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魔王様、顔怖いです。  作者: ふかづめ
生活の質を上げよう
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第129話 おじさんズ

 降って湧いたような大金。

 それを少しでも使う事を考えた結果、弓も矢も弩もボルトも大量に購入する事となり、まさに山のような量の商品の数々。


 これを店主のおじさん一人に荷造りさせるのは流石に酷かなと思ってはいた。

 魔石店の扱っている物と違って嵩張る上に重いのだから、こうして手を貸すのは別に構わないのだが……。


「ほっほ、こりゃ楽でいいねぇ。兄さんどうだい? うちで働かない? それならサービスで弓も教えるよ」

「うん、まぁ考えておくよ。おじさん、大体終わったけど後は何かあるかな?」


 渡されたロープなどで荷物を纏め終わり、その後ごく自然に渡された清掃道具を使って、住人が居なくなってしまった家のようながらんとした店内の棚を拭き終わると、それまで温かい目で見守っていたおじさんが俺の傍までやってきた。


「これ、掃除をしてくれたお礼だよ」

「これは……?」


 その手には一枚の紙切れ、何かが書かれているその紙を俺に差し出してきたおじさんは次に俺の手を掴み、その紙を握らせてきた。


「これもって、鍛冶建築ん所にいるザーフって職人の所へ行ってみな。兄さんに見せたかった面白い奴があるんだ」

「面白い……、か。そういえばおじさん、頼みたい事があるんだ。前に買わせて貰った風の力が宿っているとかいう弩、あれと同じ物は無いかな? 前に買った奴ダメにしちゃって」


 今回の旅で俺の中にあった隠れた目的の一つ、ゴブリン達の使っている武器種の中で唯一、拠点では作れないシーの武器の事について聞いてみるとおじさんは少し顔を曇らせた。


 この街へ訪れる前に拠点の住人に欲しい物を聞いて色々と要望を聞いてはきたが、アリヤやベル、シーの三人は壊れてしまったり、無くなってしまった愛用の武器の事についてあまり触れずにいた。


 それは彼女達なりの周囲の者への配慮だろう。

 あれこれと考えて欲しい物の案に頭を抱えている者の前で「自分達の武器が欲しい」と我儘《わがまま》を言うような子達でも無いのは俺が良く知っている。


 それでも、住処《すみか》の洞穴でいつも楽しそうに武器の手入れをしていた時間が無くなった事で手持ち無沙汰になっていたり、時折寂しそうな表情を浮かべていたりとしていたので、出来れば新たな武器を見つけてあげたい。


 これはあくまで俺の我儘。

 無駄遣いは出来ないと言って、欲しい物の要望を絞らせて貰った拠点の皆には申し訳ないが、こうして大金を手にした今となってはまさに絶好の機会だ。


 アリヤとベルはどんな武器を渡しても最終的には鉱石の武器が欲しいと言うかもしれないし、それに関してはその内作れればいいかなとは思うがシーの弩は素人が作れる物じゃない。


 あの特別な弩の性能を引き出して、それに見合う活躍していたシーには今使っている普通の弩では物足りないのでは、と狩猟班の面々も言っていたし、このおじさんなら何とか同じ物を揃えてくれそうという淡い期待を寄せては見たが……。

