺だけではなく、顔を伏せたり誰もいない方向に顔を向けてバレないようにしていたり、顔を隠すように手を額に当てている者がいる事からも察せられる。
笑ってはいけないと誰に言われた訳ではないが、彼女達の真剣な表情から自ずとそういう空気になってしまった。
今ここにいる各種族のリーダー達や、それに付き添ってやってきた者達はいきなり始まったこの不思議な会議をこなしながら今後の事に話し合っていた。普段だとラヴィーニアのみが参加するアラクネ達だが、今日はレリーアとトレニィアが参加している。不憫だ。
「姫しゃま、それじゃあこっちに来てるのは鉄鬼と水鬼、金鬼の者達でしゅか?」
「ええ、おいどんが見た時は数はおよそ四十から五十人ほどいましたでごわす」
普段と変わらない状況、例えば俺やゴブリン達とスライム君のいる洞穴でこういった話になっても「え? 熱でもあるの?」くらいで済むのだが、緊急事態として集まっている者達が真剣に、そして事態の重大さに、深刻に話を進めていかねばならないとなるとそうもいかない。
俺は先程から笑いを堪える為に腕を組み、何度か空を見上げるように天井に視線を移し、強く目を瞑り深呼吸をしながら耐え続けていた。
絶妙なまでの二人のクオリティの低さが個人的にはツボなのだ。
一度ウタノハを泣かせてしまった上に、彼女は騒ぎ立てるような泣き方ではなく、静かに息を殺すようにまるで小動物のように泣いてしまう為、その罪悪感たるや凄まじい物だった。
俺の考えが伝搬したのか、誰一人として彼女達の一見ふざけているようにも思える言動に突っ込む者はおらず、文字通り鬼気迫るような表情で様々な事を告げられるが、笑いを耐える事に重きを置いている為、話の内容が殆ど頭に入ってこなかった。
しかし、このまま黙っている訳にもいかない。相手は待ってはくれないのだから対抗策を用意せねばならない。俺は必至で頭を切り替えて会話に参加した。
「それじゃあ、相手は五十人と仮定しよう。平和的な解決はほぼないとンフッ、失礼。ほぼないと思っていいんだね?」
俺が途中堪えられず少し漏らした笑いに釣られて数名が明後日の方向を向いてしまったが、大丈夫だ。彼女達が傷ついた様子はない。オラトリは俺を真っ直ぐに見据えると頷いた。
「はい、あのオーガしゃん達は既に解き放たれた獣……モンスターしゃんと変わりゃないでしゅ。ここを見ちゅけたら確実に戦闘になりゅでしょう」
「鉄鬼はホリ様も見た黒い肌の者でごわす。金鬼は肌が黄色く、土魔法が得意でごわすね。水鬼というのは肌が青く、水や氷の魔法に長けている者達で、彼らはおいどんの『眼』よりも、もしかしたらホリ様に以前差し上げた『精霊の瞳』を狙っているのかもしれないでごわす」
あの大きな魔石のついたペンダントか。まぁ貴重な品なんだろうし、何か別の目的があるのかもしれないな。
「猶予は数日、恐らくだけどあの排水の橋を見つけられたらこの場所もすぐに分かるだろうし、それまでに戦闘の準備をしておいた方がよさそうだな。戦闘可能な人員は今どれくらいいるんだろう?」
隣で眉間にシワを寄せ続けているアナスタシアが口を開いた。
「ああ、大凡ではあるが確認したところ五十人から六十人というところだ。ほぼ同数のオーガの一団を相手にするには厳しい面はあるかもしれないな」
彼女は普段から表情を変える事はないからこういう状況に強く見える。
だが時折隣から深呼吸をしている気配は察知出来たので、彼女も追い込まれているようだ。何故こんな会議になってしまっているのか、かなり深刻な状況なのに。