 この様子では厳しいだろうか? そういえば貴重な素材を使っていると言っていたしな……。


「同じ物ってのは無理だよ、あれはあれで相当珍しい木を使ってるからね。多分この街中を探しても見つからないさ」

「そっか、残念……。この店ならもしかしたらって思ったんだけど……」


 参ったな、このおじさんのところ以外に弓や弩を扱っている店を知らないし、今回は短期滞在なだけあってあちこちに足を伸ばす時間も無いぞ……。


 少し俺が気落ちしたように見えたのだろうか、励ますようにポンと腕を叩いてきたおじさんはにっこりと微笑んで一度頷いてきた。


「大丈夫、尚更これから見せる物が兄さんの力になってくれるよ。おかげさんで今日から暫く暇になった事だし、掃除もしてくれたし。一緒に行こうか」

「う、うん……?」


 おじさんはカウンターで簡単な準備を済ませてそのまま目的地へ向かう為にのんびりとしたペースで歩き出した。

 そのまま店の扉を開けて先を行こうとしているが……。

「おじさん、扉扉っ、鍵とかしなくていいの?!」

「おおっ、そうだったそうだった。ありがとね兄さん」


 手にしていた鞄から綺麗な装飾のされた鍵を取り出しながら戻ってきたおじさん。

 のんびりしてるなぁ、と見守りつつ鍵をかけて再度歩き始めたおじさんと二人、ゆったりとしたペースで街の中心部までやってくると、おじさんはふぅと一息ついた。


「わるいね、昔モンスターに足を齧《かじ》られてから歩くのが遅くなっちゃって」

「いやいや、気にしないで。辛いようならおぶろうか?」


 俺の出した提案におぉっ、と小さく声を出して手をポンと叩いたおじさんはそのままゆっくりと俺の傍までやってきた。


「試しにやってもらうとしようかな。苦労かける分、コ(・)レ(・)に期待してていいよ」

「了解、じゃあ期待しておくよ」


 流石にこの世界で肉体労働を続けている事もあってか重さを感じる事もないが、微笑ましい物を見るような周囲の視線が痛い。今回の旅は本当に視線に晒される事が多いなぁ……。


 あまり気にしても仕方がない、おじさんの誘導に従ってさっさと行ってしまおう。


「兄さん、あそこだよ。あの工房」


 背中に乗っかっているおじさんが指差す場所には、様々な材木や角材が置かれている工房。

 そのひしめき合うような木材が並んでいる奥の空間で何かの道具を使い、木を削っている男性がいる。


「おぉーい、ザーフ」

「おっ、ベン! 丁度良かった、悪いまた金貸してくれ! ん? 誰だソイツ」


 黒い短髪に、黒い瞳とそして無精ひげ。

 背中のおじさんよりは多少若く見えるが彼もおじさんといって差し支えない年齢。だが威勢の良さは背中のおじさんとは段違い。そんな彼は俺を指差し首を傾げていた。


「いつかに話した面白い物を欲しがるお兄さんだよ。彼のおかげで繁盛したからね、お礼に連れてきたんだ」

「へぇ、そういやそういう話もしたな! 面白い、って事はア(・)レ(・)か? ちょーっと待ってろ!」


 うんうん、と背中で頷いたおじさんに、手についた埃をはたきおとすようにしながらそのまま工房内部へと入っていってしまったザーフと呼ばれた男性。


 まだ自己紹介もしていないのだが……。


「ザーフは昔馴染みの友人でね? この街でも一、二の腕を持った弩の職人なんだよ。あの通りせっかちなのと、金遣いが荒いのが残念だけどね」

「そうなんだ……」


 彼はそれほど時間も掛からずに戻ってきた。


 目を引くのは彼の手にある弩、それはかなり大掛かりな物で普通の弩より二回りは大きく全長もとても長いというシロモノ。


「それは……?」

「おう。威力と精度を追求した弩の試作品なんだが……、この通りでかくなっちまってな! 俺としては威力を落としてでも、もちっと小さくして持ち運びを考慮した物にしてえと最初は思ってたんだが……」


 彼はそう言ってちらりともう一人のおじさん、ベンに視線を移した。


「ベンが『こっちの方が好きそうな人に心当たりがある』って言っててな。それならいっその事とそこから更に改造して大掛かりな物を作ってみたのよ!」


 ザーフはとても楽し気にその手にしていた弩を俺に手渡してきたが、見た目通りずしりと来る。結構な重量だ。


 そして弦の部分に触れて指で弾いてみると物凄く硬い、というより強い弦が張られていてちょっとやそっとの力では引けそうにない。


「ほっほ、どうだい兄さん。取り回しにはかなり苦労するとは思うけど、威力は前に売った弩とは比べ物にならないよ。精度も勿論悪くない、ただ一つだけ問題がね」

「兄さんも気付いたみたいだが、一番の問題はその弦の強さ。生半可な人間が引けるモンじゃねえ! ソイツを運用する為にはコレがいるのよ!」


 彼が突き出してきた手、その掌の上には特徴的な色合いをした二つの石が乗っている。その輝きを放っている二つの石は日常的にお世話になっていて馴染みのある品だった。


「それは、魔石……ですか?」

「おう。この風と土、弩の内部にある二つの魔石に魔力を送る事で自動で弦が引けるように魔道具で改造したんだがな? 数撃ってりゃ魔石の効力が無くなるからコストがかかって仕方ねえ! まぁ、その分他の弩とは比べ物にならない位の威力は持ってるんだけどな」


 彼は苦笑いを浮かべつつ俺が持っている大きな弩をコツンと軽く小突いた。職人二名がこれ程まで言うのなら、威力はお墨付きなのだろう。


 問題は魔石の方だが……、うちの拠点ではそれこそ、毎日の狩猟により土の魔石が有り余っている。

 その上、ペイトン達農業班がソマの実の収穫後に砕いて撒く位しか使い道もないから常に余らせているし、先程購入した大量の魔石の中には風の魔石もある。


 購入してから使い方を考えようと思っていた風の魔石だったが、早くも使い道が見つかるなんて。

 一通り考えてみたが、これは迷う必要もないな。


「これ貰います、是非欲しい。いくらです?」


 俺が頷いてそう答えると方や小さく頷いて微笑み、もう片方はというとぽかんとした表情で呆気に取られているようだが……。


「お、おいベン、ホントに買ってくれるみたいだぞ」

「言っただろう? このお兄さんはこういう物が好きみたいなんだよ。ザーフ、これで金を借りなくて済むね?」


 対極の反応を見せている二人、そんなに意外だろうか? とは言っても人間だけに限って言えば使い辛い物である事も確かだろう。


 ボウガンは弦さえ引ければ非力な人でも一定の威力が出せる、というのが利点の一つだろうがこれ程の大物となると持ち運びだけで一苦労。

 それこそ、非力な人には難しい。


 拠点に戻り次第、この大物を持ち運びをしやすいようにシーの防具を改造するとしよう、もしそれでも彼女が嫌がったらこの弩は体の大きなケンタウロス達や他に使いたい人に扱ってもらえばいいしな。


 それにしても改めて見ると大きいな……、長さだけでも普通の弩の倍はありそうだ。

 実際どうやってこの強固な弦が引かれるのかも見ておきたいし、ちょっと魔力を込めてみるか。


「おぉ……、おぉっ、おおっ!!」


 痛々しい程に張り詰められていた弦が弩に少し魔力を込めると形を変え、弦受けと呼ばれるレールの上から飛び出た爪のような部分が滑るように移動して弦を引いていく。


 その動きは所定の場所までやってくるとカチリと小さな音を立ててロックされたように止まった、これで撃てるという事だろうか。オモチャの仕掛けのような不思議な過程を見ていた俺の反応が面白かったのか、二人のおじさんがこちらを覗き見て笑いを噛み殺している。


「おう、悪い悪い。最初に出来上がった時の俺やベンと同じ反応するからなんか面白くてよ! 試しに一発、撃たせてやりてえところだが、威力が高えからあぶねぇんだ! 街の中で試し撃ちだけは絶対するなよ!」

「精度も耐久性も問題はないんだけどね? 仮に何かあったらこの街から追い出されちゃうから」


 この二人が街中で使う事を躊躇うほどの威力か、ますます期待が高まってくるな。後はシーに使ってもらって反応を見るとしよう。彼女が気に入ってくれるといいな。


「わかりました、期待して撃つ機会まで待ちますよ。それでこれ、おいくらなんですか?」


 黒髪のおじさんに問いかけると俺の言葉を聞いた彼は表情を一転、曇らせている。これ程大掛かりな品だ、相当な額になるとは思っているが……。

「金貨五十枚だ……」

「おぉ……」


 思いがけない高額につい息を漏らしてしまったが金額としては払える、成金に怖い物は無いのだ。だがこの弩一つで金貨五十枚というのは採算度外視もいいところだろうとも思えるが……。