「真正面からぶつかり合うと被害も大きいでしょう。こと戦闘に関してはオーガは他種族に比べ頭一つ二つは抜きん出ていますから」
ペイトンも多少顔を伏せながら俺にそう告げてくる。いっそ彼が視線を向けてきたら渾身の変顔で笑わせてやろうと思って準備していたのに。
「数が数だ、死傷者も出るな。今回は敵に施しを与える余裕などプフッないぞホリ」
「ンフッわかってるよゼルシュ、何か手を考えておかないといけないね。ちょっと用意したい物があるんだ、悪いんだけど皆には協力してもらうよ」
各種族のリーダー達とその付き添い達が強く頷き、会議が終了間際にまでやってきた事を感じさせた中で、イェルムに付き添ってきたルゥシアが口を開いた。
「なーなー、ウタノハ、オラトリ、聞いてもいい?」
「はい? 何でごわすか?」「何でしゅか?」
「何でふざけてるの? 真面目な会議中に遊んじゃダメなんだぞ! メッ!」
デデーン! 俺、アウトー。
本日二回目のウタノハ号泣により会議が終わり全力で彼女に謝罪をした後、俺は言い訳を叫んでいた。
「待って! おかしいって! みんな笑ってたじゃん! 異議あり!」
「トドメを刺したのはホリ様ですから……、では後片付けをお願いします」
イェルムがクスクスと笑いながらそう告げてきたので、仕方がないので皆が使ったカップなどを洗って後始末をしている。
大体片付いたタイミングで、風呂でも入ろうと思い大浴場へと足を運ぶと、風呂上りのウタノハが誰かを待っているようだった。入浴剤の香りなどで気分転換出来たのか、表情も明るく立ち直っているようだ。
「おっと、女性の時間だったか」
俺の口から漏れた言葉を聞き、ウタノハが声をかけてきた。ちなみに俺が先程土下座をして謝罪をした際、もうこの罰ゲームは辞めさせている。オラトリがそれを聞いてじわりと涙を滲ませていたが、そんなに辛かったのか。
「ホリ様ですか……? 此度の件、オーガの代表として謝罪させてもらいます。ご迷惑をおかけしてしまい、誠に申し訳ありません」
彼女は折角風呂上りだというのに、膝をつき頭を下げようとしたので止めに入り立たせた。ついていた膝の土を払っておこう。
「ああ、いいんですよ。こうなる事なんてわかっていましたからね、覚悟の上です」
彼女の前にしゃがみ込み、ぱたぱたと膝を叩いて粗方土も落とせた、大丈夫だろう。彼女は俺の言葉を聞いてそれでも申し訳なさげにしている。
その時、びゅうと一際強い夜の風が吹き荒んできた。
バッと履物を抑えた彼女には申し訳ないが、すらりと伸びた足に白い布地をしっかりと拝見させて頂きました。ありがとうございます! ありがとうございます!!
プルプルと震えている彼女と拝みポーズの俺。風呂から出てきた人達は不思議な光景を目にしている事だろう。
ウタノハが一言切り出してきた。
「見えちゃいました……?」
俺は無言で立ち上がり、頭を深く下げ礼をしておく。眼は見えてない彼女には伝わらないかもしれないが、礼の心を忘れてはいけない。
「良い物を見せて貰えたし、その対価として頑張らないとな。ウタノハ、ナイス白! じゃあね!!」
そういって全力のダッシュでまずリザードマン達の居城へ走り出した。
走り去っている時に後ろから「ひ、姫様!」とオラトリの声が聞こえたので、全力でリザードマンの、というよりゼルシュの元へ急いだ。
オーガ達との戦闘は壮絶な物になるだろう。
だが俺には他を圧倒するような力も特技もない。戦闘を生業にしているような者達から見れば虫けらのような物だろう。だが虫けらにも、やれる事はある。
俺は俺のやり方で、少しでも皆の命を守るしかない。そのためにもまずは――