 色々な人達のおかげで扱う金額が増えてきてあれこれと良い物を購入できるようにはなったが、小市民には酷な取引の連続だな。


 そんな事を考えているとどうやら俺が渋っているように見えたのだろう、ザーフはあれこれと弁解するようにして、この弩の良さを説明して商品を売り込んできている。


 もうこちらとしては購入する気満々なのだが、今は黙って彼の説明に耳を傾けてこの弩についての情報を取り入れておくとしよう。


「……てな訳でな? 俺としてはこれだけの物に生半可な素材じゃ失礼だと思ってよ! あらゆる部分に俺の知っている最高の素材を使ってるのよ! 相当荒い使い方しても、ぶっ壊れるって事は早々ねえぞ!」

「うーん……」


「ホッホ。兄さん、ザーフをあんまりいじめないであげてよ。ソレ、どんな値段でも買うつもりなんでしょ? 兄さん好みだもんね」


 少しの間、俺が弩を握り締めて静かにしているとザーフはこの弩の良い点や使用方法、あらゆる説明を懇々と続けていた。


 こうしてもう少し黙っていたら値段を抑えてくれないかな? と内心では思っていたが流石にそれは気の毒、と木材に腰を下ろしているベンが助け船を出してきてしまった。


「ベンさんには見透かされてるなぁ。うん、ザーフさんこれ買わせてもらいますよ」

「ほ、ホントか!? 金貨五十だぞ!?」


 鞄の中から小箱を出して中から一枚、白く輝く金貨を取り出して目の前で狼狽《うろた》えているおじさんに手渡しておくと彼は戦慄くように震えている。


「おぉ……、おぉ……っ! これで借金が返せる!」


 まるで何かに勝利をしたかのように白金貨を握り締め、飛び跳ねて喜びを表現しているザーフを微笑ましく眺めつつ、俺の近くへとやってきたベンおじさん。


「よかったねザーフ。兄さん、ソレに関しては絶対後悔はさせないよ。もし何かあったらウチかザーフのところへ持ってきてくれれば無料でメンテナンスもしてあげるからさ」

「ベンありがとよ! そうだぜ兄さん、ソレ使った感想も聞きたいところだしな!」

「うん、そう言ってくれると助かるよ」


 先程ザーフがあれこれと説明していた内容を聞いていると、メンテナンスも殆ど必要は無さそうだけどなぁ……。


 唯一その必要がありそうなのは弩の弦か。

 ボルトのない状態で弩の引き金を引いてみると弦が目にも止まらぬ速度で放たれ、空気を切り裂く音の直後に手にはビリビリとした小さな反動のような物が。この痺れ、この弩が持つ破壊力に期待感を高まらせてくれるな。


 しかしこれだけの力強さを感じさせてくれる弦でも、使い続ければ劣化してしまう事が問題かな? 弦が切れる度にグスタールに来るのも面倒だ、ラヴィーニア達に相談して鉱石糸でどうにか出来ないか話をしてみよう。


「あっ、やべえ釣りの金がねえよ! おいベン、やっぱり金貸してくれ!!」

「今、そんな大金持ち合わせてないよ。ひとっ走りしてきなよザーフ」


 こちらが購入した弩の重さや大きさを実際に手にして構えてみたりと色々確かめていると、すぐ傍では二人のおじさんがわいわいと楽し気に話をしていた。

 そうか、コレに意識を取られてお釣りの事を考えていなかったな。


「この辺で白金貨を金貨に替えてくれる場所なんてねえぞ……。行くなら商業エリアか? ちっと時間かかっちまうなぁ」

「借金返すのにどうせ行くんだから、ついでにいってきなよ。あっ、お茶も買ってきてくれると嬉しいな。お菓子もあると尚良いね」


 両替までの道のりなどを考えているようで、さも面倒だと言いたげに頭を掻いているザーフとその彼にあれこれと注文をしているベン。気心の知れた仲なんだな、と眺めていたが、今思いついた事を聞いてみるとしよう。