「この素っ裸のリザードマンを何とかしないとな」
「おお? ホリ、そろそろオスの風呂の時間か!? 今日は草原の香りらしいぞ!」
「今日はリザードマンをやるぞ!! 風呂は無しだ!!」
えっ? とゼルシュが天高く吊り上げていた尻尾をだらりと下ろし、俺と共に早速防具の製作に入った。
欲しい物、作り上げようとしている物は完璧とは言えないまでも、彼らの命を守れる可能性を上げる防具だ。
先程教えてもらったおよそ数十名分の防具をこの数日で、出来る限り揃えてやる! 悔いの残らないようにしておいて損はない。以前のように相手がゴブリンだの、少数の人間だのという訳ではない。余裕なんて一切ないのだ。
「ほ、ホリ、今日は草原の香りが……」
「ゼルシュうるさい、ホラやるよ! 腕出して!」
その日はリザードマン達全員、俺が出す金属の加工音で寝られなかったようだ。
寝ていても個別に俺が起こしてサイズを合わせてとやっていると目が覚めてしまうから、寝ずに訓練をしていた者もいた。
リザードマンの分の防具を作り終える頃には、空が白み出していた為帰るとゴブリン君達を起こしてしまう。こういう時行く場所は一つである。
そこへ向かう為、リザードマンの住居から出ると訓練をしていてそのまま燃え尽きたのか? その場で剣や槍を握りしめたまま寝ている者が多数いた。悪い事をしてしまったなぁ。
向かう先はトレントの並木道。ポッドの根元だ。
「ポッド、おはよう。少しここで仮眠させてもらっていいかな?」
「ファッファ、おうホリ、そりゃ構わんがここで鉱石叩くのは止めてくれよ」
どうやら大体察してくれているようだ。
マントにくるまり彼の地の中へ走っている根に頭を預け仮眠をとる。
「ポッド、少ししたら起こしてくれ。誰かしら来るタイミングでいいから」
「わかった、少しお前さんの体を回復しといてやる。安心して眠るとええ」
目を瞑るとすぐに眠りにつけた。
そして、体感的には僅かな時間で体を揺すられる感覚を覚えて目を覚ますと、それは木の根によってもたらされている物だったようだ。起こしてくれたポッドにお礼を言い、体の土を払いながら立ち上がった。
「ありがとうポッド、それじゃあちょっと続きをやってくるよ」
「おう、無理するなとは言わん。気張れよ」
一言お礼を言って走り出し、向かう先にはハーピー達の巣。
高い所に入り口がある為ブーツに力を込めて壁を歩いている時に、イェルムに見つかり声を掛けられた。
親子なのに、飛んでいる時の羽ばたく音がルゥシアとは全然違うんだよな。彼女のはこう、常に音がするんだけど飛行能力が高い気がする。
「ホリさん? 如何されました? 私達の巣へ来るなんて」
「ああイェルムおはよう。ハーピーの防具を作りにね。ほら、オーガ達の襲撃に備えておいた方がいいでしょ?」
彼女に挨拶をしながら巣に入れてもらうと、朝方だからか彼女達の大多数は作られた巣に身を寄せ合うように眠っていた。
「起こしちゃうか……。また後にしておこうか」
「あら、大丈夫ですよ。やりたいようになさって下さい。私も協力しますね」
イェルムと途中から目覚めたルゥシアのおかげでハーピーから戦闘に参加を表明している者の分を造り上げ、微調整を施した辺りで腹が鳴った。
「アハハ! ホリ、お腹減ったのかー!? これ食えよー!」
彼女は善意でしてくれている、してくれているのは分かるんだけど。
「ルゥシアストップ! 虫は厳しいって! 虫は!!」
「火は通してありますから食べられますよ?」
やる事は終わったのだ、早めに退散して飯を食べよう。スライム君の料理を!
夢中になってやり続けたからか、時間がかなり経過していたようだ。日も高い。寝不足には厳しい日差しだなー。
「スライム君、いる?」
拠点に戻って洞穴の中を覗きこむと、スライム君の姿はなかった。だが、トレイにまるで今作りましたと言わんばかりに湯気を出しているスープとサンドイッチが。
やだ、スライム君の嫁力高すぎ。
ありがたく完食をして、ケンタウロス達の住居へとやってきた。
ここが一番数が多い、時間がかかる事は目に見えているのだからと本日最後にしておいた。アラクネ達の物は試作品だが用意してある。だが彼女達は休んでいるだろうから、夜の内に一度訪れようと思っているが……。
「おや、ホリ様。どうされましたか?」
「オレグ、丁度良かった。ケンタウロス達の防具を作ってみたいんだけど協力してくれない?」
武器の手入れと在庫の数の確認を行う所だったオレグを捕まえ、強制的ではあるがマネキンのようにして必要な場所を数えたのだが、やはり多い。
人型部位の部分と馬の部位、被弾面積を考えたら馬の部位を優先すべきか? ケンタウロスは胸当てとか軽装防具がいいみたいだし、肘から手首にかけての前腕にまきつける感じの物だけでいいか。
問題はやはり馬の部位だよな、後ろから攻撃されたりして背を切られたらオシマイだ、布が間に合えばそれでいいけどペース的には難しいだろうし。
「うーん、やっぱりネックはここか。難しいところだよな、ガチガチにしちゃうと動きが取りにくくなってケンタウロスの長所の機動性が落ちるし」
「先程作った足用の防具だけでも十分だと思いますが……。後はこの前垂れもいいですね。強靭な紐と鉱石の板を合わせているからこれだけでも心強いですよ」
これ以上は俺の技術的に無理かな、板をうまく使えれば下腹部から馬の部位の前面を覆うように守れるような物を作りたい。いっそ鎖帷子のようにしてみてもいいな。どっちみち成形手段がない今では無理か。せめて鍛冶が出来る設備と知識を持った人員がいれば……。
「ごめんよ、協力してもらってなんだけど作った中で使えそうなのはこれだけだ。もう少し何とかしておきたいな……」
「何を言いますか。これを作ろうと思って頂けただけでもありがたいです。あとホリ様に出来る事と言えば……」
「言えば?」
オレグは言葉を止め、俺の後ろを指差している。振り向くと、今まで作り上げた試作品を一つ一つ体に当てて確かめているケンタウロスの集団が。いつの間に。
「この者達の意見をどれだけ取り入れてやれるかでしょうな!」
彼はそういうと大きく笑っていた。
そこから一人一人、ケンタウロス達の好みを聞きながらサイズを合わせたり、人によっては肩や腰周りなど、新たにパーツを作る事もしばしば。
最後にアナスタシアに装備を作りに行ったところ、彼女は自信満々に「必要ない、たかがオーガだ。雑魚に過ぎん」と流石の一言だった。仕方ないので前垂れだけ置いてきた。使ってくれるかは自由という事で。
ほぼ全員の装備を作り終える頃には、とっぷりと日も暮れてアラクネ達が動き出す時間だ。早速向かおう。
穴倉に向かって声を出してみる。
「おーい、誰か起きてるー?」
洞窟の奥から、コツコツと誰かが歩いて来る音がする。音を出していたのはレリーアだったので挨拶を済ませ、ラヴィーニア達の元へと案内してもらう。
「一体何の用なのだ? 疚しい事を考えているなら今の内に言え、大丈夫だ。痛い思いをするだけで許してやるぞ」
「何も大丈夫じゃないでしょ。ほら、オーガが襲ってくるからもし皆が襲われたらアレだし、防具を作って持ってきたんだ。あとはちょっとお願いかな」
「ふむ、防具ね……」
何やらレリーアが考えているがどうしたんだろう。姉成分が切れて思考停止してしまったのだろうか。末期症状で暴れ出す前にラヴィーニアに会わせねば。
「お前失礼な事を考えているだろう」
「いえ、全く」
勘だけはいい奴め! 面倒な!