「お二人に相談があるんですが、これと同じ物をもう一つ欲しいんです。何とかなりませんか?」

「おう、そりゃ出来るには出来るがよ……?」

「素材もまだ余ってる物も多いしね」


 二人の言葉に頷いて返しつつ、購入した弩を鞄にしまう。

 シーの分はこれで良し、と。もし壊れて使えなくなったり、また川に落ちた時のように無くしてしまった際に備えておいて損はないだろう。


「それなら、お釣りは結構です。二つで白金貨一枚、これと同じ物をもう一つ作った際に出た差額は差し上げます。二人で山分けにして下さい。また次回この街に来た時に受け取りにきますね」

「おいおい……、いいのか? ベンが言ってたように大体の素材は残ってるから金貨十枚分くらい俺達が得しちまうぜ? まぁ、俺としては大助かりだがよ!」

「甘えておこうよザーフ。その分、また兄さんが来た時の為に面白い物発明しておこうか」


 二人はまたも楽し気に新しい武器の話を始めてしまった。

 今度来た時が楽しみだが、少しだけ白金貨を残しておくかな? 高額になってしまって、払えません! では困るし。


「しかし、ベンから聞いてたがホントに変わったモンを欲しがるなぁ。次に兄さんが来た時に備えて今から新しいモンの試作でも作るとするか?」

「そうだねえ。でも、威力と精度に関して言えば兄さんに売った弩より高性能にするのはもう難しいよね、小型化させると耐久面がなぁ……」


 おじさん二人は既に次の試作品へと頭を捻って思案をしているようだ。


「それならいっそ、思い切り変わった物を目指してみては? 魔法の矢が撃ち出せる弩とか弓とか。矢が目標に当たると火が燃え盛ったり雷がバリバリっと走るとか、ちょっと憧れますよ私は」

「……」

「……」


 俺のあまりにも子供っぽい軽口に呆れてしまったのか、呆気に取られたような表情を浮かべるおじさん二名が俺を見つめていた。


 おじさん達のぽかんとした表情は僅かな時間の後に、鬼気迫るような真剣な物へと変わり、それに伴い二人が纏う空気も先程までの朗らかな物とは一転し、重厚感で押し潰されてしまいそうなほど重苦しい空気にこの場が包まれた。


 彼らは口元に手を当て眉根に皴を寄せて唸るようにして一度考え込み、そして視線を交わし合うとお互いに頷き、何か無言の会話をしている様子。

 彼らはその考えが纏まるとその強い視線を俺にぶつけ、この重苦しい空気を吹き飛ばすようにザーフが口を開きながら、ベンの前でしゃがみ込んだ。


「こうしちゃいられねえな……。ベン! ロックは今日休みだったな! 行くぞ!」

「ああ、こりゃまた面白い物が作れそうだ。兄さん、帰り道は大丈夫だね? ちょっとこのまま矢の職人のところに行ってくるよ。またこの街に来たらウチに寄ってね」

「じゃあな兄さん!!」

「あっ、うん。えっと、あっ……」


 俺が何かを言う前に、二人のおじさんはそれこそ撃ち放った矢のように飛び出して行ってしまった。あのベンおじさんも普段はのほほんとした人だけど、ああいう面があるからザーフとうまくやれるのかもしれないな。


「あっ」


 俺以外誰もいない工房、立ち去っていいものか? と悩んでいたが、時間も無い事だし移動をし始めて気付いた。

「自己紹介出来なかったな……」


 職人はせっかち、よく覚えておこう。


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