「フン、ここの者達ならオーガより強いんじゃないのか? 数も五十そこらだろう? それにオーガのバカ共に集団戦闘など出来る訳もないしな」
「そうなの? それでも油断は禁物だよ。一つでも多く不安要素は排除したいしね」
俺の言葉をつまらなそうにフンと返し、コツコツと歩みを進めていく彼女。その仏頂面が一気に笑顔になり、その先にはここの主と言っても差し支えない女性が糸を紡いでいる。トレニィアの姿が見えないのは、恐らく料理班として仕事をしに行っているからだろう。
「あらァ、ホリィ? 珍しいわねェこんな時間にィ」
「うん、ちょっと試してみたい物があってね。早速なんだけどこれちょっとつけてもらえない?」
俺が出したのは彼女達の足に着ける装着具。彼女達の足の形状から装着具もかなり物騒な形をしていて、突き刺して使う武器のようにも見える。
だが、シスコンは俺を睨みつけながら口を開いた。
「ホリ、先に先程言っていた『お願い』とやらを話してみろ。まぁ大体察しはついているが……」
うぐっ、本当に勘だけはいいなこのシスコン! それとなく頼み込もうと思っていたのをまるで見透かされていたようだ。
「えっと、その実は……今度のオーガの襲撃に、ラヴィーニア達三人の力を貸してほしいなと思いまして、お願いします!」
言いながら深く頭を下げた。
「そうねェ……。相手はオーガでしょォ? アナスタシア達だけでも何とかできそうだけどォ?」
「いや、それでも戦力は一つでも多い方がいいと思うんだ。皆が無事に戦いを終えられるように力を貸してほしい。調子の良い事言っている自覚もあるんだけど、どうか頼みを聞いてくれないかな」
「フン、やはりそんな事か。くだらん」と不機嫌そうに口にしているレリーア。
「ホリィ、悪いんだけど今回は私達は役に立てないわァ。相性が悪いからねェ」
「えっ! どういう事!?」
彼女達アラクネの基本の戦闘スタイルは糸と魔法。オーガ相手だと糸もそうだが、魔法も相性が悪い相手には有効にならない。更には今回はどこで戦闘になるかわからない為、機動力もない彼女達では足手纏いになる可能性もあり得るのだとか。
「じゃあラヴィーニア達の協力は仰げないのか……」
「ホリィ? 話をちゃんと聞かない子はお姉さん嫌いよォ? あくまで『私達』と言ったでしょォ。協力してほしいなら今回はトレニィアに頼み込んでみなさァい? そしてお願いを聞いてもらったらあの子の望みを一つ叶える事ォ」
どういう事だ? 何故トレニィアだけ除外されてるのだろう? 首を傾げていたら、ラヴィーニアが笑いを零しながら更に続けてきた。
「ヒントはここまでェ。後はホリ次第ねェ。その防具もトレニィアの分だけで十分よォ。私は、またホリが泣きついてくるだろうから、ここでレリーアと布を作っておくわねェ。そこにある布も持って行っていいわよォ」
布を二人で用意してくれていたのか? それでいつもなら俺達の洞穴に来ているラヴィーニアがいたり、レリーアが残っていたりしたのか。二人も出来る事で助力してくれようとしている、ありがたいな。
「ありがとうラヴィーニア。レリーアもありがとう、ちょっとトレニィアのところへ行ってくるよ」
「フン、さっさといけ! 当分顔を見せないよう努力しろ」
「フフッ、じゃあねェ」
彼女達に挨拶をして出口に向かって足を運ぶ。
準備はまだまだ足りない、早ければ明日にも戦闘になるかもしれないのだから不安は無くならない。それでも死なない為に、明日を生き抜く為に抗う。それを成し遂げる為にしないといけない事。
それはただ一つ。
「レリーア……悪いんだけど出口まで案内してくれない?」
俺の言葉を聞いた二人のアラクネは一人は大きな口を開けて呆れており、もう一人は腹を抱えて大笑いをしている。
いやここ迷路すぎるでしょ。




